2020年の最後の3連戦となった中東ラウンドの初戦バーレーンGP。その初日はレッドブル・ホンダにとって、ほろ苦いスタートとなった。
フリー走行2回目にアレクサンダー・アルボンが最終コーナーでコースアウトし、態勢を整えようとした瞬間にコントロールを失ってスピン。ガードレールにクラッシュしてしまった。
クラッシュしたアルボンのマシンは、右側の前後のサスペンションが大破。約半分の時間を残して、セッション終了を余儀なくされた。
クラッシュするまでアルボンはピレリの2021年用に開発されたプロトタイプタイヤを履いて走行し、ミディアムタイヤで5周した後、ソフトタイヤに履き替えて予選を想定したアタックを行おうとする矢先のクラッシュだった。
つまりこの日、アルボンは予選とレースが行われる日没後のコンディションのなかで一発の走りを完了させられなかっただけでなく、ロングランがまったくできず、レースに向けたシミュレーションもできずに終わった。
アルボンが失ったのは走行時間とタイヤに関するデータだけではない。リヤサスペンションが引きちぎられたアルボンのギヤボックスとパワーユニット(PU)にもダメージが及んでいる可能性がある。
フリー走行2回目が終了してから1時間45分後に行われたホンダの囲み会見で、田辺豊治F1テクニカルディレクターは「アルボン選手のPUについてはこれからダメージの詳細確認を進め、土曜日以降どうするかを決めます」と語るにとどまった。
通常、金曜日のフリー走行ではギヤボックスもパワーユニットも予選とレースで使用するものではなく、金曜日だけに使用する、いわゆる『金曜日ギヤボックス』と『金曜日エンジン』を搭載している。そのため、金曜日のフリー走行後にその『金曜日仕様』を交換しても、ペナルティを受けることはない。
しかし、パワーユニットには年間の使用基数制限があり、しかもすでに3基目エンジン(ICE)を投入しているアルボンのパワーユニットがこの時期に1基失うようなことになれば、この週末だけでなく、残り2戦のパワーユニットの使用計画にも影響が出てくる。
また少なくとも足回りを大きく修復しなければならないアルボンは、セッティングという点でも課題を残してしまった。クラッシュ後、アルボンは「フリー走行1回目から少しセッティングを変更していたなかでクラッシュした」と語っている。つまり、変更したセッティングがフリー走行1回目よりも良かったのかどうかの検証ができないまま、終了してしまった。
もちろん、エンジニアたちはそれまでの走行データを元にドライバーと話し合って、土日に向けたセットアップをしていくことは可能だ。だが、そのセットアップの基礎となる足回りを修復しなければならないため、そのセットアップがきちんと機能しているかどうかは、土曜日のフリー走行3回目を走らせてみないとわからない。
もし、フリー走行3回目でセットアップが十分でないと判明しても、予選までにやれることは限られているため、アルボンは予選とレースでかなりの妥協を強いられることとなる。
一方、チームメートのマックス・フェルスタッペンは、初日2番手と上々の滑り出しだった。フェルスタッペンはフリー走行前に「トルコGPに投入した新しいパーツが機能していたかどうかは、イスタンブール・パーク・サーキットの路面と天候によってはっきりとした答えが見つけられなかったので、バーレーンGPでそれを確認するのが楽しみ」と語っていた。
まだ金曜日の段階だが、レッドブルの新パーツが開発の方向性を外してはいないことがわかったのは、この日のレッドブル・ホンダにとってはポジティブなニュースだった。