2020年11月27日 10:21 弁護士ドットコム
最近、客が店員に対して理不尽な要求や暴行をおこなう「カスハラ(カスタマーハラスメント)」が社会問題になっています。10月18日の報道によると、厚生労働省は来年度、企業向けの対応マニュアルを策定する方針を決定。国も対策に乗り出しました。
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過去には、コンビニ店員に土下座を強要したクレーマーが逮捕されていますが、弁護士ドットコムにも「謝罪強要」されたバス運転手の男性から相談がありました。
男性は路線バスの運転手をしています。平日の朝8時ごろに10分ほど遅れて運行していた際に、乗車してきた客が「なんでこんなに遅れるの」と迫ってきました。
男性が「道路状況で遅れている」と説明したところ、客は逆ギレ。「遅れていて謝罪はないのか」「謝るのが普通やろ」などとしつこく謝罪を要求し、その対応のため8分ほど運行停止しました。
果たして、執拗に謝罪を要求する行為に法的問題はあるのでしょうか。大部博之弁護士に聞きました。
——ある客が遅れたバスの運転手に対し、しつこく謝罪を要求したそうです
時刻表通りにバスを到着させることなど、そもそも不可能です。したがって、バスが遅れたことによる謝罪を求める男性の要求は、明らかに不当なものです。
このような要求を執拗に繰り返したために、その対応で、8分間運行停止になったとのことですから、威力業務妨害罪(刑法上は234条)が成立する可能性があります。
なお、暴行や脅迫が伴えば、強要罪(刑法223条)が成立する可能性もあります。また、民事上、バス会社は損害をどのように算定するかは問題ですが、男性に対し、不法行為に基づく損害賠償請求も可能でしょう。
——バス会社として、どのような対策が取れますか
バス会社は、こうした事態に備え、事前の対策として、運転手が乗客から不当な要求を求められた場合の対応マニュアルを策定しておくべきです。
不当な要求については、毅然とした態度で拒否すること、また、大声を出したり運転手や他の乗客に危害を加えたりするなど、一定のレベルを超える場合には、警察に通報すること、など具体的に取るべき行動を示します。
運転手が乗客の要求が不当な要求か、正当な要求かを区別できることが重要です。
今回のような例に加え、例えば、停留所ではないにもかかわらず自分の都合で降車を求める場合、満員で乗車が不可能であるにもかかわらず強引に乗車しようとする場合など、要求が不当であるかどうか判断に迷うような事例について、事前に不当要求に当たる場合を明示して、運転手が迷わず対処できるようにしておくことが重要です。
【取材協力弁護士】
大部 博之(おおべ・ひろゆき)弁護士
2006年弁護士登録。東京大学法学部卒。成城大学法学部講師。主に企業法務、訴訟を扱う。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所
事務所URL:http://www.ogaso.com/