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ミクシィが模索する「マーブルワークスタイル」 渋谷スクランブルスクエアへの移転直後にコロナ禍

2020年11月24日 10:30  キャリコネニュース

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東京・渋谷駅近くに本社を置くITメガベンチャーのひとつ、ミクシィ。週4日のリモートワーク推奨を9月で終了し、10月から「マーブルワークスタイル」と称する勤務形態を試行している。

出社と在宅勤務を組み合わせたものだが、その実態はどのようなものなのか。なぜ「リモートをメインとする働き方」をやめたのか。それを理解するにはミクシィの企業風土を知る必要があるだろう。

これまでの取り組みを振り返り、浮かび上がった疑問点を執行役員人事本部長の柳本修平さんに投げかけてみた。(キャリコネニュース編集部)

こだわってきた「直接的なコミュニケーション」

ミクシィは以前から「コミュニケーション創出カンパニー」を標榜し、SNSの「mixi」やスマホアプリの「モンスターストライク」など、“人と人との交流の活性化”に焦点を当てた事業を一貫して行ってきた。

近年は中期経営方針に「エンタメ×テクノロジーの力で、世界のコミュニケーションを豊かに」を掲げ、プロバスケBリーグ・千葉ジェッツの運営企業をグループ会社化したほか、競馬・競輪といった公営競技などの「スポーツ事業」を強化している。

6月に開始したスマホ向け新サービス「TIPSTAR」は、365日配信されるライブ動画と競輪のネット投票を基本無料で友達と一緒に楽しめるサービス。既存の公営競技を新しいエンタメにしていこうという発想がユニークだ。

2020年3月に超高層ビル「渋谷スクランブルスクエア」へオフィス移転したときも、「For Communication(すべてはコミュニケーションのために)」というテーマが設けられていたという。

そこで意識されていたのは、直接的な対面コミュニケーションのメリットを引き出すこと。一緒に何かをするために会う「Meet Up」、メリハリを付けて働ける「Switch Up」、サプライズを生み出す「Dream Up」という3要素がコンセプトとなっている。

ここまで「コミュニケーション」に徹底してこだわっているのはなぜなのか。柳本さんは、ミクシィには“人と人とが直接会って濃いコミュニケーションを取ることが一番楽しくて面白い”という考え方があり、事業展開にも大きく影響していると説明する。

「新オフィスへの移転は、事業拡大で分散したオフィスを集約するだけでなく、オフィスをいかに人が集まりやすく、いかにリラックスして新たな発想が生まれるクリエイティブな場所にするかを重要課題にしていました。
私たちの仕事はリモートでできるものがほとんどで、それによって仕事に集中できたり、コスト削減ができたり雇用できる人が増えたりするメリットがあることも分かっています。しかし、それでも社員が集まって顔をあわせて仕事した方が、活気があっていいのではないかという考え方が根強くあるのです」(柳本さん。以下同じ)

それぞれの色のままに混ざり合うのが「マーブル」

新型コロナウイルス感染拡大のニュースが伝わってきたのは、新オフィスに順次社員が集まってきたころのこと。3月30日にはリモートワーク推奨、4月8日から「原則オフィスへの出社禁止」を余儀なくされた。

7月からはオフィスワークを復活させながら「マーブルワークスタイル」の試験運用を開始するも、感染拡大状況を踏まえて8月と9月は週4日のリモートワークに。10月からは再び「マーブルワークスタイル」に取り組んでいる。

「マーブルワークスタイル」の基本原則は、以下の2つだ。

1.オフィスでの就業を基本としつつ、週3日までリモートワークを活用(リモートワークの日数は部室長の判断で増減可能)
2.コアタイムを12時~15時に短縮(以前は10時~15時)

あわせて「マーブルワークスタイル6か条」を設けている。内容はいずれも、リモートワークによる弊害を回避し、業務の成果を確保するものといえる。

<コミュニケーションの溝を埋める>
①その場にいない人に配慮したコミュニケーションをとる
②テキストメッセージは相手の心証に配慮する
<健康管理を心がける>
③ONとOFFのメリハリを付ける
④しっかりとした睡眠をとり適度な運動をする
<多様な働き方を通じて成果を出す>
⑤リモートワークでできない仕事は出社する
⑥リモートワークは成果を出す働き方の一つと捉える

この趣旨について、ミクシィは“ミックスして混ぜ合わせるのではなく、マーブル模様のように、それぞれの持ち味を活かしながらうまく融合する働き方を目指す”としている。

しかし、なぜミックスではなくマーブルなのだろうか。そこには「黒と白を混ぜてグレーにするのではなく、それぞれの色のままに混ざり合うのがマーブル」というこだわりがあるという。

「オフィスワークとリモートワークにはそれぞれのよいところがあり、それを活かしながら組み合わせて使っていこうという考え方なのです。また、仕事と生活のバランスを取りつつ、その日に行う仕事の内容によってリモートでやった方がいいのかオフィスでやった方がいいのかを、自ら考えて切り替えることも大事だと考えています。
もちろん、リリース間近のプロジェクトや新入社員のいる部署では、必要に応じて出社日を増やしています。しかしそれ以外では、成果が出る働き方を従業員自ら選択してもらいたいという思いがあります」

オンラインでの「全社総会」は予想以上の盛り上がり

ここでミクシィの取り組みを、あらためて時系列に整理しておきたい。

新型コロナ感染拡大のニュースを受け、1月下旬から社内の主要メンバーが情報収集と社員への啓発を開始。2月中旬からは執行役員を委員長とした「新型コロナ対策委員会」を設置し、コアタイムの変更や時差出勤の推奨を行った。

3月上旬には全社的なリモートワークの「テスト」を実施し、リモートワーク中に起こりうる課題を抽出。4月8日の「全社原則リモートワーク」の決定後は、デザイナーやエンジニアが使う高性能PCをバックオフィス部門の社員が約100台を梱包して迅速に配送し、業務の支障がないようにしている。

このほか「環境構築支援費」として1人最大2万円を補助。5月には特別賞与(リモートワーク慰労)として5万円、「リモート環境維持手当」として月1万円が支給された。新卒入社研修はオンラインで実施。6月には全社員が一同に会する「全社総会」をオンライン開催し、予想以上の盛り上がりを見せたという。

実はコロナ以前から、リモートワークの運用は柔軟な働き方対応のひとつとして検討されていた。今回の試験導入も「みんなでオフィスで楽しく働く方が当社の目指す姿と感じる」という意見もあったが「実際にやってみると成果はそこまで下がらないし、むしろ上がることもある」という声が集まり、経営陣も自ら実践することで意識が変わっていった。

「新型コロナウイルスの流行という大変な状況ではありましたが、採用面接や研修をオンラインで実施したり、ミーティングのやり方を見直したりと、それまで当たり前としていた仕事の仕方を考え直す良いきっかけとなりました。
特に、これまで全従業員が集まって実施していた全社総会をオンラインに切り替えたことは、結果的にインタラクティブ性が増し、従業員からも高い評価を得られています」

「創発的取り組み、文化浸透」に課題も

その一方で、リモートワークのデメリットやリスクも指摘されている。

例えば、異動や採用による新メンバーの「人材受け入れ・定着」に時間がかかること。オフィス内での「創発的取り組み、文化浸透」が減り、「主体性、上流工程への関わり」が弱まって仕事が受け身になるおそれなども指摘されているという。

「実際にマーブルワークスタイルをやってみると、生産性を高めるために出社が必要と感じるシーンが浮き彫りになってきました。アイデアを出し合う打ち合わせや、サービスリリース前後のスピーディな対応が求められる状況などは、出社する方が仕事をしやすく感じます。
これらはまだ一部の従業員の感覚というレベルですが、これから広く社内のアンケートやヒアリングを実施して、マーブルワークスタイルのより適切な在り方を見つけたいと考えています」

今後は「国内どこでも、週5リモート」という選択肢も視野に入れつつ、当面は「マーブルワークスタイル」を続けながら、生産性と働きやすさを両立させるスタイルを模索していきたいとのことだ。