2020年11月23日 10:41 弁護士ドットコム
ステイホームの影響もあり、自宅を快適に過ごすために工夫をこらす人は増えています。中でも、外出自粛でも外の空気を楽しめると話題になったのが、自宅のベランダをテラス風に仕上げるベランダカフェです。
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都内の分譲マンションに住むリョウタさん(40代)もその一人。ウッドデッキはもちろんのこと、トルコ風のマットの上に自作のウッドテーブルや椅子を置き、小物も増やしているそう。「素足でリラックスして過ごせますし、とても気に入っています」といいます。
植物もいたるところに配置。「週末に淹れたてのコーヒー片手に読書などをのんびり楽しんでます。子どもと一緒に過ごすこともできるなど家族にも好評です」と誇らしげです。
そんな話を会社の同僚にもしたというリョウタさん。ところが、同僚からはおもわぬ反応が返ってきたといいます。
「『ベランダって緊急時の避難経路じゃなかった?あんまり物を置いたらマズいのでは』と言われたんです。ご近所さんも同じようなことをしているのですが…本当はダメだったんでしょうか」
リョウタさんは場合によっては撤去することも考えていますが、ベランダにたくさんの物を置くことは本当に問題あるのでしょうか。池田誠弁護士に聞きました。
――マンションのベランダは、法的にはどのような位置づけなのでしょうか。
マンションのベランダ(バルコニー)の空間は、過去の判例やマンション標準管理規約(以下「規約」)に照らし、一般的には「共用部分」にあたり、ベランダに接続されている居室の所有者にはその専用使用権が与えられているに過ぎないと考えられています。
――なぜ「共用部分」になるのでしょうか。
ベランダが外壁の一部をなす上、災害時の避難経路として重要な役割を担っていることが大きな要因です。
――「共用部分」だとどのような制限があるのでしょうか。
共用部分については、区分所有法が用法に従った使用権を定める一方、規約は用法に従った利用を義務として定めています。なお、さらに具体的な使用法については、使用細則で定められている場合があります。
――ベランダにたくさん物を置くと違法になるのでしょうか。
ベランダの使用が違法と評価された過去の裁判例として、温室の設置、サンルームの設置、クーラー室外機の外壁への設置などがあります。
――今回のケースはどうでしょうか。
テーブルや椅子の設置については、避難経路としての使用を妨げない程度の大きさや数であれば設置が許される場合もあると思います。
一方で、ウッドデッキやマットの設置は、隣接するベランダの床面と段差を生じ、避難にあたってつまずくなど危険もある上撤去も容易でないため、より厳しい判断がされるのではないかと思われます。
――もし違法な状態だとして対応しなかった場合、どうなるのでしょうか。
いずれかの物件の設置が規約やその性質に反し、共同の利益に反する行為にあたるとした場合、区分所有法に基づき、管理組合等がその行為を停止し、工作物等を除去するよう求めることができます。
また、一定の場合には、区分所有者の有する居宅の使用禁止請求や区分所有権の競売請求まで認められています。
さらに、避難の障害となるような障害物をベランダに置いている場合、消防法にも抵触するおそれがあります。
今回のケースで、いきなり上記のような法的な請求を受けたり、手続がとられたりすることはないと思いますが、問題化する前に規模を縮小するなどの対応をとるのが適当かと思います。
――今回のケースは分譲マンションでしたが、賃貸物件でも同じ扱いなのでしょうか。
不動産を借りている人がその居室などの専用部分に及ぼす権利は、所有している人の権利に比べて弱いです。賃貸物件に住む人は所有者よりもベランダの利用を制限されると思っておいた方がいいです。
法律上の根拠で言えば、賃貸借契約上の具体的な利用制限に違反したり、一般的な用法遵守義務に違反しているとして、その利用を制限されたり、賃貸借契約自体を解除されたりするおそれがあります。
【取材協力弁護士】
池田 誠(いけだ・まこと)弁護士
証券会社、商品先物業者、銀行などが扱う先進的な投資商品による被害救済を含む消費者被害救済や企業や個人間の債権回収分野に注力している下町の弁護士です。
事務所名:にっぽり総合法律事務所
事務所URL:https://nippori-law.com/