2020年11月22日 10:01 弁護士ドットコム
パートナーが仕事で忙しいとき、なにか手伝ってあげられることはないかと思うものです。とはいえ、人事評価など機密情報にまで触れてしまったらどうなるのでしょうか。
【関連記事:【マンガ】SNSで見つけた元夫と浮気相手のベッド写真!元妻の反撃が始まった】
夫の持ち帰り仕事を手伝い、部下の査定までおこなっていたというマリさん(仮名・40代)から、「私のしたことは法律上では罰せられますか」と弁護士ドットコムニュースのLINEに相談がありました。
マリさんは数年前、仕事が増えた夫に頼まれ、自宅で夫の研修報告のレポートや部下の始末書を書いていました。当初マリさんは断っていましたが、文章を書くのが苦手だった夫から「マリが得意だから」「俺の査定が悪くなる。夫婦は助け合うべき」などと言いくるめられたそうです。
次第に夫の部下も増え、昇進や給料に関わる内容が多くなっていきました。査定は夫が1番好成績な人を決めて、残りは夫から勤務態度を聞き取りマリさんが点数を決めていました。
マリさんは「段々となにも知らない私が点数をつけるのが怖くなってきました」と当時を振り返ります。部外者が人事評価にたずさわった場合、罰せられてしまうのでしょうか。萱垣建弁護士に聞きました。
ご相談の場合、妻に手伝ってもらったとのことですが、妻も第三者ですので、身内かどうかは関係ないことになります。
そして、部下の勤務態度の状況、人事評価の内容は、会社の機密情報に当たる可能性があります。会社の機密情報にあたる場合、妻は部外者ですから、部外者に機密を漏らしたとして、夫は不正競争防止法違反として刑事罰を問われる可能性があります。これは10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方です、
ただ、不正競争防止法が成立するには、不正の目的で使用することなどが条件です。ご相談の内容では、その目的はないので、刑事罰を問われることはないでしょう。
この行為によって会社に損害を与えた場合、民亊的に損害賠償責任を負う可能性があります。
たとえば、まったく権限のない者に評価を手伝わせたということで、そのことが噂になり、「そのような会社の製品は買わない」とか「そのような会社と取引をしない」とか「そのような会社で働きたくない」などということが起これば、何らかの損害が発生してその賠償責任を負うことも考えられます。
この責任は、夫だけではなく、相談者である妻も負うことになります。
ただ、いずれにしても、ご相談の内容だけでは、相談者もその夫も、刑事的な責任を負う可能性は低いと考えられます。
【取材協力弁護士】
萱垣 建(かやがき・たてる)弁護士
平成5年登録。弁護士経験25年以上。平成23年度愛知県弁護士会副会長。愛知県弁護士会及び中部弁護士会連合会の委員会の委員長、日本弁護士連合会の委員会の副委員長を経験。わかりやすく、疑問が残らないように説明することがモットー。
事務所名:万朶総合法律事務所