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BTS V、人々の心を和ませる不思議な魅力 たくさんの愛情で保たれるみずみずしい感覚

2020年11月22日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

BTS『BE (Deluxe Edition)』

 BTSが、11月20日に待望のニューアルバム『BE (Deluxe Edition)』をリリースした。新型コロナウイルスの影響で変わってしまった社会を前に、“何があっても人生は続いていく“という思いを込めて作られた本作。そのメッセージの中核を担うというリード曲「Life Goes On」のMVがYouTubeに公開されると、さっそく急上昇1位を獲得。再生回数は11月21日現在、8000万回を突破。その勢いは加速する一方だ。


(関連:BTSは人生にいつだって寄り添ってくれるーーグローバル記者会見で語った、アルバム『BE』に込めたメッセージ


 リリースを受けて、11月20日午前11時からグローバル記者会見を開催したBTS。世界中のメディアが注目し、厳かな空気が感じられる中、ひときわ注目を集めていたのはVだった。今回のアルバムは、JIMINがメンバーと事務所側の意見をまとめるプロジェクトマネージャーを担当し、JUNG KOOKが「Life Goes On」のMV監督を務めるなど、メンバーがアルバム制作全般に携わり、その様子も細かくARMY(ファン)に発信してきた。RMの言葉を借りるなら「みんなで創り上げた」作品だ。


 そのなかでVは、ビジュアル面を統括したという。メンバー同士で写真を撮ることで、自然体な姿をARMYに見せたいと思ったと、Vが話し始めるとなぜかみんなが頬を緩める。それまで、きっちりとした雰囲気で進んでいたにも関わらず、Vがマイクを持つと何かが起こるのではと、目を離さずにはいられなくなる。


 その予感が的中したかのように、Vは「PDFも初めて作ってみました……今回のアルバムをきっかけに“僕にはこういう才能があるんだな“って(うんうんと1人で頷いて)……と感じました」とぽやぽやトークを披露。これには司会者からも「才能があるっておっしゃったときに、なぜモジモジとされたんですか?」とツッコミが入る。すると「そのときのことを思い出してすごくしっかりできてたし、すごくうまくできてたし……」とマイクをそっと置いてしまうV。「最後まで言ってください(笑)」とまたもやツッコまれる羽目に。


 そんなどこまでもVらしい言動にメンバーも記者たちも思わず吹き出してしまう。隣に座っていたJINが、Vにマイクを向けると「とにかくそうでした」と自信満々の様子で頷き、「いろいろ活用してください」とニッコリしてみせるのだった。


 また、全8曲をメンバーが順に解説した際には、Vが3曲目の「Blue & Grey」を担当。V自らが曲作りに参加したにも関わらず「ディスコポップ……アコースティックギターサウンドが入った、うん、ポップバラードです。あ! ディスコじゃないです」とあたふた。その後、5曲目の「Telepathy」をレトロポップディスコサウンドと解説したJINが、「Vさんはこっちと間違えたのかな」と笑ってみせた。


 今回のグローバル記者会見にとどまらず、Vはちょっぴり不思議な魅力で、人々の心を和ませてきた。BTS初の俳優デビューを飾った青春ロマンス時代劇ドラマ『花郎<ファラン>』の会見でも、純粋で明るくて好奇心が強く、1つのことにハマると熱中するマンネ(末っ子)キャラを「普段の僕によく似てると思います」と愛嬌たっぷりな笑顔で答えていた。そして「暑い部屋で喧嘩するシーンがあって汗が出たらダメなので、メイクを直しながら、ミニ扇風機を回して……そんな暑い日のエピソードでした」と満足気に話す姿が実に微笑ましかった。


 実際には、Vは3人きょうだいの長男として生まれている。この天真爛漫な魅力は、おばあちゃん子として育ったことが影響しているのかもしれない。そして、決して裕福ではない農家の長男であったVが持った「歌手になりたい」という夢に、理解を示してくれた父も大きな存在だった。実は、アメリカ・ビルボード「HOT100」で「Dynamite」が1位を獲得した際の会見でも、Vは父とタクシーでボッタクリにあった思い出話に花を咲かせるシーンがあった。


「(タクシーのおじさんに遠回りされて)イヤなことも、“そんなこともあるよね“と言えるようになった。(上京して一生懸命練習してきた)辛かったことも、全ていい思い出になった」


 一見すると突拍子もないことを話しているようにも感じられたが、その言葉の本質はしっかりと繋がっていることがわかる。厳かな空気に臆することなく、まっすぐに思ったままの言葉を発するVの自由でピュアな魅力が、これまでスレることなく育ってきたことにこそ尊さを感じるほどだ。


 それができる理由は、もう一つの家族とも言えるメンバーやスタッフ、ARMYが、彼のことを笑顔で見守り続けてきたからに違いない。「Blue & Grey」を聴けば、彼の心の中にもブルーでグレーな気持ちが漂う日があることがわかる。実際に、以前コンサートを終えた後に空っぽになったように感じていたと語っていたこともあった。それでも、カラカラに乾いた心に、たくさんの愛情が注がれたことで、Vはそのみずみずしい感覚を失うことなく、歩むことができた。多くの味方がいる安心感こそが、表現者であるVを奮い立たせているのだろう。


 「CG」とも称される美しい顔立ち、3オクターブの音域を誇る歌唱力、リードダンサーを務めるほどのパフォーマンス力……そんなアイドルとしての素養と才能をいくつも持ち合わせながらも、どこか「放っておけない」と人を引きつける魅力の持ち主。そんなVの愛らしさが守られる”BTSというやさしい世界“が、『BE』を通じてこの世界にも広がっていってくれたら……。そして、このコロナ禍で辛い日常も、やがていい思い出に繋がっていくことを、心から願っている。(佐藤結衣)