2020年11月21日 09:31 弁護士ドットコム
DVは必ずしも家庭内に限られない。カップル間で起こる「デートDV」もその一形態だ。
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弁護士ドットコムにも、交際相手の女性に「スマホの電話帳やLINEの友達リストから異性のデータを消すよう交際相手に強要された。これはデートDVでは?」という相談がある男性から寄せられている。
相談者は、データ消去以外にも、別れるなら「訴える」「お前の会社にも押しかける」、「1時間ごとにどこに誰といるのかを写真付きで報告しろ」などと言われたという。
特に相談者が悩まされているのは「スマホの取り上げ」だ。数カ月にわたり取り上げられ、交際相手しか登録できない電話帳に記録されている番号しか送信・着信できないキッズフォンを代わりに渡されているという。
「原因は(相談者の)浮気」のため、相談者としては強く出られない事情もあるようだが、このような仕打ちを受けても我慢しなければならないのかと憤っている。
これらの行為は「デートDV」に当たるのだろうか。また、慰謝料請求を含め法的な責任を問うことはできるのだろうか。宮地紘子弁護士に聞いた。
――「デートDV」の詳細を教えてください。
「デートDV」とは、結婚していない恋愛関係にある恋人間で行われるDV行為です。
具体的には、相手を思い通りにしようと、経済力・体力・社会的優位性などの「力」を使って行う行為です。主なDV行為として、「身体的DV」「精神的DV」「性的DV」「経済的DV」「社会的DV」などが挙げられます。
――相談者が受けた行為はどれに当たるのでしょうか。
今回のケースにおける交際相手の行為は交友関係を制限することですので、「社会的DV」に該当します。
――相談者は様々な仕打ちを受けたようですが、刑事責任の追及は考えられますか。
別れるなら「訴える」「お前の会社にも押しかける」等という点については、強要罪(刑法223条1項)に該当する可能性があります。
強要罪は、暴力などで相手を脅し、義務のないことをさせることで成立しますが、強要罪の「暴力」は、直接相手に力が振るわれるものでなくとも、相手が畏怖すれば、暴力を行使したとみなされます。
今回のように別れるなら「訴える」「お前の会社にも押しかける」という行為は相手が畏怖する行為ですので「暴力」に該当します。
――「スマホの取り上げ」についてはどうでしょうか。
スマホを取り上げる行為は、器物損壊罪(刑法261条)に該当する可能性があります。器物損壊罪における「損壊」とは、「社会通念上、物の効用を失わせる行為」を意味します。
今回のケースで、スマホを壊してはいませんが、少なくとも数カ月間、相談者が自分のスマホを使用できなかったという状況を作り出した行為は「物の効用を失わせた」と判断される可能性があると思います。
なお、窃盗罪(刑法235条)については、「盗んだ物を利用しようとする意思(不法領得の意思)」が必要だと考えられています。スマホであれば、自分で使ったり、転売したりしようと考えていた場合には不法領得の意思が認められやすいですが、今回のケースでは該当しないでしょう。
――民事責任はどうでしょうか。
今回の交際相手の行為は刑事責任を負う可能性がある行為ですので、不法行為に基づく損害賠償責任として慰謝料を請求することも可能だと思います。
【取材協力弁護士】
宮地 紘子(みやち・ひろこ)弁護士
名古屋市出身。勤務弁護士を経て独立後は離婚や相続などの家事事件を中心とした案件を数多く担当。JAPAN MENSA会員。家庭では1児の母。子育てと仕事の両立に日々奮闘中。
事務所名:八事総合法律事務所
事務所URL:http://www.yagotosogo.com