2020年11月21日 09:21 弁護士ドットコム
豊胸手術の事実を隠してバストアップ商品をプロデュース、販売していたことが発覚したYouTuberのてんちむさん。11月9日に自身のYouTubeチャンネルにアップした動画で、「破産寸前」であることを明らかにしました。
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商品の返金は全ててんちむさんのお金で支払い、メーカーに対しては別途手数料として1件の返金に対し金額の30%を渡しているという。さらに、メーカーへの損害賠償も控えており、視聴者からは「ここまで全て被るの?」と疑問の声も上がっている。
てんちむさんは9月2日、今まで豊胸手術をしたことが一切ないとしていたが、6年前に自分の脂肪を胸に注入する豊胸手術をしていたと告白。商品の返金希望者には、返金対応をすると発表した。
11月9日の動画によると、返金額の確定は出ていないが、「次大きい額を支払うことになった時に、完全に支払えない状態」と話し、損害賠償金についても推定額は出ているものの、金額は確定していないという。
YouTubeのコメントでは「てんちむにのしかかってる物がでかすぎる気がする」「てんちむ1人が全額もつのはおかしくないですか!?」との意見も出ているが、てんちむさんは11月13日の動画で「私が全て責任を負うのが正解」「返金は私自身が決めた」と話している。
実際にてんちむさんがメーカーとどのようなプロデュース契約をしていたかは定かではないが、タレントがイメージを毀損した場合、タレント側が商品の返金義務を全て負うのだろうか。河西邦剛弁護士に聞いた。
——プロデュースの契約でタレントがイメージを毀損した場合、どのような問題が生じますか
プロデュース契約のなかには、イメージ保持義務というのがあります。
このイメージ保持義務というのは、犯罪行為や不倫などの違法行為をしないというだけでなく、商品のイメージを損なわない義務になりますので、対象になっている商品の性質によっても変わってきます。
例えば、高級車のCMをしているタレントが実は「カツラ」だと隠していたとしても商品と関係ないのでイメージ保持義務違反にはなりません。
——タレントがイメージを毀損した場合、タレント側が商品の返金義務を全て負うのでしょうか
2つの契約が問題となります。まず、商品の売買契約は購入者とECショップ・メーカーなどの販売者との間に成立しています。そのため、購入者に対する返金義務をタレントが直接負うことは法的にはありません。
そもそも、タレント側が商品に関する事実を隠していたとしても、商品の本質であるバストアップ機能については何ら欠陥がないとすれば、購入者の方が売買契約を解除できるか、という問題もあります。
そうするとメーカーが任意で返金に応じるかというのは法的義務というよりメーカー側の経営判断になります。
他方で、メーカーとタレント側との間のプロデュース契約には違反する可能性があり、その場合にはタレント側に損害賠償義務が生じる可能性はあります。
購入者に対する返金の問題と、タレントの違約金や損害賠償の問題と法的には2つの問題が併存することになりますが、最終的にタレント側がどれくらいの割合で負担するかは、元々どれくらいの契約金だったかやインセンティブ報酬の内容にもよってくるところで一概にはいえません。
【取材協力弁護士】
河西 邦剛(かさい・くにたか)弁護士
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。アイドルグループ『Revival:I(リバイバルアイ)』のプロデューサー。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/