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駒形友梨が4thミニアルバム『Night Walk』語る、自身の内面から湧き出たモチーフが出発点に

2020年11月20日 18:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
●肩の力を抜いて生み出せた、アルバムでありリード曲
声優・駒形友梨が4thミニアルバム『Night Walk』をリリース。今年3月発表の3rdミニアルバム『a Day』と対になる”夜”をテーマにした作品で、彼女がこれまで歌ってきたシティポップやバラードも収録しつつ、初顔合わせの作家も含めあらたな挑戦も盛り込んだ充実の1枚に仕上がった。果たして彼女は”夜”というテーマをもとに、どんな世界を表現していったのだろうか。

○●今まで以上に明確だった、アルバムの全体像

――『Night Walk』は、前作『a Day』と2部作の関係にあるんですよね。

そうなんです。最初に「今年はミニアルバムを2枚出したいと考えています」という打合せがあって、まず”お昼”にフォーカスして明るい曲を集めた『a Day』の方向性が決まったんですけど、私自身は元々暗くて地味な曲が好きなので「夜もやりたい!」という話になりまして。それでもう1枚は、”夜”をテーマにすることに決まったんです。

――タイトルになった「Night Walk」という言葉は、どんなイメージに由来するものですか?

もともと私自身が夜型なんです。夜に散歩することも多くて、そのときいつも音楽を聴いていたんですよ。なので、同じように夜に散歩しながら聴ける音楽とか、それ以外にもいろんな夜のシチュエーションに合った曲を入れたアルバムにしたいな……という気持ちから出てきたことばです。

――そのイメージをもとに作家さんに楽曲を発注された際に、特にこだわられたことはなんでしたか?

話し合いながらいろいろ意見を出させていただいたんですけど……高橋諒さんは絶対「Night Walk」というテーマらしい曲がお得意だろうから、「ぜひお願いしたいです」というお話はしていました。その他にも、「めちゃめちゃアップテンポの難しい曲に挑戦してみたいです」というリクエストから「オービタル」を書いていただきましたし、三好啓太さんやBURNOUT SYNDROMESの熊谷和海さんともぜひご一緒したいですとお願いしました。

――作家陣も含めて、最初から明確なビジョンがあったんですね。

はい。それに今回はいつも以上にしっかりと打合せもさせていただいたので、私の中にもスタッフさんの中にもイメージがちゃんと固まっていて、すごく安心感がありました。

――前作からの約半年の間、ライブが中止になるなど新型コロナの影響も受けたと思います。そんななか、御自身のYouTubeチャンネルには弾き語りの映像もUPされていましたね。

いつかイベントで自分で弾きながら歌えたらいいなと思って、元々やっていたギターをまた始めたんですよ。特に6曲目の「insomnia」はすごくアコースティックな曲なので、ライブで弾き語りをするようなイメージもありましたね。私の曲って難しい曲ばかりらしいんですけど(笑)、いつか何らかの形で実現させて、お見せしたいですね。
○●本作のコンセプトが後押しした、トライしたかった歌唱表現

――では、『Night Walk』の収録曲についてそれぞれお聞かせください。まずタイトルチューン「Night Walk」は、まさに”夜のお散歩”を感じる曲です。

他の曲がリード曲になる可能性もあったんですけど、この曲が私がイメージしていた『Night Walk』というアルバムのイメージに本当にぴったりだったんですよ。なので歌詞はそのイメージに沿った世界観のものにしていただきましたし、タイトルも元々は別のものだったところを「Night Walk」にしていただくなど、まさにこのアルバムを象徴するような存在になりました。

――歌ううえで、ポイントにされたことはどんなことでしたか?

今回は自分でも「ここまでやってもいいんだ」と思うぐらい、大人っぽく歌わせていただきました。今までもこういうふうにもっと楽にといいますか、素に近い感じで歌いたくはあったんですけど、どこか「もっと元気に歌わなきゃ」「もっと明るく歌ったほうがいいんじゃないか?」という葛藤もあったんです。でも今回は、アルバムのコンセプトやこの曲にすごく背中を押されて、今までやりたかったけど怖くてできなかった表現に挑戦させてもらえたように感じています。

――以前、「ナチュラルに歌うと声が暗くなりがち」とのお話もされていましたね。

そうなんですよ。ちょっと強めに口角を上げたりして明るい声を意識して、やっと普通に聴こえるような感じなので。でもこの曲は、そういうことを全然気にせず思ったままに歌えたのですごく楽しかったですし、いい具合に力も抜けて歌えたように感じています。

――その他にも、歌ううえでのこだわりはありましたか?

高橋さんがめちゃくちゃオシャレにしてくださったこの曲の世界観の中で浮かないように、持てる技術は全部使って、新しい引き出しにも挑戦したい……という気持ちで臨みました。なのでサビでのリズムの乗り方やアクセントの付け方など、よりエモーショナルに聴こえるよう話し合いながら進めていきまして。そのなかで、たとえば「月明かりはEternity」の部分にちょっとフェイクを入れるなど、自分がイメージする”洋楽っぽい歌い方”もしていきました。

――発売に先駆けて、MVのshort ver.もUPされています。

こちらもとても大人っぽい感じになっていまして。今までのリード曲は明るい曲がほとんどだったので、雰囲気が全然違うのを感じました。外を歩くシーンは得意な時間帯の夜がメインだったので(笑)、表情的にも結構リラックスしていると思いますし、部屋の中のシーンもライティングがすごくムーディーで。アンニュイな感じに撮っていただいているので、ぜひこちらもご覧いただきたいです。

●中盤にかけて詰め込まれた、あらゆる“挑戦”
○●普段と違う観点の歌に挑戦した、矢野達也からの”課題曲”

――続く「empty」は、自ら作詞を手掛けられたシティポップです。

今回はある作品からすごくインスピレーションを受けまして。それに登場する女の子を主人公にして、そこに私の解釈や自分の価値観を混ぜていくという初めての挑戦をしたんですよ。なので、作詞には普段以上に苦戦してしまいました。

――序盤だけだと強い女性を描いたものかと思いきや、実はそうでもなくて。

そうなんですよ。最初はちゃんと自分を持っていてまわりにも全然興味がなかった女性が、出会った相手から自分にはない価値観や自分が諦めていたものを改めて感じさせてもらったり教えてもらったりして、少しずつ柔らかくなっていく……みたいなイメージなんです。

――歌うときも、そのイメージを大事に?

はい。最初は「もう人生どうでもいいわ……」ぐらいの(笑)、ちょっと冷めちゃってる感じから始まるんですが、サビでは「ばかだ」って悶えたりしますし、後半になればなるほど自分の価値観も変化していって彼に対しての気持ちもすごく大きくなっていくので、そういった感情が爆発するところが聴く方に伝わるように……というのを意識しました。

――そして「オービタル」は、テンポも速くてボカロ風の楽曲にも感じられました。

私自身がボカロ世代で学生のときに好きで歌っていたので、これも自分の中にある音楽には変わりないと思って。それに、現状に満足せずに、今の自分に歌えなさそうな曲を歌えるようになりたかったというのもあったので、今までのフィールドからはみ出たことに挑戦させていただきました。

――まさに、”修行”のような……。

そうなんですよ! しかも、この曲を手掛けてくださった矢野達也さんからは最初に1コーラスだけいただいたんですけど、あとからいただいた後半部分が全然違うものになっていて!(笑)。でも、矢野さんは毎回私に課題曲みたいなものを出してくださる方なので、きっと「駒形さんなら歌えるんじゃないか?」という期待を込めて……あと、矢野さんの楽しくなると「もっともっと!」ってやっちゃう無邪気なところも出て(笑)、この形になったんじゃないでしょうか。

――歌うなかで、駒形さん自身が新しく試みられたことはありますか?

聴いたときの語感やリズムがより大事になる曲のように感じたので、歌詞の意味も踏まえたうえで、より言葉が音として曲に馴染むことを意識しました。なので、あえてはっきり歌わなかったりぼそぼそ歌ってみたり、普段ならファルセットで綺麗に出すようなところをあえて地声でギリギリ汚くなりそうな声で歌ったり……と、本当に今まであまりやってこなかった表現をしていきましたね。
○●駒形も彼女のファンも意識された、華やかな”夜”の歌

――そこに続く「Love is Action!」が、BURNOUT SYNDROMESの熊谷さんが手掛けられた曲なんですよね。

そうなんです。以前番組で共演させていただいたときに、熊谷さんが私が歌っていたキャラソンをすごくたくさん聴いてくださっていると教えてくださったことがきっかけなんですけど、最初の打合せの時点ですでに曲を作り始めていたりとすごくはっきりイメージをお持ちだったようで。それに私も、引っ張っていただきました。

――「オービタル」とはまったく雰囲気の違う、ファンタジックかつドリーミーな曲になっています。

私の中には、”夜のアルバム”の曲にこういったイメージがなかったんですけど、”夜”というものへの感じ方も人の数だけあるから、こういうハッピーな夜ももちろんあるなと気づいて。だから、すごく「いいなぁ」と思いました。

――歌声のアプローチも、この曲ならではのものになっていますね。

はい。ただ、実はこの曲、「Night Walk」とはまた別のベクトルですごく思うがままに歌えた曲といいますか……私ってきっと、ロジカルにやるタイプではなくて。曲から受けたインスピレーションで自分の中にあるものが自然と出てきて、それを掘り下げたり膨らませたりしていくタイプだと思っているんですけど、この曲は本当にそれがスムーズにいった曲でした。だからこの曲は、現時点での自分の集大成のような曲になりましたし、そう言えるような表現ができました。

――もしかしたら元々、熊谷さんの中に歌ってほしい曲の理想像があったのかもしれませんね。

そうですね。しかも歌詞の中には私の好きな映画のタイトルも入れてくださいましたし、「『もっと勇気を持って、一歩踏み出していろんなことをやっていいんだよ』というメッセージを、駒形さんがファンの人に向けて歌うことに意味がある」と、控えめで真面目な方の多い私のファンのことまで大事に考えて「Love is Action!」というタイトルの曲にしてくださって……すごく感動しましたし、とても大切な曲になりました。

●リスナーの日常に寄り添う1枚であり、2部作になっていたら
○●タイプ異なるバラード2曲で、駒形が表現したものとは

――そこからまたガラッと雰囲気の変わる「真珠星」が、三好さんが手掛けられた曲。

いやぁ、バラードなのにこんなにキラキラするなんて……私のイメージする”バラード”はちょっと湿度の高いジメッとしたものなので、すごく爽やかでキラキラしたバラードは、なんだか眩しくて素敵だなぁって思いました(笑)。

――この曲では、特に表現したかったものはどういったものでしたか?

バラードではありますけど、曲が終わる頃には気持ちがスッキリして前を向いて、またひとつ成長して変わった自分になっている……という心の強さでしょうか。落ち込んでいるところから成長してポジティブな気持ちになるって相当なエネルギーが必要なはずなので、弱さだけではなくてそういう強さもこの曲の中で表現できたらな、と思っていましたね。

――失恋を描いてはいますが、おっしゃるように弱さだけではなく自分の中で整理できているような部分は歌声からも感じられました。

最初はやっぱり寂しさみたいなマイナスな気持ちから始まるんですけど、夜空の星を見上げながら改めていろいろなことを考え直していくことで、前向きになっていって。それで、泣いているんだけど最後は笑っている……みたいな表情感は、思い浮かべながら歌いました。

――そして「insomnia」。こちらも御自身で作詞された曲ですが。

先に作詞させていただいた「empty」では作品からのインスピレーションなどもあって自分の中で”作ったもの”の中で言葉を選んでいたので、「insomnia」は暗くなっても地味でも重くてもいいから、とにかく自分の想いを”吐き出した”ような感じの歌詞になっています。やっぱりファンの方からも、妹からも「詞が重い」って言われてしまいましたけど(笑)。

――楽曲へのリクエストも、最初からそういったことを念頭に置いたうえでのもの?

いや、「真珠星」とは違うジメッとしたバラードも歌いたかったというのはあったんですが、私自身が作詞するかどうかはあとで決まったことなんですよ。特に私は寝付きがすごく悪いので寝る前にいろんなことを考えてしまって、そういう時間をしんどいなと思うこともあるんです。だから、同じように感じている人たちが、「自分だけじゃないな」とか「こういう考えでもいいのかな」みたいに、考えるきっかけになったら嬉しいです。

――サビでのファルセット混じりの歌声が時折震えているなど、歌声が”弱さ”を的確に表現しているように感じました。

嬉しい……レコーディングでも、サビでどれぐらい声を出すかとか、感情の込め方といった方向性についての話し合いは、ディレクターさんとしっかりとさせてもらったことなんですよ。聴いている方に歌詞の世界をイメージしてもらえるような歌になるように、歌っていきました。
○●コンセプトを決めない作品も、いずれ制作してみたい

――最後を飾るのは、インストに駒形さんのコーラスが響く「Good Night」です。

いろんな表情の夜の曲を聴いて、いろんな人の夜が終わって眠りにつく……という睡眠導入のようなイメージの曲です。なのでコーラスも、綺麗にハモっている部分もあれば、私が近くで子守唄を歌っているような生っぽい部分もあります。これを聴いて眠ってもらえたらすごく嬉しいですけど、幻想的な雰囲気の歌詞もない曲なので、聴く人なりのイメージで各々楽しんでもらえたらなと思います。

――しかも『a Day』のM1に戻ることもできそうですね。あちらもインストなので。

あ、たしかに!日頃から「聴いてくださる方の日常に寄り添うような歌をうたいたい」という想いがあるので、この2枚が日々繰り返し聴いていただけるような作品になったら嬉しいですね。

――今回も非常にコンセプチュアルなアルバムになりましたが、違ったスタイルの作品づくりにも興味はありますか?

あります。ざっくり曲を集めて、その中で「絶対歌いたい!」という曲を1~2曲決めて、そこに合わせて全体像を考えて他の曲やイメージを決めていって……作曲家さんたちの今のマインドで好きに作ってもらった曲の中から、私の価値観とガチッと合って歌いたい曲を見つけてアルバムを作るということもやってみたいですね。たとえば今だと、歌詞がバーッと流れていくような速い曲がマイブームなので、そういう曲とも出会えたらぜひ歌ってみたいです。