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BTS JIN、常に弟たちに寄り添う最年長としての役割 自らの実力を磨き、努力から生まれた自信で届ける笑顔

2020年11月15日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『BE (Deluxe Edition)』

 BTSのニューアルバム『BE (Deluxe Edition)』のリリースが11月20日に迫る中、11日にはメンバーによる手書きのトラックリスト&カバーデザインが公開され、大きな話題になった。


(関連:BTS JIMIN、涙に表れる練習に注いできた思いの熱さ ダンスや歌の才能あふれる“パレット”に感じる可能性


 今回収録される楽曲は「Life Goes On」「내 방을 여행하는 법(Fly To My Room)」、「Blue & Grey」「Skit」「잠시(Telepathy)」「병(Dis-ease)」「Stay」「Dynamite」の8曲(※カッコ内は英語タイトル)だ。「잠시」は日本語に直訳すると“しばらく“になるのだが、“テレパシー“というい英語タイトルがつけられているところに、5月11日にYouTubeでアップされたアルバム会議の動画を思い出す。


 多くの人が生活の変化を感じた2020年。BTSもライブができなくなり、辛い思いをしているARMY(ファン)を慰めたいという気持ちはあるものの、それを直接的な言葉にしてしまうと誤解も生じやすいと頭を悩ませたメンバーたち。そのときRMが「そういう気持ちが言葉にしなくても伝わればどれだけいいだろう」と語り、「テレパシー」というキーワードを話していた。テレパシーとは科学技術ではなく、掛け合った言葉、発信した思い、歌った曲たち、交わした視線……これまで一緒に過ごした時間の積み重ねで実現できるものではないか、と。


 その思いを聞いたSUGAは、小さなメモ用紙のことを思い出す。それはファンが書いてくれたもので、とっさにしおりのように本に挟んだものだった。まるでドラマのように、ふと開いた本からハラリと落ちたメモ用紙。書かれていた文字は「いつも一緒にいてくれてありがとう」だった、と。そこからアルバムのテーマが「手紙」だったらいいな、と思ったという。公開されたトラックリスト&カバーデザインが手書きだったことも、ここから繋がっているのだと思うと、たしかに彼らの思いが込められたアルバムなのだと再確認できる。


 その際「辛いときもいいときもあったし、たしかに人と自分の辛かったことは違うけれど、方向性は同じで。嬉しいのも、辛いのも、憂鬱なのも、“みんないっしょなんだ”って共感する形で楽曲を書いてみたらどうか」とアイデアを出していたのは、最年長のJINだった。JINは、いつも周りの人に共感してきた。共に笑い、共に傷つき、弟たちに寄り添ってきた。それは、プライベートでは弟であるJINが、BTSでは長兄になるときに誓ったこと。“弟たちをなんとしても守る”ということに尽きる。


 「ワールドワイドハンサム」と自称したり、投げキスを連発したり、その無邪気な姿に、よく「弟みたいな兄」と言われるJIN。JIMINとのモッパン(食事をする配信)動画では、「わかりました」と日本語で話したJIMINに、「칼 마싯타(カリマシッタと聴こえる空耳※ナイフおいしいの意)?」と返して、笑いを誘うなどいつもメンバーを笑わせてくれる。


 ときにはマンネ(末っ子)のJUNG KOOKからも「もうイメージ回復は無理だと思います(笑)」と冗談を言われるほど。最年長が年下メンバーから遠慮なくイジられるという図は、それだけで風通しの良さを感じられるもの。かつてホームシックになったメンバーを実家につれていき「ここがホームだと思って」と言ったというエピソード。彼が常にメンバーを気にかけ、1人で溜め込まないように声をかけ、そしてこの風通しのよい空気を作ってきた。


 とはいえ、デビュー当初からそうした振る舞いをしていたわけではなく。JINはどちらかと言えばはたから見るとクールな印象だった。それは、彼のキャリアが影響していると言えるだろう。もともと俳優を目指し、建国大学校映画芸術学部に入学したJINは、街で事務所のスカウトを受け、オーディションを経て練習生となった。


 ダンスもボーカルもイチからのスタート。他のメンバーはすでに経験や才能で輝きを見せ、若さゆえの可能性に満ちあふれていた。そんな弟たちとグループを共にするには圧倒的な努力しかない。特にダンスは全員の動きを合わせたときに、その実力差が明確に出る。すでにダンサーとして才能を認められていたメンバーと踊るというプレッシャーは相当なものだったはずだ。


 「正直言うと、僕もダンスをうまく踊れるようになりたい」という本音をLogに残していたこともあった。いつかデビュー前からハイレベルなダンスを披露してきたメンバーのように踊るために、毎日欠かさずみんなが寝ている間も筋トレをし、夢の中でもレッスンをしているような寝言をメンバーに聞かれたというエピソードも語られている。


 JINの努力が報われたかどうかは、BTSの一糸乱れぬ群舞を見れば明らか。さらに高い歌唱力も披露し、その歌声は「シルバーボイス」と評されるほどに。これからの季節は、JINの高音が美しく響く「Crystal Snow」が恋しくなる。一度心に決めたことをやり遂げる芯の強さが、そのまっすぐ伸びる歌声に表れているからだ。


 自らの実力を磨くことで弟たちの活躍の場を広げ、その努力から生まれた自信で弟たちに笑顔を届け、ときには心ない言葉に傷つく弟たちのことも盾となって守ろうとしてきた。2019年には初の自作曲「Tonight」を発表したことも、記憶に新しい。虹の架け橋を渡っていったペットたちへの想いを、柔らかなあの声で歌い上げる。どこまでも痛みに寄り添えるからこそ、紡ぐことができるやさしい楽曲だ。


 そんな長兄を見て弟たちは、さらにBTSというファミリーに誇りを持つことができたに違いない。ここは安心して自分を表現できる場所。そうした安心感が自分らしさを出すアーティストたちにとって、どれほど大切なものか。それはこの大変な今、それでも自分の人生を生きようとする私たちにも繋がる。「たしかに一人ひとり辛いことは違うかもしれれないけれど、きっと共感できるよ」。そう語りかけてくれそうな、JINの想いが集約された最新アルバムのリリースが実に待ち遠しい。(佐藤結衣)