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“GACKT無惨”によるLiSA「炎」カバー、『鬼滅の刃』ファンからも好評の理由 動画から感じた作品に対する敬意

2020年11月14日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『GACKTの勝ち方』

 今、日本中の人々の心を最も熱くさせているアニメ、『鬼滅の刃』。コロナ禍で映画業界が苦しむ中、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は国内で歴代興行収入5位という華々しい記録を打ち立てている。主題歌の「炎」(LiSA)は、Billboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”で4週連続の首位を獲得。テレビアニメ版の主題歌「紅蓮華」に続くメガヒットとなった。


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 そんな大ヒットソング「炎」を、歌手のGACKTがカバーした動画が今話題となっている。11月9日に「【鬼滅の刃/炎】GACKT無惨が歌ってみた」というタイトルでGACKTのYouTubeチャンネルにアップロードされた動画は、僅か3日で300万再生を突破(11月12日時点)。10万件以上の高評価を獲得し、急上昇ランクにも掲載された。今年1月1日に開設されたGACKTのチャンネルには、有名YouTuberとのコラボやASMRなどのいわゆる王道のYouTuber的なものから、筋トレや英語学習、女性を落とすフレーズの紹介などGACKTならではのものまで、合計100本以上の動画がアップロードされているが、本動画はその中でも圧倒的な再生回数を記録。「炎」の歌ってみた動画は、人気YouTuberのヴァンゆんやエミリン、歌手の後藤真希、手越祐也、川畑要(CHEMISTRY)なども同様にアップしているが、再生回数はGACKTがトップを独走している。コメント欄には、6000件を超える絶賛の声が寄せられており、GACKTファンはもちろん、鬼滅ファンからも好評を得ているようだ。人気曲のカバーとはいえ、ここまで注目を集めている理由は何だろうか。


■最強の悪役・無惨に重なる、GACKTの存在
 まずは、当然ながら『鬼滅の刃』に登場するキャラクター・鬼舞辻無惨のコスプレをしていることが理由の一つだろう。『鬼滅の刃』の人気が高まるうちに実は一部のファンからは「GACKTが無惨に似ている」と言われていたのだが、GACKTの“無惨コス”が一気に話題を集めたのは、10月30日に公開されたInstgramの自撮り画像。赤いカラコンとゆるいウェーブのかかった黒髪で“無惨コス”をしたGACKTの姿は、クールで気品のある無惨のビジュアルイメージにかなり近く、Twitterでも広く拡散された。さらにその後、“無惨コス”で「頭を垂れて蹲え。平伏せよ」と、作中の無惨のセリフを言い放つ動画も投稿され、“GACKT”がTwitterのトレンド入りするなど、大きな話題となった。


 とはいえGACKTの“無惨コス”がハマっている理由は決してビジュアルだけではなく、二人のキャラクター性にも重なる部分があるからではないだろうか。鬼舞辻無惨は、『鬼滅の刃』におけるラスボス。全ての鬼の頂点に君臨する完璧な強さと、登場する度に空気が張り詰めるほどの圧倒的な脅威のオーラを纏う、最強の悪役である。完璧な強さと脅威のオーラ。これらのキーワードは、GACKTのイメージにも通じる。GACKTは、鍛え上げられた身体や隙を感じさせないビジュアル、威厳のある立ち居振る舞いから、人間離れした王者の風格を感じさせる。ハードなスケジュールの中でもストイックにトレーニングを続けて若々しい肉体をキープし、毎年話題になる『芸能人格付けチェック』では圧倒的な知識量から連勝記録を更新し続けている、まさに完璧を貫く男である。その絶対的王者のようなキャラクター性は、芸能界でも唯一無二といっても過言ではない。


■作品に敬意を表した“歌ってみた動画”
 「炎」は、ドラマチックで切ないメロディのバラード。映画でフィーチャーされた煉獄杏寿郎を連想させるような、強さと優しさに満ちた歌詞は、身近な言葉だけで構成されているのに胸に深く突き刺さる。音楽と言葉の力を感じさせてくれるこの曲は、聴くだけで映画の中で観た光景が頭に浮かび、感動が蘇る。もちろん鬼滅ファンも絶賛の嵐だ。


 人気作品に関する動画は、注目を集めやすい反面、中途半端なものやリスペクトが感じられないものだと反感を買いやすい。作品のファンは、シビアな目でそのクオリティや姿勢をジャッジするからだ。その中でGACKTは、高いクオリティの歌唱と作品への敬意をしっかり示していた。


 まず歌う前にGACKTは、「この素敵な曲に敬意を表し、無惨の雰囲気で歌いたいなと思います」「この作品が大好きな人達に、こんなアカペラあるんだっていうのが届けば、こんな表現があるんだって伝わればいいなと思います」と、作品のファンへ向けたコメントを残す。しかし歌が始まれば、そこはもうGACKTの独擅場。原曲よりもゆったりとしたテンポで、力強く、そして繊細に、歌詞の一つひとつを大切に歌い上げ、LiSAの歌う原曲とは別次元での魅力を見せつけた。またこの動画は、アカペラ一発録りであることに加え、アングルの切り替えすらない。無惨のコスプレをしているという点以外は非常にシンプルだ。派手な効果や演出を削ぎ落とし、楽曲と歌唱力で勝負した潔さも、作品への敬意の表れだったのかもしれない。


 まさに原作から抜け出してきたかのような完璧な“無惨コス”、そして圧倒的な歌唱力と作品へのリスペクトで、鬼滅ファンの心も掴んだGACKT。そのカリスマ性は、流石の一言だ。(南 明歩)