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「魔女見習いをさがして」は“どれみ愛”にあふれた映画―千葉千恵巳×秋谷智子×松岡由貴【キャストインタビュー】

2020年11月13日 19:52  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

松岡由貴、千葉千恵巳、秋谷智子
11月13日公開の映画『魔女見習いをさがして』。

『おジャ魔女どれみ』20周年記念を機に製作された本作は、おジャ魔女たちが再結集したキービジュアルや、ファーストシーズン主題歌「おジャ魔女カーニバル!!」の起用などで、公開前からファンを喜ばせていました。


久しぶりの『どれみ』に心を躍らせているのはキャスト陣も同じ。
春風どれみ役・千葉千恵巳さん、藤原はづき役・秋谷智子さん、妹尾あいこ役・松岡由貴さんにお話をうかがうと、どれみたちのように仲睦まじい雰囲気で映画の感想やTVシリーズ当時の思い出を語ってくれました。

さらに映画のために新録した「おジャ魔女カーニバル!!」では、20年が経ち初めて気づいたポイントがあったとか……?
[取材・文=ハシビロコ、撮影=小原聡太]


「おジャ魔女カーニバル!!」20年目の真実
――本作は『おジャ魔女どれみ』シリーズとしては久しぶりの映像作品です。映画化が決まったときの感想を改めてお聞かせください。

松岡:映画はメディアミックスの中でも最高峰の位置づけだと思っていたので、いきなり頂点から「おかえり!」と言われたようでビックリしました。
『おジャ魔女どれみ』はドラマCDや小説などで作品自体は続いていましたが、まさか映画になるなんて思ってもみませんでした。



秋谷:私も本作が劇場作品だと聞いたときは、とても驚きました。また大きなスクリーンでみなさんに作品を届けられることがとても嬉しいです。


千葉:私の場合「映画化するんだ!」と、スッと受け入れられました。
それに歴代『どれみ』映画ではどれみが主役ではなかったので、脚本を読むまでは冷静でいよう、と。期待し過ぎると、魔法で出したステーキみたいに目の前で消えてしまう(笑)。世界一不幸な美少女だったので、こう思ってしまうのも仕方ないです。

――完成映像をご覧になっていかがでしたか? 試写会では松岡さんが号泣したとうかがったのですが……。

松岡:マスクの中に涙が溜まってしまうくらいに泣きました。映像を見たとき、今まで『どれみ』のイベントで各地をめぐったときの思い出や出会えた子たちの顔がよみがえってきて。

いつもは涙が流れても放っておくタイプなのですが、本作はあまりにも涙の量がエグかったので(笑)、タオルを出して涙を拭いたほどです。

千葉:音楽の使い方もズルいんです。「ここでその曲を流したら泣くに決まっている!」と思う場面がありました。


――音楽といえば、予告映像で「おジャ魔女カーニバル!!」が使用され話題となりました。歌は新たに収録したのでしょうか?

秋谷:新録です。ただ、今までの「おジャ魔女カーニバル!!」とは違う部分があって……。実は私たちが当時歌っていたメロディーが、ところどころ間違っていたことが発覚しました(笑)。

千葉:勝手にアレンジしていたみたい(笑)。まさか20年間、みなさんに本来とは違うメロディーを聞かせてしまっていたとは……。
新しい音源には聞き覚えのない音が入っていたので、「これをお手本にしたら歌えなくなる!」と思い込んでいました。

松岡:レコーディングのとき、ディレクターさんに「音が違うのはなぜですか?」と質問したら、「今回渡した音源が譜面通りの音なんだよ」と言われて。ですから今回は正確な音で録っています。

秋谷:それでも気を付けないと20年間歌っていたアレンジに戻ってしまう(笑)。みんなで四苦八苦してリテイクを重ねた末に完成しました。

千葉:今回こそは正式バージョンなので、違いを探してみてください!


――20年前の「おジャ魔女カーニバル!!」収録で印象に残っていることはありますか?

秋谷:初めてキャストと顔を合わせたのが「おジャ魔女カーニバル!!」の収録だったので、「誰が来るのかな?」とドキドキしたことを今でも覚えています。どれみ役オーディションの結果は知らなかったので、とくに気になっていました。

松岡:どれみ役の最終オーディションに、あいことはづきも掛け合い相手として参加していたんです。当時もうひとりのどれみ候補だったのが、ぽっぷ役の(石毛)佐和ちゃん。
佐和ちゃんはすごくしっかりしている子なのですが、オーディションではあまりに緊張して様子がおかしくなっていたんです(笑)。

千葉:オーディションのときの佐和ちゃんは貴重な姿でした(笑)。今となっては、私たちキャスト陣の中で一番しっかりしています。
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魔法の呪文と忘れられない言葉
――TVシリーズのお話もうかがえればと思います。当時のアフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか?

松岡:声優以外の方が多い現場だったので、時間をかけて丁寧に録ってくれました。私たちもアニメのアフレコに慣れているわけではなかったですし、さまざまなジャンルの人材が集まった少し変わった現場だったかもしれません。

千葉:台本を持たずにマイク前に立つ俳優さんもいました。事前にセリフを丸暗記していて。その方はリップシンク(口パク)に合わせることを難しく感じていたので、画面を見ながら話せるように工夫をしていました。

秋谷:初めて見たときは驚きましたが、カッコよかったです。俳優さんならではのアプローチの仕方も勉強になりました。


――役作りについて、なにか意識したことはありましたか?

秋谷:はづきと話すテンポ感が一緒だったので、とくに役作りを意識せずに自然体で演じられました。「こんな感じで話すだろう」と、自分の中からはづきが湧き上がってくるんです。ときどきキャラが壊れるところも親近感がありました(笑)。役者に自由に任せてくださる現場だったので、とても演じやすかったです。

松岡:役の絵を見たときにストンと声が降りてくることがあり、あいちゃんはまさにそのパターンでした。
ボーイッシュ過ぎず、元気よく、コテコテの関西人になり過ぎないように……と、オーディションの前にあいちゃんの絵を見ながら考えることは多々あったものの、ふと「これだ!」と思うものが降りてきました。迷わず軸がスッと定まったので、そこからブレないように演じています。

千葉:どれみはとてもまっすぐなキャラクターだったので演じやすかったです。なにかを考えてから行動するのではなく、何事にも直球で純粋無垢。そこが持ち味のキャラクターだと思ったので、難しいことは考えずに演じました。


――『どれみ』といえば呪文も印象的です。アフレコではどのようなディレクションがありましたか?

千葉:とくにディレクションはなかったので、呪文のイントネーションは私のオリジナルです。

秋谷:私たちも、呪文の言い方は最初に型を作ってくれた千葉ちゃんを見習いました。

千葉:もともとの台本では「ピリカピリララ」と長音がない状態だったんです。
「とりあえず何パターンか録ってみようと」言われたものの、どうバリエーションを加えようか悩んで。こうなったら一音ずつ伸ばしていくしかない、と試してみたものが採用されたんです。

秋谷:よくその技を思いついたなあ、と感心しました。「監督からは自由にやってみてください」と言われて困惑しながらものびのびやらせていただきました。

松岡: 第1話でアフレコの見学と、ガヤとして出演しましたが、あいちゃんとしての登場は3話からでした。あいちゃんは登場話数からいきなりメインとなるお当番回だと決まっていたので、1話見学の時点でかなり緊張していたんですが、シリーズの最初に佐藤監督が「ダメだったら何度でも取り直せばいい」って言ってくださって本当にありがたかったです。

『どれみ』の全部が好きな理由
――TVシリーズでとくに印象に残っているのは何話目でしょうか?

秋谷:『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』の第49話「ずっとずっと、フレンズ」です。
はづきは今まで、ママにも自分の気持ちを伝えられないほど、気を遣い過ぎてしまう子として描かれてきました。だからこそ、親友にきちんと自分の言葉で本心を伝えた第49話にはづきの成長を感じます。
シリーズのラストでそんなはづきの姿を届けることができて嬉しかったです。

でも、アフレコ当日は朝から本当に気が重くて。心がはづきになってしまっていたので、「今日こそどれみちゃんに言わなくちゃ」とずっと決意を固めていました。いまだに当時の気持ちを忘れられないほど思い出深い回です。


千葉:私は……。

松岡:千葉ちゃんはたぶん「全部!」というので私が先に話します(笑)。

千葉:どうかな…(笑)。お先にどうぞ!

松岡:TVシリーズに限って挙げると、『おジャ魔女どれみ』第34話「お母ちゃんに逢いたい!」が印象的でした。私のお当番回は「お母ちゃんシリーズ」が多いのですが、とくにその第1回となる第34話は衝撃が大きかったです。

みんなで大阪に行ったときにお母ちゃんが赤ちゃんを抱っこしている場面を見てしまい、新しい家庭を作っているのだと誤解する。そんな深い内容と衝撃は今でも忘れられません。
私自身は台本を読んでいるのでそれが誤解だとわかっているのですが、あいこはかなりショックを受けているだろうな、と思いアフレコに臨みました。
隣にどれみとはづきがいてくれて心強かったです。

千葉:お待たせしました、「全部好き」な千葉です(笑)。でも、全部の話が印象に残るほどの理由があります。
『おジャ魔女どれみ』シリーズはクラスメイトひとりひとりに名前が付いていて、家庭事情など背景がきちんと描かれている、みんながフィーチャーされている作品なんです。

どれみはそんなキャラクター全員を結びつける役割を果たしているので、特定のエピソードを選ぶなんてできません。ひとつを選ぶと、ほかのクラスメイトがいなくなってしまうような気がして。だからどの話も全部大切で、印象的です!

松岡:だからといって、『ドッカ~ン!』ラストの卒業式(第51話「ありがとう! また会う日まで」)でバリケードを作って立てこもるとは(笑)。

千葉:みんなが大事などれみだからこそ、あのラストにつながったと思います(笑)。
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大人になったら何になりたかった?
――本作の予告編では「大人になったら何になりたい?」とどれみが聞いています。みなさんが子どもの頃に抱いていた夢はなんでしょうか。

千葉:舞台役者をしていた兄の影響で、子どもの頃から役者になりたいと思っていました。
小学生時代に見に行った芝居で、兄が愛に関する曲を歌っていたんです。当時の私からすれば少し恥ずかしかったのですが、楽しそうに演じる兄が忘れられず「私も同じことがしたい!」と思って。だから今の私がいるのは兄のおかげです。


松岡:もともとは人見知りでおとなしい子どもだったんですが、「このままだと世の中を渡っていけない」と心配した母が、児童劇団の養成所に連れて行ってくれたんです。それがきっかけで、9つの頃から子役として活動していました。
そのため、「将来は芸能関係のお仕事でご飯を食べていく」と漠然と考えていました。

だから小学校のクラスメイトと将来の夢を語っていたとき、みんなはお花屋さんやケーキ屋さんみたいなかわいい夢を挙げているのに「芸能関係の仕事がなくなって、にっちもさっちもいかなくなったときは結婚する」と達観したことを言っていた記憶があります。(笑)。

秋谷:私は子どもの頃遊んでばかりいて、将来の夢についてそれほど考えていませんでした。
でも、子どもが好きだったので幼稚園の先生を目指すようになり、勉強の末、幼稚園教諭の免許を取得しました。でも残念ながら免許を持っているだけで、活用したことはありません。

それでも『どれみ』のおかげで全国の子どもたちと接する機会に恵まれましたし、幼稚園の先生を目指したことも無駄ではなかったかな、と思います。

――ありがとうございます。最後に映画を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。

松岡:本作の主人公は、今まで『どれみ』を見てくれていたみなさんです。ぜひ「私が主役なんだ!」と思って見てほしいです。
登場人物の誰かに自分を投影させてもいいですし、自分だったらどう行動するかを考えてみるのもいいと思います。20年経った今、成長したみなさん自身とともに映画を楽しんでいただけると嬉しいです。

秋谷:スタッフやキャストのどれみ愛しか感じない作品に仕上がっていて……。(感極まりつつ)なんで私、泣きそうになってるんだろう(笑)。

松岡:私もさっき、すごく涙を我慢していました!

秋谷:『どれみ』を好きな気持ちが映画からたくさん伝わってくるので、思い出しただけでも泣けてきてしまいました。
千葉ちゃんも冒頭で言っていましたが、音楽面でも、当時見ていた方はより楽しめる仕掛けがあります。「あのシーンでかかっていた曲だ!」と思い出がよみがえるはずです。

『どれみ』は身近に起きることが題材になっているので、悩みや沈んだ気持ちがあったとしても、この映画を見ればなにかヒントが見つかって幸せになれると思います。ぜひ劇場で楽しんでください!


千葉:『どれみ』はみんなが好きになってくれたおかげで、今も大切にしてもらえている作品です。20周年を機に当時のスタッフが結集して、みんなのための映画を作りました。
由貴ちゃんも言っていたように、自分が作品の中に入って主役になった気持ちで見ていただけると、さらに楽しめると思います。

映画で初めて『どれみ』の世界に入る方も、敷居を感じなくて大丈夫です。『どれみ』の方向性は放送当時も今も、魔法ではなく人間の力で物事を解決していくこと。つまり現実と一緒なんです。

日々の中のひっかかりを解決するヒントにもなるので、映画を見ていただけると軽い気持ちになって、毎日を楽しく生きていけるのではと思います。

◆◆◆
20年分の思いがあふれ、メッセージを語るキャスト陣の目には涙が。同窓会のような和気あいあいとした雰囲気の中にも、作品やファンへの愛がにじみ出るインタビューとなりました。

キャスト陣も太鼓判の『魔女見習いをさがして』。子どもの頃の気持ちを思い出しながら、新たな物語をスクリーンで味わってみてはいかがでしょうか。



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