2020年11月12日 11:02 弁護士ドットコム
日本学術会議の三つの分科会は、性犯罪に関する刑法見直しについて、「暴行または脅迫」要件を撤廃し、国際人権基準にならって同意のない性行為を犯罪とするよう求める提言をまとめた。
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具体的には、「不同意」のケースを条文に列挙するなど、諸外国の刑法を参考に「同意の有無」の判断基準をできるだけ明確化、客観化する形で検討されるべきだとした。
性犯罪に関する刑法は2017年、110年ぶりに大幅改正されたが、提言は「被害者の性的自己決定権や性的自由を保護するのには十分な規定となっていない」とさらなる見直しを求めている。
今の日本の法律では、13歳以上の男女に対して「暴行または脅迫」を用いて性行為をした場合、刑法の強制性交等罪(13歳未満の男女の場合、暴行・脅迫要件はない)が成立し、「心神喪失または抗拒不能」となった人に性行為をした場合、刑法の準強制性交等罪が成立する。
合意のない性行為にも関わらず、これらの要件の認定ハードルが高いために立件されない事案があるとして、被害者団体などは要件の見直しを求めている。
提言は、「暴行または脅迫」の程度をはかる尺度が曖昧で見えにくいという問題は依然として残っていると指摘。
「暴行または脅迫」要件を撤廃しても「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の大原則が損なわれるわけではなく、諸外国の刑法改正を参考に、「暴行または脅迫」要件を削除し「同意の有無」を中核にすえるよう改めるべきだとした。
法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」でも、被害者の意思に反する性行為について、どのような処罰規定を設けるか議論が進んでいる。
しかし「同意のない性行為は犯罪」と一言で言っても、被害者の心理状態はさまざまだ。どのような状況であれば「不同意」と扱われることになるのだろうか。
検討会の委員で、性犯罪被害にくわしい上谷弁護士は以下のように話した。
「現在は同意がなかっただろうということを推認させるという意味で、客観的な要件として『暴行または脅迫』というものがあります。同意というのは内面の話になるため、明確性が必要となります。
同意のない性交をいかに犯罪として形づけていくかについて、まさに検討会で議論がされています。具体的には、相手方の同意がない事例として、威迫や不意打ちなどの要件、被害者に対する権力関係にある者がその地位を利用しておこなう事案など、客観的な要件を列挙していく方向性になっています。
『不同意性交等罪』は、理念としてはその通りです。しかし、同罪を創設した諸外国でも無罪率が高いなどの課題もあり、さらなる議論が必要だと考えます」