「洋服の青山」を全国展開する紳士服大手の青山商事は11月10日、新型コロナウイルスの影響で業績が落ち込んでいるとして、400人程度の希望退職を募集すると発表した。
募集対象は、2021年3月時点で40~63歳未満かつ勤続5年以上の正社員および無期契約社員。12月14日から来年2月29日まで募集を行い、応募者は5月末で退職する。割増退職金の支払いなどで、同社は特別損失として40億円程度を見込んでいる。
テレワークが進みメンズスーツの販売着数が半減
同社が7月から行っている役員報酬のカットについては、希望退職の募集に伴い、さらなる減額を実施する。期間は21年1~3月で、代表取締役は月額報酬の30%、取締役と専務執行役員は20%、社外取締役・常務執行役員・執行役員は10%をそれぞれ減額する。
さらに11月11日には、中間決算の説明資料を公開。売上高は前期比20.9%減の1723億円、営業損益は128億円の赤字(前期は8億1800万円の黒字)、純損益は292億円の赤字(同169億円の赤字)をそれぞれ見込んでいる。
21年3月期のメンズスーツの販売着数は、32万3000着と予想。前年同期の65万2000着から半減した。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、テレワークや就活のオンライン化が広がったことから、スーツの需要が大きく減少したとみられる。
また、来年度までの3年間に85店舗を閉店するとしていた計画を見直し、さらに75店舗を追加閉店する見通しを発表。全体の2割にあたる計160店舗を閉店することになる。同社は狙いについて、
「閉店店舗数の拡大と、一部店舗の前倒しをするとともに、新たに希望退職制度を実施し、人員のスリム化を断行、次年度以降のコストを大幅に見直す抜本的なコスト構造改革を実行する」
などと資料の中で説明している。
AOKIは売上3割減、業績見通しも厳しく
新型コロナウイルスの影響は、競合の「AOKI」を展開するAOKIホールディングスにも等しく及んでいるよう。日本格付研究所は10月下旬、同社の格付の見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。
理由については「新型コロナウイルス感染拡大に伴う、消費行動の変化による各事業の売上低迷」に加え、
「各事業の需要回復が見通しづらい中、当面の利益水準は従前に比べ低位に留まる可能性がある」
などとした。同社が11月6日に公表した第2四半期決算の資料によると、売上高は前期比32.4%減の559億5200万円、営業損益は118億8500万円の赤字(前年同期は3億7700万円の黒字)、純損益は96億6100万円の赤字(同9億8800万円の赤字)をそれぞれ見込んでいた。
また、アパレル大手のワールドも、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う臨時休業などの影響を受け、4~9月までの売上が790億円(前年同期比32.8%減)、最終的な損益が110億円の赤字になった。一部報道によると、この時期の赤字は5年ぶりで、赤字の規模は過去最大という。