2020年11月11日 16:31 弁護士ドットコム
離婚が成立していないひとり親のなかで、中学生までの子供がいる世帯に支給する児童手当が受け取れていない実態があるとして、NPO法人などでつくるプロジェクトチームが11月11日、会見を開き制度改善を訴えた。
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プロジェクトの実態調査で、別居中、離婚前のひとり親世帯の18.1%が「児童手当を受け取っていない」と答えた。子どもと同居していない親が管理する口座に振り込まれているものの、振込先の変更ができずにいるケースがあるためだ。
プロジェクトのメンバーで、認定NPO法人フローレンスの代表理事・駒崎弘樹さんは「離婚前や別居中のひとり親の統計すらないことは非常に問題だと考えている。制度の間に落ちている人を救済してもらいたい」と話した。
アンケートは9月10日から23日にインターネット経由(マクロミル)で別居中もしくは離婚前のひとり親家庭を対象に実施し、262人のひとり親から回答を得た。
「児童手当を受け取っていない」と答えた人のうち、受給者の変更をしていない、手続きをしたが受理されなかった人が約6割、変更できることを知らない人が約4割で、プロジェクトは「制度の周知に課題がある」と指摘した。
自由回答では、「住民票の閲覧制限をかけて受給者を移したかったが、精神的暴力が理由だったため、女性相談の方から『命の危険はない』と支援措置を受けられなかった」(離婚調停中の女性)、「離婚が成立していないと何もできないと区役所で言われた」(婚姻費用調停中のDV被害女性)などの声があった。
会見には当事者の女性も参加した。
現在離婚調停中で2人の子どもがいる女性は、別居から2年後にようやく児童手当を受けられるようになった。しかし、その間の2年分の手当は夫から支払われたことはないという。女性は「児童手当を受け取れて、少しずつ夫の支配から逃れられたように思う」と話した。
福井県立大学の北明美名誉教授は「社会保障としての児童手当は、親の意思に関わりなく子どもを保障されなければいけないもの。それが実現されない現実がある」と指摘。
NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長は、「子どもを日本社会で育てていれば必ずあるはずの児童手当さえ排除されている。手に届かないことは、あまりにも理不尽そのもの」と問題視した。