2022年のWEC世界耐久選手権に新規定のLMHル・マン・ハイパーカーを投入して参戦することを発表しているプジョー。同社の上級スタッフは、DSオートモビルの電気モーター技術部門を含むグループPSA内の専門知識をプジョーの次期スポーツカープログラムに活用すると述べた。
今年9月にLMHプラットフォームに準じたレースカーを製造することをアナウンスしたフランスのメーカーは、2022年シーズンのWECでデビューすることになる新しいプロトタイプカーのパワートレイン開発に着手している。
プジョー・ブランドのジャン-フィリップ・インパラートCEOは、ABBフォーミュラE選手権に参戦し、2シーズン連続でダブルタイトルを獲得したDSテチーターのエンジニアを含め、グループ内すべての部門がWECプログラムに関連していると説明した。
「全員がそれぞれの経験をブランドにもたらしている」とインパラート氏はSportscar365に語った。
「PSAにはモータースポーツのコアとなる部門があり、それぞれをサポートしている」
「現在、DSのメンバーは電動化プログラムに取り組んでいる。WRC世界ラリー選手権から来たエンジニアの中には『908』のプログラムに関わっていた者もいるんだ」
「興味深いのは、チーム全体がグローバルなオペレーション経験のなかで進んでいることだ。私たちは全員がひとつのチームとしてプッシュしている」
「我々プジョーは重大なプログラムを始めた。それは3、4年後にはパフォーマンスと耐久性を中心にしたものになるだろう」
プジョーは、トヨタの新しいLMHに似た四輪駆動のパワートレインを採用し、最大出力200kWのフロントアクスルマウント電気モーターを使用することを確認した以外に、このクルマの技術的な詳細をまだ明らかにしていない。
プジョースポールのWECテクニカルディレクターを務めるオリビエ・ジャンソニーは次のように付け加えた。
「我々はフォーミュラEを含むPSA内の他のプログラムで得た知識と経験を持っているため、LMHのリソースや開発の量を恐れることはない」
「我々が最適化しなければならないのは、PSAモータースポーツ内の他のレースプログラムとの相乗効果をどれだけ生み出せるかということだ」
「さまざまなプログラムに取り組んでいる人々を集めることができる。人であれ、IP(知的財産)であれ、経験であれ、何であれ、すでに何らかの移転が行われている」
「これは私たちがすでに実施していることであり、重要なことのひとつだ。非常に重要で前向きなポイントだよ」
「仕事の一部には技術的なこともあったが、この課題(ル・マン・ハイパーカー開発)に取り組むことができる組織を設立することも非常に大きな役割を果たした」
「私たちは、PSAモータースポーツ部門の人間だけでなく、PSAグループ内の他の部署からもスタッフを集め始めた。パワートレインのチーフエンジニアは、プジョー908の元エンジン部門マネージャーだ」
■LMH規則は「まったく新しい」アプローチを提供する
以前、プジョー908プログラムのR&Dマネージャーを務め、最近ではリジェ・オートモーティブ(前オンローク・オートモーティブ)でも勤務していたジャンソニーは、LMHレギュレーションによって、トップレベルの耐久レースにまったく新しいアプローチが誕生したと述べた。
「12~15年前、当時のLMP1レギュレーションはハイブリッド・パワートレインの搭載を前提にしておらず、今のようにエネルギー効率に基づいたものではなかった」
「LMP1は今、終わりを迎えようとしている。それは私たちが行っているすべてのことが、考え方の面で非常に異なっていると感じているという点で魅力的なものです」
ジャンソニーによると、2020年春に行われた最初のCOVID-19のロックダウンは、プロジェクトがまだ初期の設計段階にあったため、多くのスタッフがリモートでの作業ができたことからプログラムの開発において「かなり幸運」な時期だったという。
彼は、来年末にトラックテストを予定しているクルマを作るタイミングでロックダウンが来ていたら、それは「非常に異なっていただろう」と述べた。
「目標ははっきりしている」と同氏。「2021年にダイナモでエンジンが承認され、パワートレインは夏から秋にかけて完成する。2021年末までに最初のテストが行われる予定だ」
「(現時点での)計画は、2021年の終わりにテスト用のクルマを作ることだ」