2020年11月03日 10:41 弁護士ドットコム
不倫がバレれば、責任を負う。当たり前のことだが、実際に慰謝料を請求された場合にはモメることも少なくない。弁護士ドットコムにも、「慰謝料を請求されたら、不倫相手に全額負担してもらえないだろうか」という相談が寄せられている。
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相談者は既婚者の男性と不倫していたが、ほどなくして相手の妻にバレてしまった。その際、男性は、もし妻が慰謝料を相談者に請求してきたとしても「全部オレが払う」と伝えてきたという。
その後、予想通り、男性の妻から慰謝料を請求された。ところが、妻は「夫には接触しないで」とも伝えてきた。そのため、女性は男性に直接、連絡できないでいる。
このような場合、相談者は、男性に支払ってもらうよう伝え、慰謝料の支払いを拒むことはできるのだろうか。安藤圭輔弁護士に聞いた。
ーー不倫の一方当事者による「慰謝料は全部自分で払う」という約束は有効ですか。
はい、当事者間では有効です。
今回のような不倫があった場合、女性(相談者)と不倫相手の男性は、不倫の被害者である男性の妻に対して「共同不法行為」に基づく損害賠償義務を負うとされています。相談者と男性とで、一つの債務を負うようなイメージです。
そして、共同不法行為者の間では、それぞれに負担の割合があるとされています。この「負担の割合」については当事者間の合意が可能ですから、「慰謝料は全部男性が払う」という合意は有効となります。
ーー相談者は、男性との約束を盾に、男性の妻からの請求を拒むことはできますか。
それはできません。
被害者である男性の妻は、当該不貞行為による慰謝料について、(1)男性のみに請求するのも、(2)相談者のみに請求するのも、(3)男性と相談者の両方へ請求するのも自由とされています。
共同不法行為者間の負担割合は、あくまでも内部問題であって、相談者と男性との間の合意は、二人限りのものとして被害者には対抗できません。
ーー相談者が慰謝料を支払った場合、男性に対して全額負担を求めることはできますか。
全額負担を求めることはできます。
自身の負担の割合を超えた部分について、共同不法行為者の一方へ請求できる権利を「求償権」といいますが、仮に負担割合がゼロであれば、100%請求することは理論上可能です。
ただし、こうしたケースですと大半が口約束でしょうし、負担割合が本当にゼロであることをどう立証するのかという問題は多分にあると思われます。仮に訴訟になった場合、裁判所が必ずしも相談者の主張を認めてくれるわけではないことには注意が必要です。
【取材協力弁護士】
安藤 圭輔(あんどう・けいすけ)弁護士
早稲田大学法科大学院卒。弁護士法人小嶋総合法律事務所所属(神奈川県弁護士会)。弁護士登録後、衆議院議員政策担当秘書を経て、現職。東京・横浜を中心に企業法務から男女問題・相続等の個人法務まで幅広く対応するほか「SUITS2」(フジテレビ系)などドラマ監修も行う。二児の父。著書に「こんなときどうする?選挙運動150問150答」(ミネルヴァ書房・共著)。
事務所URL:https://www.bengo4.com/kanagawa/a_14100/g_14104/l_263232/