2020年11月02日 16:11 弁護士ドットコム
聖路加国際病院(東京都中央区)でスピリチュアルケアを担当する男性牧師から性被害にあったとして、元患者の女性が11月1日、牧師と病院を運営する聖路加国際大学を相手取り、慰謝料など約1160万円を求め、東京地裁に提訴した。
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女性は医師や看護師とは違う立場から安心で安全に話ができる場として、スピリチュアルケアを受けていた。女性の代理人は「聖職者に対する信頼は非常に重たいが、それを逆手にとって行為に及んだ事案」と批判する。
11月2日に会見を開いた女性は「壮絶なセカンドハラスメントを受け、それをなんとか乗り越えて、今回提訴に至ることができました。裁判の中で尊厳の回復を求めていきたい」と話した。
訴状によると、女性は2016年8月ごろ、国指定の難病である多発性筋炎を発症。12月ごろに最先端の医療を受けられる聖路加国際大学に転院した。週1回の通院をする中、17年3月ごろから病院のチャプレン(施設で働く聖職者)である牧師からスピリチュアルケアを受け始めた。
2017年5月8日、牧師は病院内の一室で女性の手をとり、無理やり牧師の陰部を触らせたという。
女性はその日の夜、知人の弁護士に「牧師に、セクハラで、逃げたい。マッサージとか頼まれ、体力的にも無理」などとメッセージを送信。性暴力救援センター「SARC東京」にも電話相談した。
5月22日にも、牧師は病院内の一室で無理やり陰部を触らせ、女性の胸を触ったり舐めたりしたという。女性はその日にも「SARC東京」に相談し、2018年1月には警視庁に被害届を提出した。
女性は当時について、「聖職者である牧師が、突然なぜこのようなことをするのか理解できず、頭が真っ白になりパニック状態になった」「病院での治療が必要不可欠で、牧師の機嫌を損ねることができないという気持ちがあり、声を上げることはできなかった」と振り返っている。被害後、PTSDを発症している。
女性は2018年3月に病院に相談したが、看護師から「チャプレンがそんなことをするはずがない」「患者が職員からハラスメントを受けた場合の相談窓口は設けていない」と言われたという。
牧師は2018年9月に強制わいせつ容疑で書類送検されたが、12月に嫌疑不十分で不起訴処分となった。代理人が不起訴記録を開示したところ、牧師は警察に対し「女性からマッサージを受けた。胸を触ったり舐めたりした」などと説明していることが分かったという。
代理人の山本志都弁護士は「今回は録音など証拠がそれなりにある事件だと思っている。こんな事件ですら立件されないのかという思いを強くもっている」と不起訴処分を疑問視した。
また、病院は2019年4月に第三者委員会を設置。その報告書によると、牧師は行為を否認しているという。
代理人の山本志都弁護士は「会社内ではセクハラについて一定の規律ができるようになってきたが、カスタマーについてのセクハラ被害の訴えを相談する窓口はできていない。さらに、女性は治療から排除されて二次被害にもあっている」と指摘する。
聖路加国際病院は「訴状がまだ届いておりませんので、コメントを控えさせていただきます」としている。