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アンパンマンの「人形焼」を無許可で販売、形が崩れても「著作権侵害」になるの?

2020年11月02日 10:31  弁護士ドットコム

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人気アニメ「それいけ!アンパンマン」のキャラクターをかたどった人形焼を無断販売したとして、岐阜県の露天商の男性とその妻、従業員、計4人が著作権法違反の疑いで書類送検された。


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岐阜県警によると、男性らは今年6月16日正午ごろ、美濃加茂市の路上に駐車した移動販売トラックで、アンパンマンのイラストを造形した人形焼を著作権者の許諾を得ずに販売した疑いが持たれている。



県警の取り調べに、4人は「間違いありません」と容疑を認めており、「新型コロナの影響で仕事がなくなり、人気アニメのキャラクターの人形焼なら効率よく金儲けができると思った」などと話しているそうだ。



販売日時はSNSで告知して、15個入り500円、30個入り1000円で販売。4月末から約3カ月間で約360万円を売り上げた。ほかのアニメの人形焼もあったが、その著作権者からは告訴がなかったという。



【動画】アンパンマン人形焼、無許可販売の疑い(朝日新聞社)





●形も崩れてしまうが・・・

「アニメや漫画のキャラクターをかたどった人形焼を販売する行為が著作権侵害になるかは、少し微妙です。人形焼にしてしまうと、形も崩れてしまうので、『似て非なるもの』として、複製物にあたらない場合も多いと思われるからです」



このように述べるのは、著作権に詳しい桑野雄一郎弁護士だ。たしかに人形焼にしたら、原形をとどめていないこともありそうだ。



「ただし、アンパンマンは、描線もシンプルなキャラクターですから、人形焼にしても大きく崩れることはなく、複製物にあたる可能性は高いでしょう。複製物にあたれば、人形焼を作る行為は複製権、販売する行為は譲渡権の侵害となります」(桑野弁護士)



●ほかにも侵害のポイントがある

報道によると、露天商の男性らは移動販売用トラックにアンパンマンが描かれた広告を表示していたようだ。



「この広告を自分で製作していれば、複製権の侵害となります。さらに、彼らは人形焼をアンパンマンが描かれた包装袋に入れて販売していたようです。この包装袋も自分で製作していれば、複製権の侵害となります。また、人形焼をこの包装袋に入れて販売した行為は譲渡権の侵害となります。



今回は、このように人形焼の販売だけではなく、それに伴ってさまざまな著作権侵害行為がおこなわれていたようです。岐阜県警がどの部分をとらえて立件したのかは報道からはわかりません」(桑野弁護士)



●金型が製作・流出した経緯の解明を

今回、移動販売車で菓子を製造・販売するのにも、知事や保健所の許可が必要だったが、無許可だったため、露天商の男性は、食品衛生法違反の疑いでも書類送検されている。



「偽物とも知らず、大好きなアンパンマンに惹かれて人形焼を食べた子どもたちに健康被害はなかったようで、そこは本当によかったと思います。



人形焼の製作に使った金型は、露天商だった父親から譲り受けたものだそうです。著作権者としては、今回のような事件の予防のためにも、この金型が製作されて、流出した経緯が解明されることを望んでいるのではないかと思います」(桑野弁護士)




【取材協力弁護士】
桑野 雄一郎(くわの・ゆういちろう)弁護士
高樹町法律事務所。「外国著作権法令集(46)-ロシア編―」(翻訳)、「出版・マンガビジネスの著作権(第2版)」(以上CRIC)、「私的違法ダウンロードに関する改正法案の問題点(上)/(下)」特許ニュース14934号・14935号等。
事務所名:高樹町法律事務所
事務所URL:http://www.takagicho.com