2020年F1第13戦エミリア・ロマーニャGPの予選後に開かれたFIAトップ3会見に出席したルイス・ハミルトン(メルセデス)は、不機嫌だった。
それは今年、ほとんどのレースで司会役を務めているインタビュアーから「予選直後はあまりハッピーな様子ではなかったようですが、Q3で何かありましたか?」という質問に、こう反論していたことでもわかる。
「僕がハッピーな様子に見えなかったって? それって、どういう意味? 僕は2番手だよ! 十分じゃない? 確かにQ3の2回目のアタックはひどかったけれど、全体的にはそんなに悪い予選じゃなかったよ」
ハミルトンが予選直後に不機嫌だったのは、1回目のアタックで暫定ポールポジションを取っていながら、肝心の2回目のアタックを以下のようにうまくまとめることができなかったからだ。
■セクターごとのタイム比較
ハミルトン 23.488秒---25.535秒---24.683秒
ボッタス 23.432秒--25.478秒---24.699秒
セクター3ではチームメイトのバルテリ・ボッタスを上回る速さを誇ったものの、セクター1で約0.06秒、セクター2でも約0.06秒の遅れをとったハミルトンはボッタスに逆転を許し、ポールポジションを逃してしまった。
今シーズン、ハミルトンが予選でボッタスの後塵を拝するのは4度目だが、今回、特に不機嫌そうに見えるのは、最後のアタックに失敗し逆転を許したことだけが理由ではない。このイモラ・サーキットは敬愛するアイルトン・セナが天国へ旅立った特別な場所だったからに違いない。
セナといえばポールポジション。セナにとって最後のポールポジションとなった65回目は、このイモラで獲得したものだった。
2007年にF1デビューしたハミルトンは、2006年が最後のサンマリノGPとなったため、ここでF1ドライバーとしてレースしたことがない。
しかも、今年14年ぶりにイモラでのF1が復活したのは、コロナ禍の影響で開催スケジュールが大きく変更されたため。今後F1が再びイモラでマシンを走らせる可能性は低い。2020年のエミリア・ロマーニャGPはハミルトンにとって、イモラでF1のポールポジションを取る最初で最後のチャンスだった。
その大事な予選の最終アタックでハミルトンはミスを犯してしまった。そのミスはコンマ1程度の小さなものだったが、ハミルトンにとっては「piss poor」(全然ダメな)というスラングを使うほど、大きく許しがたいミスだった。