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鈴木このみ、止まらぬ進化を自らの歌声で証明したシングル表題曲全披露のライブ「鈴木このみ Live 2020 ~Single Collection~」開催

2020年10月31日 12:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
●いきなりキラーチューン連発! “Single Collection”ならではの継続するクライマックス感
アーティスト鈴木このみのライブ「鈴木このみ Live 2020 ~Single Collection~」が10月9日、LINE CUBE SHIBUYAにて開催された。鈴木にとって久々の有観客でのワンマンライブとなったこの日のライブは、同時にオンライン配信も実行。ライブタイトル通り、メドレーなども駆使して全シングル表題曲を歌唱し、デビューからの成長がコロナ禍においても止まっていないことを自身の歌声をもって証明してくれた。

○●メドレーも織り交ぜて、大事な曲を次々披露

鈴木自身はもちろん、観客側にも久々のリアルライブというアニソンファンも多かったはず。開演前の空気は、そんなオーディエンスからの普段以上のワクワクさえ伝わってくるものだった。

そして待望の開演時間を迎えると、まずはOpening SEが流れるなかバンドメンバーが登場し、続いて鈴木が……ギターを提げて現れた! となればもちろん、幕開けを飾るのは「蒼の彼方」で決まり。すかさず青に染まった客席は、爽やかなナンバーを歌い上げる鈴木の歌声によって切り開かれた、閉塞された世界の先の青空のようにも見えた。Dメロの直前には「みんな会いたかったよー!」とシャウトして想いを届けると、そのまま続いたキラーチューン「Redo」に場内は一気に沸き立つ。

白と赤の光を灯してクラップを響かせる観客に、ライブを開催できなかった間も磨き続けた歌声をとにかく強く強く叩きつけていく。圧倒的なパワーをもちながらも、間奏ではこの場に立てる喜びからか、奥のほうの観客めがけて笑顔で「見えてるよ!」と言わんばかりに指差すなど、歌唱では楽曲の世界を表現しつつ、自身もステージを心から楽しんでいた。

また、「カオスシンドローム」では安定したボーカルワークに加えてサビ前では華麗にスピンも交えたりと、視覚面も含めてスタイリッシュに魅せ、3曲それぞれテイストの異なる人気の高いナンバーを見事に歌い分けてみせた。

曲明けのMCでは、「やっと会えたね!」と改めて喜びを爆発させつつ、ソーシャルディスタンスに沿ったレギュレーションを再確認するなかでは「この景色も新鮮だね」と、今だけの景色を噛みしめてみせる。

久々のライブに安心感と高揚感を感じつつ、「ここに来ることを選んでくれて、精一杯応援の気持ちで配信を観てくれて、本当に感謝しています。ありがとう!」と感謝を述べると、”Single Collection”のタイトル通り「本当に本当に特別なセットリストです!」と宣言し、シングル曲を次々畳み掛けていくスペシャルメドレーでライブ再開。

その幕開けを飾った「AVENGE WORLD」の冒頭で即アーティストスイッチをONにして力強く歌い上げると、「真理の鏡、剣乃ように」ではダンスも織り交ぜたり、「Absolute Soul」ではすごみのあるファルセットで成長を実感させたりと一気にオーディエンスを引き込めば、メドレー後にはなんと序盤にしてキラーチューン「This game」へ。

イントロ中、真っ白に染まった客席に向かって「私の歌手人生を一気に変えてくれた曲です。今日も真っ白な景色をありがとう!」と感謝の心を届ければ、この曲ではステージ上を幅いっぱいまで移動しながら歌唱を行ない、圧巻のボーカル力をもって大切な曲を会場の隅々まで届けていった。

そんな怒涛の序盤戦を、「誰だー、このセットリスト考えたの! ……って自分でやっておいて思いました!」と冗談も交えながら振り返る鈴木。デビュー当時、体力のなさからスタッフからワンマンライブ開催NGを告げられたという思い出も引き合いに出しつつ、「メドレーも歌いきれるようになったぞ!」とドヤ顔をみせる。

続けてアニソングランプリや初ステージの思い出を語ると、彼女のシンガーとしてのはじまりの曲「CHOIR JAIL」へ。メリハリのついたダンスも盛り込みつつ、サビラストの非常によく伸びるファルセットなど、2020年の現在まで培った力を存分に発揮して成長を見せつければ、続く「銀閃の風」ではイントロ中に2階ステージへと上がって、頭サビを仁王立ちで雄々しく歌唱。ハードなシンフォニックメタルのなかで歌声によりいっそう力強さを付加して、オーディエンスを圧倒せんとするほどのものになっていた。
○●聴かせる曲でも、勢いある曲でも、生きる力を与えてくれる歌声

歌い終わると、今度は簡単な振り付け講座を挟んで、最新シングルのカップリング曲「Live it up!」をオーディエンスと一緒に踊りながら歌唱。ディスコチューンに乗せて場内をハッピーで満たしていく。

鈴木自身もハッピーさの強いボーカルとともに激しいダンスもみせつつ、歌い出しでいきなりギターへと絡みにダッシュするなど、誰よりも楽しんでいるような姿をみせていた。

曲明けにはその「Live it up!」も含め、夏に3ヶ月連続でリリースしたシングルで作詞作曲を手掛けたことに触れ、STAY HOME期間中に考えたことや、そのなかで感じた「自分は自分でいいんだ」との結論について語ると、そういった気持ちを形にした曲「明けない夜に」からしばししっとりとした楽曲ゾーンへ。

A・Bメロでのセリフ風の部分や大サビ前の美しいスキャットでは特に音源以上に感情を色濃く込め、鈴木が胸の内に抱えていた想いを生の歌声として届けていく。

それを経たからこそ、単体で聴く以上に胸に沁みたのが次曲「舞い降りてきた雪」だ。優しく丸みをもたせた歌声を響かせていく彼女の眼前には、まずは真っ白に染まった客席が映る。さらに2番では、実際にステージ上に雪が舞い降り始めるなか、さらに情感を増した歌声で楽曲のもつ世界観を増幅させて届けきってくれた。

ここで一旦鈴木は退場して、バンドタイムがスタート。やがて「Theater of Life」のコール部分が流れ始め、熱い演奏とともに場内のボルテージを高めていくと、衣装チェンジして再登場した鈴木とともにその「Theater of Life」へと突入。後半では2階ステージ上に堂々と立って歌いゆくと、2サビ最後の「キミで」のフレーズに合わせて客席を指差して繋がりも感じさせ、力強く鋭い歌声とともに”生きている”実感を強く感じる3分半を駆け抜けていった。

「歌えばそこに君がいるから」を続けたのも、正直ズルい! 元々彼女のターニングポイントのひとつになった曲であっただろうが、今歌われるとより響いてしまう曲だ。加えて “そこに君がいる”なかで久々に歌われたこの曲を、生で受け取れるのも生で届けられるのも、どちらもたまらなく幸せなことだっただろう。

そんな感慨にも若干浸っていたところで歌われた「A Beautiful Mistake」は、爽快なサウンドに乗せて背中を押して、広い意味で”赦して”もくれる勇気の歌。そこにパワーを乗せに乗せて、その場の観客・配信の向こうのファン全てに向けて送っていく。大サビではタオルを手にすると、それを最後は笑顔で投げ上げてキャッチし、怒涛の中盤戦を締めくくった。

●“休業”への不安を感じさせない、期待しか持てないライブに
○●会場中へと染み込ませていく、ともに駆け抜け続けてくれている大事な歌

「さいっこーですね!」の言葉が彼女が感じる幸せと満足感を十二分に表していた、曲明けのMC。その後も長々と語ることはなく、「言葉はいらないでしょ! あとは全部、歌で伝えます!」と宣言してライブは終盤戦へ。「Realize」からラストスパートのスタートだ。

その「Realize」は、Bメロからサビまでの流れが特に聴きどころ。音源の時点でもゾクリとさせられたBメロでは、それ以上の”いたずらには押してこない、すごみのある歌声”でさらに聴く側の心を震わせると、サビではそれまでに溜め込んだ想いを一気に開放。落ちサビでは直前の静寂から徐々に感情が増幅していき、大サビでは一気に爆発。

その歌声の流れと演出として飛び交う火球が、最高の時間を作ってくれていたように思う。しかもその荒ぶりを、そのまま「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い」に持っていくのだから、またズルい。上がり続ける火球がアツさをさらにもたらせば、それに誘発されてか高まった鈴木も「もっとみんなに会いたいぜー!」と魂のシャウト。

極限まで熱く盛り上がって曲が終わると、一瞬の間を置いてスポットライトに照らされながらアカペラで歌い始めたのは、「DAYS of DASH」のサビ。これにはさすがに、場内もざわつく。喜びをもった、歓迎のざわめきだ。イントロ中には「私の10代を一緒に駆け抜けてくれた曲」と紹介して、改めて歌唱スタート。その大事な曲が、会場の隅々にまで届くように客席奥まで目線を配りながら届けられていく。

そしていつもであればファンの合唱が巻き起こる落ちサビは、この日はもちろん鈴木のみによる歌唱。だがその歌声は、その場にいる者全ての想いを受け止めたかのような胸に迫るもの。最後もグーッと伸びてくるロングトーンで、見事に楽曲を締めくくった。

そのまま突入した本編ラストナンバー「Beat your Heart」では、いきなり炸裂させた音玉を推進力にしたかのように、ハイスピードなナンバーに乗せて力強くボーカルを叩きつける。間奏で恒例のジャンプはこの日はNGだったが、かわりに「右手を動かせー!」と煽ってみせると、場内一体となって盛り上がりきったところで本編は終了。深々と一礼して、鈴木はステージを降りる。
○●“愛”が作り続けるであろう、鈴木このみのアニソンシンガーとしての道のり

すかさずアンコールを求めるクラップが起こると、ステージに戻った鈴木はSTAY HOME期間に『OPENREC』にて始まった自身の番組での生レコーディングコーナーで収録したコーラスを用いて、「夢の続き(オプハver)」をアコースティックにしっとりと歌唱。じんわりと暖かさを、会場いっぱいへと広げていく。

さて、ライブもいよいよラスト1曲を残すのみ。それを前に、鈴木は今の想いを「ほんっとにライブが好きだなって思った!」と述べ、「替えの効かない時間を共有できて嬉しかったです」と改めて感謝の言葉を続けて一礼。今日一番の拍手が鈴木を包むなか、彼女からファンへ、12月から喉の手術に伴う休業期間を設けることが告げられる。

実は4年前から声帯結節を患っていたこと、毎日「明日だけもってくれたら」と思いながらの日々で、今日のステージも不安があったこと――彼女が抱えていた想いが、赤裸々に明かされる。だが手術を決断したのは後ろ向きな理由ではなく、今年に入って「10周年で武道館ワンマンをやりたい」と語る機会が増えたことに伴う心境の変化によるもの。

長く歌い続けるための前向きな決断を報告した彼女をさらに大きな拍手が包むと、「絶対死ぬまで歌ってやるんだ!」と決意を言葉にし、深々と一礼してからこの日のラストナンバー「Love is MY RAIL -running start-」を歌い出す。

青一色の客席を前にしながら、彼女は歌える幸せを素直に形に表すかのように、1サビまで笑顔で歌いきる。間奏では少々目の前の光景を噛みしめるような表情ものぞかせつつ、やはり2サビラストのロングトーンをはじめ、彼女の歌声は非常に伸びやかで力強い。

これで本調子でないという事実も、二重に驚きを与えてくる。そして落ちサビでは客席が、ウルトラオレンジによって夕焼け空に。誰もがたまらなく感慨深さを感じるであろう光景を前にしても、鈴木の歌声は崩れない。涙はなく、しっかりと歌声を届けきった。

最後に「絶対今よりもいい自分になって帰ってきたいと思うので、みんなも元気に過ごしていてください!」と宣言し、バンドメンバーとともに長くて深い一礼。「帰り難いけど……また会おうぜー!」の言葉を残し、鈴木は大事な大事な一夜を締めくくったのだった。

改めて「これで本調子でない」という事実に驚かされる、満足度の高いライブだった。だがそれは決して、”コロナ禍の有観客ライブ”といったレアさに起因する感覚ではない。シングル表題曲を全曲披露し、そのどれにおいてもパワーとテクニックを兼ね備えたボーカルワークの光る、ひとつのライブとして非常に濃密だったがゆえの満足度の高さである。

前述した通り、鈴木このみは12月から来年1月の” ANIMAX MUSIX 2021 ONLINE”まで休業期間に入る。喉の問題をクリアして万全の状態で帰ってきたあとの彼女が、アニソンシンガーとしてどんなレールを走り、”10周年での武道館ワンマン”へと繋げていってくれるのか――”休業”という言葉自体のもつネガティブなイメージなど吹き飛ばす、むしろ未来への期待が高めてくれた、そんなベストライブだった。

○●鈴木このみ Live 2020 ~Single Collection~

【SET LIST】
M01. 蒼の彼方
M02. Redo
M03. カオスシンドローム
M04. Single Collection スペシャルメドレー
  (AVENGE WORLD ~ 真理の鏡、剣乃ように ~世界は疵を抱きしめる ~ Blow out ~ Absolute Soul)
M05. This game
M06. CHOIR JAIL
M07. 銀閃の風
M08. Live it up!
M09. 明けない夜に
M10. 舞い降りてきた雪
M11. Theater of Life
M12. 歌えばそこに君がいるから
M13. A Beautiful Mistake
M14. Realize
M15. 私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い
M16. DAYS of DASH
M17. Beat your Heart
-ENCORE-
EN1. 夢の続き(オプハver)
EN2. Love is MY RAIL -running start-
○■鈴木このみ Live 2020 ~Single Collection~ Live Blu-ray発売情報

発売日:2021年3月17日
価格6,800円(税抜)
内容:2020年10月9日にLINE CUBE SHIBUYAにて開催された、鈴木このみ歴代シングル曲をもとに構成された初のシングルコレクションライブ本編の模様をノーカットで収録。さらにリハーサルやバックステージの模様を収めた特典映像も。(須永兼次)