2020年10月30日 13:11 弁護士ドットコム
東京都などの映画館の運営や映画配給を手がける「アップリンク」元従業員ら5人が、代表からパワハラを受けたとして今年6月、損害賠償を求めて提訴していた件で、原告とアップリンク側の間で和解が成立した。双方が10月30日に発表した。
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和解には、代表の浅井隆氏からの謝罪や、賠償金の支払い、そして第三者委員会を設置することなどの合意内容が含まれている。浅井氏は「これまでの私の対応によって傷つけたことを深く謝罪いたします」との声明を発表した。
元従業員らは、アップリンクの代表・浅井氏らから暴力的な発言などの、日常的なパワハラがおこなわれていたとして、1人あたり100万~165万円の損害賠償を求めて、東京地裁に裁判を起こしていた(6月16日付)
10月30日になって、原告側代理人、アップリンク双方から、和解が成立したことが発表された。
合意内容は、8項目にわたり、まとめると、以下の事柄となる。
・原告らは、訴えを取り下げる。
・被告らは、原告らに対して、ハラスメント行為により、精神的苦痛を与え、尊厳を傷つけたことに関し、心から謝罪し、賠償金を支払う(金額は非公表)。
・被告らは、スタッフと3カ月に一度の協議の場をもうける。
・被告らは、2021年中に、浅井氏が保有するアップリンク社の株式のうち一部を社外の者に譲渡する。さらに、取締役会を設置し、取締役のうち1名は社外の者とする。
・被告らは、2020年11月に、取締役会から独立した第三者委員会を設置し、ハラスメントなどコンプライアンスに関する調査したうえで、取締役会に提言をする。
原告代理人の馬奈木厳太郎弁護士は文書で次のようにコメントした。
「自らが属する足元の人権問題について見て見ぬふりをするようであれば、映画界の将来は明るいものとは言えない。さらに、声をあげた人たちが、声をあげたことによってかえって誹謗中傷を受けるなど、二次的な被害を受けるようなことがあってはならない」
「アップリンクの件は、決してアップリンクだけの問題ではない。今回、原告らが勇気をもって声をあげたことが、被害を受けながら声をあげられない人々を勇気づけるものとなることを願っている」
アップリンクはサイトに浅井代表による「和解協議に関するご報告」を掲載した。
この中で「あらためてこの場でも、今回提訴した元従業員の方々、そして、そのほかの元従業員のみなさん、現在勤務している従業員のみなさんに対して、これまでの私の対応によって傷つけたことを深く謝罪いたします」とした。
また、(1)外部の専門家による相談体制、(2)通報制度・窓口の設置、(3)第三者委員会の設置、(4)社内体制の改革・スタッフとの定期的な協議 (5)アンガーマネージメントについてのセミナー、カウンセリングへの参加、などの対策をとることを明らかにした。