レース後会見でのホンダの田辺豊治テクニカルディレクターは、通常ならまずパワーユニット(PU)についての総括を述べ、ドライバーについても成績順にコメントする。ところが今回の第12戦ポルトガルGPは、「あくまでシロウトの見解ですが」と断りつつも、最初からタイヤについて語り始めた。それだけアルガルベでのレースは、タイヤの使い方が明暗を分けたということなのだろうか。
さらに4人のホンダドライバーについても、3位表彰台のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)の前に、5位入賞を果たしたピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)を称賛した。初日フリー走行でのPUトラブルで迷惑をかけたにもかかわらず、素晴らしい結果で返してくれた。そのことへの感謝を、こういう形で表したということだろう。
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──まずはレースの総括からお願いします。
田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):今週末は走り始めから、「グリップがない」とドライバーからずっと言われてきました。セッションを重ねるにつれて改善するかと思っていたのですが、どうもそうでもない。そのためタイヤ選択や温度管理、走り方、マシンセットアップなど、非常に難しい週末だったと思います。そこをうまく詰めることができたチーム、ドライバーが強かった。あくまでその分野のシロウトの意見ですが、ミディアムがベストだったかと思います。
そのなかでガスリーが初日トラブルに見舞われたにもかかわらず好調を維持し、5位入賞を果たした。徹夜で修復作業にあたったスタッフに、好結果で応えてくれました。一方フェルスタッペンは3位表彰台。今回もメルセデスの牙城を崩すことはできませんでしたが、彼らふたりはレッドブル、アルファタウリそれぞれのマシンポテンシャルを最大限引き出して、結果を出してくれたと思います。
(アレクサンダー)アルボン、(ダニール)クビアトは、序盤に順位を落とし、その後もグリップ不足を訴えてペースを上げることができませんでした。4台完走はできたものの、4台入賞はならなかった。結果を出すために、何が足りなかったのか。次戦イモラはかなり寒そうですし、雨模様という話も出ていいます。どんな状況にも対応できるよう、車体、パワーユニットともに準備を進めたいと思います。
──もしメルセデスと同じタイヤ戦略だったら、もう少し互角に近い戦いができていたのでしょうか?
田辺TD:そうですね。摩耗と劣化の状況を見ると、結果的にミディアムがベストタイヤだった。最初からミディアムを履いたメルセデスが強かったですし、もしミディアムでスタートしていたらどうなったか、見たかったですね。
──予選でのタイム差は今までになく迫っていましたし、そこは次戦に期待ですね。
田辺TD:確かにそうですが、ただ予選の際、相手はミディアムでこちらはソフトでした。確かに両コンパウンドのタイム差はそれほど大きくなかったですが、本当に縮まったのか。そこはわからないですね。
──レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表も、「ミディアムが正解だった」と言っていました。その意味でレッドブルはレース戦略を失敗したと思いますが、パワーユニット側は十分に性能発揮できた?
田辺TD:難しい路面コンディションで、思うように踏めない状況も多かった。それに対する調整がパワーユニット(PU)側は忙しかったですが、フリー走行の走りでベースはできていた。それで予選、レースに向けても、対応できたと思います。