2020年10月23日 17:11 弁護士ドットコム
夫婦別姓の婚姻届が受理されず、法律婚ができないのは違憲だとして、東京都在住の事実婚の夫婦ら6人が、国を相手に損害賠償を求めた第二次夫婦別姓訴訟で、東京高裁(岩井伸晃裁判長)は10月23日、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。
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この裁判は、東京地裁立川支部で、原告側が夫婦同姓を義務付けた民法750条は、同姓を希望する者と別姓を希望する者を差別していると訴えていたもの。
別姓で結婚できないため、法律婚夫婦にのみ与えられている法的権利や利益などを享受することができないとして、法の下に平等を定める憲法14条1項の「信条」による差別があるなどと主張していた。これに対して、国側は請求の棄却を求め、全面的に争っていた。
この日の判決をもって、第二次夫婦別姓訴訟は高裁でおこなわれていた3つの裁判がすべて終わり、原告らはいずれも最高裁に上告する方針。
この日、東京高裁の法廷には、原告をはじめ多くの支援者らが駆けつけた。しかし、原告弁護団が求めていたにもかかわらず、判決の言い渡しで判決理由は述べられず、そっけないものだった。傍聴人からは「理由くらい言ってほしい」とがっかりした声が聞かれた。
東京高裁は一審判決を支持した。「結婚によって姓を改める人にとって、アイデンティティの喪失感を抱いたり、個人の社会的な信用、評価などを維持することが困難になったりするなど、不利益を受ける場合があることは否定できない」としながらも、旧姓の通称使用が社会的に広まっており、「不利益は緩和されている」と指摘。原告の訴えを退けた。
判決後、原告5人と弁護団は東京・霞が関の司法記者クラブで会見。原告の1人で、事実婚をしている都内在住の山崎精一さんは次のように語った。
「夫婦で38年前に住み始めたとき、私は夫婦同姓は女性差別だと思っていたので、連れ合いに自分の姓を変えてもいいと言いました。連れ合いは、私は姓を変えたくないし、あなたにもそういう思いをしてほしくないと言ってくれたので、お互いの個性を認め合い、対等な関係として事実婚を続けてきました。
2015年の最高裁判決では、違憲判決が出るのではないかと期待して傍聴に行きましたが、残念な結果でショックを受けました。人に任せていたらだめだ、別姓で生きる意味を訴えていかないかぎりだめだと思い、今回の原告として加わりました。
今、選択的夫婦別姓を求める声が広まっていますし、自民党でも検討が始まるそうです。ここには、6人の原告しかいませんが、ほかにも多くの人が選択的夫婦別姓を求めています。最高裁ではもっと良い判決を希望します」
夫婦別姓をめぐっては、法務省が1991年から法制審議会民法部会において、5年にわたり審議。1996年には、選択的夫婦別氏制度の導入を提言する答申をおこなった。
しかし、国会で法制化が進まず、選択的夫婦別姓を求める人たちが第一次夫婦別姓訴訟を提訴。2015年12月に最高裁が夫婦同姓を義務付けた規定は「合憲」であるという大法廷判断が示した。
その後、今回の第二次夫婦別姓訴訟が東京地裁と立川支部、広島地裁でそれぞれ提訴された。いずれも地裁では原告側の訴えは棄却される結果となっている。
弁護団の寺原真希子弁護士は「裁判所は、少数の人権を守るところ。最高裁では、司法の役割を果たし、意見の多寡に関わらずに、憲法違反を判断していただきたいと思います」と話した。