2020年10月23日 10:21 弁護士ドットコム
誰だって、間違えることはある。それは司法権を担う裁判官であっても例外ではない。
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10月14日に起きた異例の判決言い直しが話題になっている。報道によれば、覚せい剤取締法違反の罪に問われた男性の控訴審判決で、大阪高裁の裁判長が男性に対し、刑期から差し引かれる「未決勾留日数」を誤って100日分多く言い渡していた。
朝日新聞(10月21日)によると、判決が言い渡された直後に検察官が間違いの可能性を指摘。裁判長は閉廷を宣言する前に判決を撤回し、21日に改めて開いた判決公判で正確な日数を言い渡したという。
このように、裁判官が判決を言い間違えるという事態は過去にも起きている。
2016年6月には、大分地裁の裁判長が詐欺罪に問われた被告人に対し、誤って短い服役期間を言い渡していたことが報じられた(朝日新聞2016年6月4日)。
今回と同じように、被告人が服役中で未決勾留日数を算入できないにも関わらず、刑に含めてしまっていたという。一時休廷後に言い直されたようだ。
また、2017年6月には、大阪高裁で裁判長が「控訴を棄却する」という主文を言い間違え、「原判決を破棄する」と述べる場面がみられたという(毎日新聞2017年6月28日)。覚せい剤取締法違反の罪に問われた男性の控訴審判決だった。
なお、このときの裁判長は、逆転無罪を連発することで知られている福崎伸一郎裁判官(現弁護士)だった。両隣の裁判官から指摘を受け、すぐに言い直したという。
ちなみに、言い直しが認められるのは閉廷前のみであり、閉廷後に判決を言い直すことはできない。
閉廷後に判決の間違いがわかったら、どうなるのか。
2011年10月、名古屋地裁豊橋支部でそんな事例が実際にあった。裁判官が商標法違反に問われた被告人の男性に対して有罪判決(懲役2年、執行猶予3年、罰金100万円)を言い渡す際に、労役場への留置期間を言い忘れたまま閉廷したとされる(共同通信2012年2月23日など)。
労役場とは、罰金や科料を納付できない場合に作業をさせる場所のことだ。罰金刑の言渡しをする場合には、労役場への留置期間を定めて言い渡さなければならないという規定(刑法18条4項)がある。
このときは判決の言い渡し後に検察側がミスに気づき、控訴したという。
裁判官のうっかり事件は他にもある。
検察官が法廷にいないことに気づかないまま裁判官が判決を言い渡し、危うくそのまま閉廷しそうになった、という珍事態が起きたのは2010年、奈良地裁でのことだ(朝日新聞2010年4月29日など)。
それは2010年4月、奈良地裁でおこなわれた売春防止法違反事件の判決公判で起きた。裁判官は、判決をすべて言い渡した後に検察官がいないことに気づいた。
書記官があわてて検察官に連絡し、検察官の到着を待って判決の言い渡しをやり直したという。報道によると、検察官はほかの業務をしており、「失念していた」とのことだ。
また、大阪地裁で殺人未遂罪などに問われた被告人の裁判員裁判で、開廷予定時間になっても裁判長があらわれなかったという報道もある(毎日新聞2009年12月9日)。
開廷時間をすこし過ぎた後に裁判長から「寝過ごしたので遅れる」と連絡があり、開廷が約35分遅れたという。
裁判官に対して、完璧に近い「聖者」のようなイメージを持つ人もいるかもしれない。しかし、彼らもひとりの人間だ。
【その他の裁判官の事件簿】
<裁判官が判決の一部を「言い忘れ」てしまった・・・「正しい判決」をもらい直すには?>
(https://www.bengo4.com/c_1018/n_3093/)
<「裁判官が「刑期」を間違えて「違法判決」 こんな凡ミスはよくあることなのか?> (https://www.bengo4.com/c_1018/n_640/)