2020年10月21日 10:42 弁護士ドットコム
競泳の瀬戸大也選手の不倫問題を受け、妻で、元飛び込み選手の優佳さんのインタビュー記事が現代ビジネス(10月19日)に掲載され、話題となっている。
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記事によると、馬淵さんは不倫の事実を知らされた当時、「あまりにショックが大きすぎて、何を言われても心に響かなかった」と振り返った。
一方で、離婚については「しっかり夫婦で向き合って、それから判断しても遅くはない」とし、「事の顛末を見極めてからでも遅くはない」と瀬戸選手の今後を見届ける覚悟を決めている。
ネットでは「強くてかっこよくて素敵」「懐が深く、立派な方」と馬淵さんの思いに共感する人や決断を応援する声があふれている。
パートナーの不倫を乗り越え、夫婦関係を「再構築」する場合、どのような点に気をつけるべきだろうか。加藤寛崇弁護士に聞いた。
ーー1度は許した不倫でも、数年後に離婚を決意するケースもみられます。このような場合における注意点として、どのようなことがありますか。
「まず、時効の問題があります。
不倫の慰謝料請求は、不倫の事実を知ってから3年経つと時効になり、慰謝料請求はできません。不倫相手に請求する場合は、不倫の事実およびその相手を知ってから3年で時効になります。
他方で、不倫が原因となって離婚した場合には、『不倫で離婚に至ったことの慰謝料(離婚慰謝料)』の請求は、離婚して3年経つまでは時効になりません。ただし、この離婚慰謝料請求は配偶者に対してしか請求できません。
したがって、不倫相手への慰謝料請求は、不倫および不倫相手を知ってから3年経つとできなくなります」
ーーでは、不倫の事実およびその相手を知ってから3年以上が経過した後に離婚を決意したとします。その場合は不倫相手への慰謝料請求は諦めるとして、配偶者に離婚慰謝料を請求すればよいということでしょうか。
「その場合でも気をつけなければならない点として、因果関係の問題があります。
つまり、不倫が原因となって離婚になったのか、それともそれ以外の要因で離婚になったのか、という問題です。後者だと離婚慰謝料は請求できなくなります。
この因果関係が裁判で争われることもしばしばあります」
ーー裁判で争われた場合、因果関係が認められないことはあるのでしょうか。
「一般には、不倫前から夫婦仲が悪く不倫が最後の決定打になったような場合とか、あるいは、不倫をきっかけに別居して何年も経ってから離婚になったようなケースでも、因果関係は認められています。
全体としては、不倫が発覚してから離婚に至った場合は、広く因果関係が認められている傾向にあるとはいえます。
1度は修復を試みて同居を続けて数年経った後に、やはり関係が修復できずに離婚に至ったようなケースでも因果関係は認められています。
その一例として、東京高裁平成29年4月27日判決があります。この裁判例は、不倫発覚後、不倫された配偶者は関係を修復しようと考えて約4年間は同居を続けていたものの、その後別居に至って離婚になったという事実関係で、不倫と離婚の因果関係を認めています(この事案は最高裁判決で結論が変更されましたが、全く別個の理由によるものです)。
こうした裁判例の傾向からみても、数年経ったからといって慰謝料請求できなくなるとはいえません。ただし、たとえば何十年も経ってから離婚になった場合とまでなってくると、一概にはいえません」
ーーこのほか、パートナーの不倫を乗り越え、夫婦関係の再構築を目指す場合において気をつけるべきことはありますか。
「離婚するかどうかは個人の人生です。
そのため、個人の価値観で考えていただくしかないと思いますし、もし許せないと思うのであれば無理に再構築を目指さなくていいと思います。
その上でいうと、不倫された側は、離婚しようと思えば相手が拒否しても裁判で離婚が認められる一方、不倫した側は、長期間の別居などの条件がそろわないと相手が拒否すれば離婚できない立場にあります。
なので、不倫された側は、離婚しようと思えばいつでも離婚できるので、ひとまず離婚しないというなら、それはそれで1つの選択肢ではないでしょうか」
【取材協力弁護士】
加藤 寛崇(かとう・ひろたか)弁護士
東大法学部卒。労働事件、家事事件など、多様な事件を扱う。労働事件は、労働事件専門の判例雑誌に掲載された裁判例も複数扱っている。
事務所名:三重合同法律事務所
事務所URL:http://miegodo.com/