●新曲「誰かが夜を描いたとして」をリリース
“誰かの生きづらさを熱量に変える”廃墟系ポップユニットとして、2017年8月より活動を開始した、Vocal:koshi、Music Producer:eba、GeneralManager:谷原亮からなる3人組「cadode(カドデ)」が、2020年10月14日に新曲「誰かが夜を描いたとして」をデジタルリリースした。
作家としてLiSA、OLDCODEX、斉藤壮馬をはじめとするアニソンを中心に手掛けるebaが作曲、ボーカルのkoshiが作詞を担当する本作は、“虚無感と情動”というcadodeが掲げるテーマに寄り添いながらも、cadodeの新たな一面を提示する一曲に仕上がっている。
そして、ミュージックビデオ/ジャケットはピクセルアーティスト・ぺこたぺちかとのコラボレーションを実現。
そんな「誰かが夜を描いたとして」のリリースを前に、cadodeのメンバーが語ったメッセージを紹介しよう。
○●「誰かが夜を描いたとして」を10/14にリリース
――新曲のリリースタイミングはどのように決めているのですか?
koshi 今年は年間10曲くらい作ろうといった年間計画を立てて、それにあわせている感じです。とはいえ、それがずれることもあるので、実際に曲を作りつつ、できたらまた次を作る、みたいなテンポになっています。
eba 計画を立ててはいますが、自分が作りたいと思ったらすぐに作ってしまうこともあるので、基本的には自由な感じです。
――結局、ebaさんが曲を作ったら動くみたいな感じですね
eba そうですね。僕が作らないと始まらないので(笑)。
――ちなみに今回の曲は?
谷原 今回はちゃんとスケジュールを決めて作ったパターンです。
koshi だいたいこれくらいの時期に出そうというのは決まっていて、今回は秋ソングというわけではないのですが、学期が始まるのが9月くらいのタイミングがいいなと思っていました。最終的には10月になってしまいましたが。
――曲のコンセプトはどのような感じでしょうか?
eba cadodeの音楽は、ジャンルが定まっていないというか、出すたびに曲調が変わっていると思うのですが、その意味で、これまでにやっていなかった方向性、テンポが速くて、メロディが上下して、ギターがけっこう歪んでいる。そういった方向で作った曲です。
koshi いつも、次の曲を読まれたくないという気持ちがあって、今回も遊びを入れつつ、これまでにやったことのなかった曲を作りました。今までの曲と比べると、少し大きめの方向転換のように見えるかもしれません。
eba 突拍子もない感じに思われるかもしれませんが、意外とそうでもなく、いつもどおりのcadodeだよねって感じになっていると思っています。
――決して方向転換ではないわけですね
eba 方向転換ではないです。
koshi いつもより冒険しているように見えるかもしれませんけどね。
eba ただただ冒険です。歩いていたら面白そうな裏路地があったから入ってみた。そんな感じです。そのあたりの感覚はほかのアーティストの方とは違うかもしれませんが。
●cadodeの音楽は“虚無感と情動”
――cadodeの音楽性は固定したくはないという感じでしょうか?
koshi 音楽性自体はちゃんとあるんですよ。“虚無感と情動”というのを掲げていて、それがどうしてもにじみ出ているのがcadodeの音楽なんです。そして、そのこととジャンルを定めることは直接的には繋がらないと思っています。
――“虚無感と情動”がにじみ出ていれば、演歌であろうとロックであろうと関係ないということですね
eba 何でもいいんです。あくまでも、それを表現するためのひとつの手法でしかないわけで、僕たちが表現する“虚無感と情動”はぶれないと思います。
――“虚無感と情動”のもと、今回の楽曲はどのように制作されたのでしょうか?
koshi 僕たちは、いわゆるジャンルを毎回変えて曲を作っているのですが、それは、どうせ流行りのようなものには素直に従えないからというのもあります。たとえば「完全体」という曲は、オシャレ感、こう言うとちょっと安い感じになりますが、そういう曲調を狙って作ったんですけど、結果的には、そのアンチテーゼみたいな感じになっていたり。
eba 完全体に関してはこうすればオシャレになるだろう、みたいなもののカウンターパンチ的な感じになりました。オシャレっぽく見せながら、ギャルゲー的な女の子の声を散りばめてみたり(笑)。
koshi 何かしら反抗しちゃうんですよ、結局。だから今回も、現在の流行りみたいなものを意識しつつも、結果として、その反抗が出るのではないかと思って作りました。
eba そういう意味では、沸々と湧き上がる反抗心みたいなものは、常にあるのかもしれません。
koshi とにかくひねくれているんです(笑)。なので、そういった二面性が、意識している以上に表に出ているような気がします。一応、表向きはポップなものを作りたいといつも考えているんですけど、ポップなものを作ろうとすればするほど、どこかでそれを批判するような感情が出てきて、必ずそれが織り込まれてしまう。勝手にそういう仕組みになっている。それがcadodeらしさだと思っています。
――基本的にはポップ路線なんですね
eba そこは最初から変わっていないところです。
koshi 一応、“廃墟系ポップ”という名前をつけています。
――“廃墟系”というのは、koshiさんとebaさんが廃墟好きというだけの話ではないですよね?
koshi どちらかというと内面的な廃墟を意味しています。廃墟って、美しくも虚しいというか、時空間が不自然なんです。人間の営みは更新されていないけれど、世界の営みは進んでいる。時間自体は止まっているんだけれど、実際にはそうではない。
eba そして、それが未来の姿に見えたりもする。
koshi 結局、僕たちは過去と未来を廃墟に対して見出しているのですが、そこから“虚無感と情動”という言葉に辿り着いた。そういったことを一言で表す言葉として“廃墟系ポップ”と名乗ることになりました。
――廃墟好きで知り合うというのもすごいですね
koshi なかなかないですよね(笑)。
eba 廃墟には異世界感があるんですよ。二人ともオタクということもあって、ここじゃないどこかに行きたいという気持ちが常にあるのだと思います。そして、廃墟に行くと、ここじゃないどこかに行けたような感覚になる。音楽を作っているときも同じような感覚があるので、cadodeの音楽を聴いてもらえば、自分たちが廃墟で感じているような感覚を、みんなにも共有してもらえるのではないかと思っています。廃墟っていうと、怖いとか暗いとか、心霊スポットのようなイメージがあると思いますが、本当にきれいで美しいんですよ。なので、そういうイメージも更新できるのではないかと。
koshi 結構、一面しか見ない人が多くて、レッテル貼りのようなものが横行している世の中ですが、大体のものは多面的で、そんな簡単に片付けられるものではないじゃないですか。それをちゃんとみんなに認識していきたいし、どうしようもないと思うものにも少しずつ反抗して向き合いたいんです。それで初めて受け入れられる自分たちがあると思います。
●良いものは何でも好き
――基本路線をポップとしたのは?
koshi あまり偏った音楽だと、そもそも聴いてもらえない可能性がある。だから、僕たちは音楽としては耳馴染みがよく、でもその中で、伝えられることがあればいいなと思っています。僕たちが単純に耳馴染みのよいポップが好き、というのもありますが(笑)。
eba そもそもポップでキャッチなものが好きなんですよ(笑)。
――プロフィールなどを見ていると、激しめのロックが好きなような印象ですが……
谷原 もともとはそっちだったんですけどね
eba 正確にいうとどちらも好きです。本当に尖ったやつも好きだし、全然ポップじゃないものも好きなんだけど、やはりポップも好きなんです。まあ、だからこそプロでやれているんだと思います。
――たしかに、それしかできないと他人に曲なんか提供できないですよね
eba そうなんですよ。どんな曲であっても、嫌々やっているのではなく、本当に好きでやっている。そういう意味では、好きになれる才能があったのだと思います。結局のところ、良いものは何でも好きというのが、cadodeの音楽にも繋がっている。
koshi 僕も元々そういうタイプですね。好きな音楽のジャンルは本当にバラバラです。良いものは良い、そういう普遍性が音楽にはあると思っています。だからこそ逆に、cadodeの音楽を何かのジャンルに落とし込むのが難しくて、結果として“廃墟系ポップ”と名乗ることになりました。僕たち自身、ジャンルがなくて特に困ることはないのですが、他人が他人に紹介するときに困ると思って、あえて名乗り出した感じです。
――今でこそユニットという言い方で通じますが、cadodeさん自身も何と言っていいのか難しいですよね
eba たしかに(笑)。
koshi 別にバンドと言われてもそれはそれでいいと思うし、僕たちの曲が、ポップではなくてロックだと言われても受け入れるしかない。そもそもジャンルというものを決めて作っているわけではないので、何と呼ばれても……という気がしています。音楽を音楽として受け取ってもらえればそれでいい。音楽であることだけは確かなので。
eba 実際、曲を作るときにジャンルを気にすることはないですから。もちろん、頼まれて作るときは別ですが、cadodeに関しては、特に決めては作らないです。
――ちなみにebaさんが曲を作るときは、まず何から決めていくのですか?
eba まずはテンポ感。あとは雰囲気ですね。“湿っぽい”とか“秋っぽい”とか“灰色”とかそういう抽象的なもの。あと、“祭り”とか“田園風景”といった絵的なものから発想して作ることが多いです。そういった絵や風景など、目から入る情報を音に変換するのが自分にとっては一番やりやすいですね。
koshi そして、僕は僕で勝手に曲から映像を描いてます。最終的に歌詞と声に落とし込まないといけないので、映像を描きつつ、メモ的にワードを書き出していって、歌詞を作っています。
●ピクセルアーティストとのコラボ
――koshiさんはcadodeで初めて詞を書いたんですよね?
koshi そうですね。最初は試しに書いてみそって感じで。
eba みそって(笑)。パーンと投げてみたら、意外とやれたんですよ。
――個人的には韻の踏み方などが巧みだなって思いました
koshi ありがとうございます。
eba 韻って気にして書いているの?
koshi 実際のところ、韻という概念はあまりなくて、“気持ち良さ”ですね。気持ち良いか、気持ち良くないかという感覚でしか書いてないのですが、結果としてそれが韻になっていたりします。
――今回、特に押し出したかったワードなどはありますか?
koshi やっぱりサビの部分ですね。あと、語りのところに本音を入れている感じです。ここ3曲くらいで語りを入れるようになったんですけど。
eba 語り部分で良いこと言うよねと思ってた(笑)。
koshi どうしようもないことが世の中にはあるんだけど、それはそれとして生きていかなければいけない。後ろ向きだけど、そういう気持ちがどの曲にもあるんですよ。みんな後悔することはあるけれど、後悔自体はどうしようもない。
eba でも、それを気づくことによって楽になることもあるよね。
koshi そうそう。結局、メッセージとしては、生きていればどうにかなる。良くも悪くも、僕たちはcadodeなので、どうしようもないことを受け止めつつも、前向きじゃない言葉で背中を押してあげたい。それがこの曲にも、ひねくれた感じではありますが出ているのではないかと思っています。
――ジャケットなどで、今回はピクセルアーティストのぺこたぺちかさんとのコラボが行われていますが、元々、ピクセルアーティストさんとコラボをするというのは、どういう経緯で始まったのですが?
谷原 以前、「オドラニャ」でご一緒した「APO+」さんというピクセルアーティストにお願いしたとき、すごく感触が良かったんですよ。前作「ライムライト」でも「mae」さんという方とご一緒しましたし、直近のシングルもピクセルアーティストの方にお声掛けさせていただいた感じです。
eba cadodeの場合、ピクセルアートは音楽的にも一番相性が良いんですよ。次元や距離感があっているのではないかと思います。
――コラボによって音楽に影響が出るということはありますか?
koshi フィジカルへの執着心がかなり無くなった感じがします。cadodeの見せ方は、僕の身体じゃなくてもいいし、実写じゃなくてもいい。その中で、ピクセルの世界が一番しっくり来ると思いました。これまで音感や歌詞についても、フィジカルにいる人間だという認識が強かったのですが、そこからは離れたかなと。もっとふわっと自分は浮いていてもいいのではないかと思いました。今回の曲は、「オドラニャ」が出たくらいのタイミングで書いたものなので、まだちょっと早かったのですが、今後の作品には、その影響が少しずつ出てくるかもしれません。
――一応、今回のコラボは三部作というお話でしたが、今後は?
eba どうなるかはわからないですね。
koshi 僕としてはフィット感があるので、自分を表に出すくらいならピクセルのほうがいいなと思っちゃっててます。とはいえ、曲や時々で表現したい画が異なるので、変幻自在でありたいなとも思います。
eba 手応えややってみての楽しさがあるので、今後はそういう流れになっていくような気もしますが、どうなるかはわからないです。ただ、曖昧でふわふわした感じが僕たちにはあっていると思いますし、時代にもあっている気がします。
●“誰かの生きづらさを熱量に変える”
――cadodeさんには“虚無感と情動”のほかに、“誰かの生きづらさを熱量に変える”というコンセプトもありますが、この生きづらさというのは?
koshi 生きづらさは一種類ではないと思いますが、そのひとつが、「居場所がどこにもない感覚」なのではないかと思います。社会不適合という言葉でまとめられがちですけど、僕はその言葉がすごく嫌いで。人間はどうあがいても人間としてそこに存在するので、むしろそこに居場所を用意できない社会の不完全さ、未熟さを感じるんですよ。
eba この3人とも一回就職して辞めている人の集まりなんですけど、生きづらさを抱えながら生きてきて、音楽にたどり着いたみたいなところがあるので、そういう意味では、そういう人たちに、今度は僕らが居場所を提供できるのではないかと。
――とはいえ、音楽によって生きづらさから開放されたわけではないですよね
koshi もちろんです。その意味では、cadodeというプロジェクトそのものがその途上であって、別に満たされたからどうにかなるわけでもありませんが、このプロジェクトで居場所を見つけたいという感じですね。僕自身、生き方は見つけたけれど、生きづらさそのものが無くなったとは思っていません。
eba ただ、その生きづらさを熱量に変換することが、僕たちは上手くできていると思っています。
――その熱量というのがcadodeさんにとっては音楽になるわけですね
koshi そうですね。自分たちを表現ができているので。
eba そういう意味では、エネルギー源は無限にある。
――生きづらさをそのままぶつけるのではなく、熱量に変換するわけですね
koshi 社会を目の前で批判したところで、その人たちに届くかという話にもなりますし、僕たちはあくまでもポップに音楽を届けたい。一回でも受け取ってもらえないと咀嚼できないので、ある程度、みんなが受け入れやすいものを作りつつ、ゆるやかに社会が変わっていくための、何らかのきっかけになれればいいなと思っています。
eba みんなの“門出”になるような音楽を作っていきたいんです(笑)。
koshi これを自分で言って笑っちゃうのがダメなんですけど(笑)。
eba これをまっすぐ言えないところがひねくれている(笑)。
――今後の活動、展開について考えていることはありますか?
eba とにかくこだわらずにやっていきたい。アーティストだから絶対にライブをしないといけないとか、そんなことを考えずにもっと自由に。一つに決めてしまわず、音楽性と同じように活動もいろいろと変化していけたらいいなと思っています。
koshi かつて、ブランディングみたいなことにこだわりかけたことがあったんですよ。ジャンルが定まっていないのであれば、せめて見え方だけでもある程度きちっとしないといけないと思っていたのですが、どちらかというと今は、やりたいことはもっと変幻自在でいいと思っていますし、逆にそちらを徹底したほうがいいような気もしています。
――その上でcadodeらしさを出すという感じでしょうか?
eba それは勝手に出てくると思います。
koshi 僕たちがやっている以上、絶対にそうなります。それだけは確信があって。どんなジャンルの音楽をやろうが、そこだけはぶれないという自信があるので、突っ走っていける。今までいろいろなジャンルの曲を作ってきたことによって、それが確信になった感じです。
――何ならジャンルはcadodeでもいいくらいですね
koshi むしろcadodeというジャンルで認識されたいです。
eba 野望とは言いませんが、cadodeというジャンルができたらいいなと本当に思っています。
――それでは最後にメッセージをお願いします
koshi 僕は楽曲と歌に想いを込めきってしまうタイプなので、まずは曲を聴いていただけたらとても嬉しいです。。生きづらい人も、そうでない人も、気軽に聴いてもらえる曲になっていると思います。夜中に停滞感を感じることがある人にとって、新たな門出になれればいいと思っています。よろしくお願いします。
――ありがとうございました
cadodeの新曲「誰かが夜を描いたとして」は各配信サイトにて配信中。各詳細は公式サイトにて。(竹間葵)