2020年10月15日 18:02 弁護士ドットコム
競泳の瀬戸大也選手の不倫問題を受け、日本水泳連盟は10月13日、臨時常務理事会で「年内の活動停止」などの処分を下した。処分は日本水連が定める「競技者資格規則」に基づくものだ。
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処分の理由は、(1)スポーツマンシップに反したこと、(2)日本水連や関係団体の名誉を著しく傷つけたこととされている。処分内容には、年内の活動停止のほか、スポーツ振興基金助成金の2020年下半期の推薦停止や教育プログラムなどの受講も含まれている。
瀬戸選手は同日、処分の決定を受け、「私の無責任な行動で深く傷つけてしまった家族からの信頼を回復し、家族からも皆様からもスイマーとして再び認めていただけるよう、一からやり直す覚悟で真摯に水泳に向き合っていきたいと思います。本当に申し訳ありませんでした」と謝罪のコメントを発表した。
瀬戸選手が処分について不服を申し立てず確定すれば、12月に開催される日本選手権などへの出場はできないことになる。日本水連の担当者は10月15日、取材に対し、「(瀬戸選手へ)これから処分通知を出す」と話した。
日本水連の競技者に対する処分には、重い順に、「登録の永久停止」「5年以下の期間を定めた登録停止」「文書による戒告」「口頭による注意」がある(競技者資格規則9条)。今回の処分の重さは、永久停止に次ぐものだ。
瀬戸選手がすでに得ている東京五輪代表内定については、2019年の世界選手権で金メダルを獲得した「選手の権利」だとして、処分の対象とはならず維持されているが、五輪本番に向けて年内は大会へ出場することなどは困難な状況といえる。
SNSでは、不倫という私的な行為を理由に「年内の活動停止」としたことに対しては「重すぎるのではないか」という反応も多数みられる。今回の処分に、法的な問題はないのだろうか。
スポーツ法務に詳しい萱野唯弁護士は「不当な処分」だと話す。
「瀬戸選手について報道された問題は、あくまで私的なものです。
妻に対して民事上の責任を負うことはあれ、このような事案での活動停止処分はスポーツ界や一般社会の懲戒処分実務に照らしても合理的な範囲を超えた過度に重い不当な処分であると考えています。
もし瀬戸選手が処分を不服として争った場合、処分が覆る可能性は十分にあると思われます」
ただし、実際には争われる可能性は低いのではないかという。
「オリンピックを控えたこの時期に処分を争うことは現実問題として容易ではなく、事実上、処分を受け入れざるを得ない状況ではないでしょうか。
人間誰しも失敗はあります。このような反論しにくい立場に置かれた選手が不当な処分を受けないよう、今回のケースを前例としないことはもちろん、たとえば事前に対象行為を明示し行為類型に応じた処分内容を取り決めておく、事情聴取の際に代理人の立会いを認めるなど、適正な手続が保障される制度の構築が必要です」
【取材協力弁護士】
萱野 唯(かやの・ゆい)弁護士
ヴァスコ・ダ・ガマ法律会計事務所パートナー。スポーツ法務やエンターテインメント法務を中心に取り扱う。日本スポーツ仲裁機構スポーツ仲裁人、調停人及び助言者候補者。日本スポーツ法学会会員。「スポーツビジネスの法務」(ビジネス法務2016年3月号、中央経済社)などを執筆。
事務所名:ヴァスコ・ダ・ガマ法律会計事務所
事務所URL:http://www.vascodagama.jp/