「あの人みたいになりたい」と思うような、憧れる先輩像がある人は幸せである。そんなに素晴らしい人物の元で働けているわけだから。
同じ職場に、優秀な先輩社員がいるかどうかって、労働者の日々のモチベーションにも大きく影響する。良い部分を盗んで、学んで、成長するきっかけにもなってくれるし、そんな人が多い会社はきっと、素晴らしいんだろう。
でも、そこを会社が強制すると面倒なことになるようだ。(文:松本ミゾレ)
「陰キャでもコミュ力高い先輩の喋り方をコピーさせられる」
先日、2ちゃんねるに「【悲報】ワイの会社、ガチのマジで気持ち悪すぎる………」というスレッドが立っていた。この内容が気持ちが悪すぎて普通に引いてしまった。
スレ主曰く、彼の勤め先では新入社員が、デキる社員のモノマネを強制されるという。このモノマネとは、単純に仕事に関する姿勢を真似るというだけの範疇ではない。以外にも仕草や喋り方など、とにかく「それ仕事に関係ないじゃん」って要素まで、がっつり真似るように要求されているのだ。
「陰キャでもコミュ力高い先輩の喋り方をコピーさせられる ほんと恐ろしい」
「社員の個性とか人格を全否定してるのが許せないねん」
要は会社の上層部は、デキる社員のモノマネを徹底させることで、手っ取り早く人材が優秀に成長すると考えているというのである。意味が分からない。
しかも、これを強要されているのはどうも新人だけではないらしい。スレ主の他の書き込みを見てみると「先輩たちに個性がない」とある。つまり彼の先輩たちもまた、デキる社員のモノマネを強いられ、劣化コピー化している様子なのだ。カルト宗教のようだ。
気になるこの職場、営業の仕事なのだそうで、とにかく優秀でコミュ力も高い人材のモノマネを延々させて、量産型デキる社員をガンガン生み出そうという方針らしい。そこに個性を重んじるという気風は一切ない。ある意味清々しい。モノマネから学べるところもあるとは思うが、形だけ真似ても仕方ないだろう。
社長が完全プロデュース! つまらない動画を社員に作成させるレンタルビデオ店
それにしても、社員の個性を潰す方向性で舵取りする会社ってのは今の時代、かなり新鮮に見える。ただ、昔……平成の中頃までは、そんな職場も結構あったと思う。
僕が10代の終わりから20代前半の頃。都会に疲弊して地元に引っ込んでからしばらく、場末のレンタルビデオ屋でアルバイトをすることになった。このビデオ屋は県内にいくつか店を展開していたチェーン型の有限会社だった。
ここの社長が変な人で、社員に毎月面白い恰好(全然面白くはない)をさせてお客さん向けの新作お勧め動画を収録させ、店内で流すという性癖の持ち主であった。お客さんは普通にそんなつまらん動画目もくれないし、「不要な努力だなぁ」とか思っていた。
そして、この動画での社員の喋り方も個性重視とかせず、全部社長プロデュース。肝心の社長が面白くないわ、そんな社長のつまらない台本通りに茶番をやらされるわで、社員がみんな哀れな操り人形に思えたものである。
こうした、社員の個性を基本的に無視する職場というのは、でも最近は減っていると思うので、今回取り上げた、デキる営業マンのモノマネ社員工場については、かなり驚いてしまった。