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LiSA、ドリカム、和楽器バンド……独自の世界観を築き上げてきたアーティストたち 新譜5作からピックアップ

2020年10月13日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

LiSA『LEO-NiNE』(通常盤)

 TVアニメ『鬼滅の刃』の主題歌として大ヒットを記録した「紅蓮華」を含むLiSAのニューアルバム『LEO-NiNE』、「LOVE LOVE LOVE」、「未来予想図Ⅱ」などのヒット曲をリミックスしたDREAMS COME TRUEの企画アルバム『DOSCO prime』。際立った表現力とセンス、音楽的なスキルによって、独自の世界観を築き上げてきたアーティストの新作をピックアップします!


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⚫︎LiSA『LEO-NiNE』
 大ヒット作『鬼滅の刃』アニメ版主題歌にして、LiSAの存在をさらに広い層のリスナーに知らしめた「紅蓮華」を含む約3年ぶりのオリジナルアルバム『LEO-NiNE』。「紅蓮華」のほか、「unlasting」 (アニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』エンディングテーマ)、「ADAMAS」(アニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』オープニング主題歌)などのシングル曲を収めた本作は、ヘビィロック、メロコア、J-POP、アニメソングを結び付けながら、唯一無二の音楽世界を作り上げてきた彼女の最新モードが強く刻み込まれている。軸になっているのは、超ヘビィなギターと重厚感のサウンドとともに“この世界を遊びつくせ!”というメッセージを掲げる「play the world! feat.PABLO」。自らが置かれた場所から逃げることなく、ここでとことん楽しんでやる!という覚悟と矜持は、アーティスト・LiSAの本質と言えるだろう。


⚫︎DREAMS COME TRUE『DOSCO prime』
 10月17日から開催されるDREAMS COME TRUE初のオンラインイベント『DREAMS COME TRUE WINTER FANTASIA 2020 – DOSCO prime ニコ生 PARTY !!! -』の一環として制作された“ディスコ仕様変換済”のベスト的アルバム『DOSCO prime』。「うれしい!たのしい!大好き」、「決戦は金曜日」、「大阪LOVER」といった代表曲をメンバー自身が再構築した本作は、“ダンスミュージックとしてのドリカム”という側面を際立たせている。60~80年代のファンク、ソウル、ディスコなどをルーツに持つ二人にとってこのベストは、ルーツへの回帰であり、2020年のポップミュージックの在り方にアジャストした作品でもあるのだと思う。大胆なリミックスを施しながら、吉田美和の歌の魅力はまったく損なわれていないバランス感も見事。個人的ベストは2ステップ系のリズムとドープな低音サウンドが身体を揺らす「朝がまた来る」。


⚫︎コブクロ『灯ル祈リ』
 善と悪、正義と不正義。分断される世界のなかで、それでも人々は希望を求めて生き続けるーー。コブクロのシングル曲「灯ル祈リ」は、この社会で懸命にがんばっている人たちへの真摯なメッセージが込められた楽曲だ。福士蒼汰主演ドラマ『DIVER-特殊潜入班-』(関西テレビ)主題歌として制作されたこの曲は、細やかな鍵盤の音から始まり、激しいギターサウンドからドラマティックなメロディへと結びつく。それぞれの感情がぶつかり合い、大きく引き裂かれている現代。そんな現状から目を逸らすことなく、〈生きる 意味を叫べ ひび割れ切った時代の影に〉という言葉を響かせる「灯ル祈ル」は、これまでのコブクロの楽曲のなかでも、際立ってシリアスな雰囲気を漂わせている。真摯な思いを真っ直ぐに届ける小渕健太郎、黒田俊介の歌にも強く心を揺さぶられる。


⚫︎10-FEET『シエラのように』
 別れを受け入れ、切なさ、悲しさ、愛しさを抱えたまま、僕は進んでいく。10-FEETのニューシングル『シエラのように』の表題曲は、大切な人と会うことができず、一変してしまった世界のなかで、“こんな歌が聴きたかった!”と快哉を叫びたくなるナンバー。清々しいまでにまっすぐなバンドサウンド、必ず口ずさみたくなる親しみやすいメロディとともに彼らは、〈変わり始めた 僕やあなたは さよならさえも受け止めて〉と歌う。ロックバンドにとって最も過酷な時期に、新たな地平を切り開くような楽曲を生み出せる10-FEETは、やはり特別な存在だ。メロコア直系のビートとロマンティシズムに溢れた歌が共鳴し合う「彗星」、過ぎ去ってしまった風景、そこで出会った人々に思いを馳せる1分ちょっとのアッパーチューン「あなたは今どこで誰ですか?」も、現在の彼らのモードが強く反映されている。


⚫︎和楽器バンド『TOKYO SINGING』
 和楽器バンドがニューアルバム『TOKYO SINGING』をリリース。先行配信曲「Singin’ for….」「月下美人」、そしてEVANESSENCEのエイミー・リーとのコラボレーションが実現した「Sakura Rising with Amy Lee of EVANESCENCE」などを収録したニューアルバム『TOKYO SINGING』が到着。ライブ感に溢れる攻撃的なバンドサウンドを軸にした「reload dead」、“渋谷が戦地になる”というSF的な世界を描いたアッパーチューン「ゲルニカ」といったエッジの効いたロックチューンからは、初期の和楽器バンドの匂いがたっぷりと感じられる。〈誰かが足を、一歩を踏み出さなきゃ 世界中がきっと暗いままだ〉という歌詞が心に残る「Calling」も本作のポイント。8月中旬、他のアーティストに先がけてアリーナライブを開催した和楽器バンドは、これまで築き上げてきた地位にこだわることなく、さらなる未来に突き進んでいるようだ。(森朋之)