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WRCイタリア:ヤリスWRCで初参戦の勝田貴元、2度のクラッシュも「この経験がさらに強くしてくれる」

2020年10月13日 11:51  AUTOSPORT web

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勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC) 2020年WRC第6戦イタリア
日本人WRCレギュラードライバーを目指しTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジに参加中の勝田貴元は、10月9~11日にイタリア・サルディニア島で行われたWRC世界ラリー選手権第6戦に参戦。コドライバーのダニエル・バリットとともに『トヨタ・ヤリスWRC』でラリーに臨んだものの、最終日にクラッシュを喫し完走を逃している。

 勝田のラリー・イタリア・サルディニア参戦は今回で4度目。しかし、今季のイベントは新型コロナウイルスの影響で、当初の6月から10月に延期されての開催となったほか、R5カーによるWRC2カテゴリーへの参戦となった過去3回とは異なり、WRカーの『ヤリスWRC』での初出場とあって、勝田にとっては新たなチャレンジとなった。

 非常に滑りやすい砂がコースを覆うサルディニアのグラベル(未舗装路)ステージは道幅が狭く、立ち木や岩が道のすぐ近くに迫るため、僅かなミスも許されない精度の高いドライビングが求められる。
 
 9月に行われたシーズン第4戦エストニアではWRCトップドライバーに匹敵するスピードを発揮した勝田だったが、サルディニア島のトリッキーなステージはまだ学ぶべきことが多く、競技初日・デイ1の序盤は苦戦を強いられた。

 その後徐々にスピードを上げていくも、SS4の低速コーナーでコースオフ。マシンをコースに戻すことができずその時点でデイリタイアとなった。勝田は当時の状況を次のようにふり返った。

「SS4は狭くトリッキーな区間があり、左コーナーで少しラインを外して滑りやすいグラベルに乗ってしまい、続くきつい右コーナーでクルマを止めることができず、ワイドに膨らみ側溝に落ちてしまいました」

 クルマを修復し、再出走を果たしたデイ2では1番手スタートを担当。道の表面を覆うルーズグラベルを“掃除”しながらの難しい走行を経験した。
 
 その過程で確かな成長曲線を描いたものの、同日午後のステージではブレーキトラブルが発生してしまう。勝田はこれを自力で修理をしながら残りのステージ最後まで走り抜き、ラリー2日目を完走している。

 迎えた最終日は、2本目のSS14で大クラッシュを喫した。幸い勝田とバリットは無事だったものの、横転したクルマは大きなダメージを受けており、リタイアに。今大会で勝田は多くの困難な状況に直面し、良い結果を残すことはできなかった。しかし、改善すべき課題が明確になるなど意義のある1戦となっている。

■勝田「ペースノートや集中力など、改善しなければならないことがたくさんある」

「土曜日は出走順1番でステージを走るのがとても難しく、このようなラリーでは初めての経験でした。路面は非常に滑りやすく、フォローするラインもなく大変でしたが、今後に向けて良い勉強の機会になりました」と語った勝田。

「日曜日はSS14の非常に道幅の狭いセクションで、少しワイドになり外側のバンクに当たってしまいました。そして、続く左コーナーのイン側に岩か何かがあり、それにぶつかりクルマが転がってしまいました」

「今回は本当に辛いラリーでしたが、この経験が自分をさらに強くしてくれるはずです。クルマはとても速く、他のドライバーのレベルも非常に高いので、ペースノートや集中力など、改善しなければならないことはたくさんあり、全力で改善に努めたいと思います」

 TGRラリーチャレンジプログラムのインストラクターを務めるヤルッコ・ミエッティネンは「今回のラリー・サルディニアは、WRCがいかに多様性のある競技であるかを示した」とコメント。

「タカ(勝田)はスウェーデンで高いスピードを発揮し、エストニアでは素晴らしいドライビングを見せてくれた。どちらのイベントも良い路面でのハイスピードなラリーだ」
 
「タカにとって、サルディニアは難しいラリーになるだろうと予想し、純粋なスピードに関しては期待値をやや下げていた。今回の目標は低速で荒れた道で、どうヤリスWRCを走らせるか学ぶことだったが、多くのステージを走破したことでその目標はある程度達成された」

「2度のアクシデントを経て、低速で道幅が狭いグラベルロードではまだまだ学ぶべきことが多く、また最終ステージのフィニッシュラインまで、設定した目標に従って走ることの重要性を改めて確認できたことは収穫だったと思う」

 勝田が挑む次のWRCイベントは当初、ベルギーでのWRC第7戦が予定されていたが、先週金曜日に第8戦モンツァの開催がアナウンスされたことから参戦計画の変更が検討されている。