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敷地に入らないで! 侵入防止に「剣山」設置… ケガさせたら、こちらの責任?

2020年10月13日 10:41  弁護士ドットコム

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自宅の敷地内に勝手に入ってくる人をなんとかしたいーー。ネット上には、このような投稿がみられる。敷地内に入ってくるのは、子どもから大人までさまざまだ。中には、敷地内にゴミを捨てられたり、犬を連れて入ってこられたりするケースもあるようだ。


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弁護士ドットコムにも、自宅の敷地内に入ってくる人によるイタズラに悩んでいるという相談が寄せられている。相談者は侵入者を防ぐため、地面に剣山のようなものを置くことを検討しているという。



しかし、もし侵入者が剣山を踏み、怪我をした場合、相談者がなんらかの責任を問われる可能性はあるのだろうか。坂口靖弁護士に聞いた。



●民事上・刑事上の責任を問われる可能性は?

ーー侵入者が設置した剣山で怪我をした場合、民事上または刑事上の責任を問われる可能性はあるのでしょうか。



責任を問われる可能性は否定できません。刑事上としては、傷害罪等(過失致傷など)が成立する可能性があります。民事上としても、「不法行為」として損害賠償責任を負う可能性があります。



この点、「剣山」ではなく「忍び返し」(塀やフェンスなどの上に先端のとがった鉄棒などを並べたもの。防犯グッズとしても使用されている)を設置した場合、一般的にはいわゆる正当防衛が成立し、違法性が阻却され、各責任を負わないと評価されています。





ーーでは、剣山を設置した場合も「忍び返し」同様に正当防衛が成立する可能性はあるのでしょうか。



「剣山」は「忍び返し」と異なり、小さく目立たないものだと思われます。また、設置場所にも差異があります。「忍び返し」は塀の上など、比較的目立ち、通常、人が通行しないような場所に設置されますが、「剣山」は、人が通行することが想定され、かつ、注意が行き届きにくい「地面」に設置されます。



このような差異に着目すると、「剣山」を地面に設置する行為は、「忍び返し」を設置する場合と比較して、人が負傷する危険性が相当程度に高い危険な行為であるものと評価できます。



したがって、「剣山」を「地面」に置くという行為は、正当防衛が成立するための「防衛のためやむ得ずした行為」とは評価しがたいものとされる可能性があり、正当防衛が成立しない可能性があるものと考えられます。



よって、地面に剣山を置く行為は、民事上、刑事上の責任を負う可能性が否定できないと言わざるを得ないかと思います。



また、仮に正当防衛が成立したとしても、民事上、刑事上のトラブル(裁判等)に巻き込まれるということだけでも、大変な労力を必要とするものです。そのようなトラブルを回避するという点でも、地面に剣山を置くという侵入者対策はお勧めできないと思います。   



●勝手に敷地内に入ってくる人たち…どう対策する?

ーー相談者のように、他人が勝手に自宅の敷地内に入ってくることに悩んでいる人もいます。どのような対策をおこなうことが望ましいでしょうか。



先ほど述べたとおり、「危険性が高すぎる」と評価される行為は、正当防衛の成立が否定されてしまう可能性があると思われます。そのため、その点を考慮した対策をとるのがよろしいのではないかと考えます。



穏当な方法としては、防犯カメラを設置し、防犯カメラが設置されていることをわかりやすく掲示し、侵入者らに警告をする、などです。   今回のケースのような実力行使的な方法としては、忍び返しや有刺鉄線など大きく認識しやすいものを設置し、加えてその設置についてわかりやすく掲示したり、注意喚起したりするなどの方法もあると思います。



また、そもそも敷地とその他を分ける設備がないのであれば、柵を設ける、壁を設置するなどの対策も考えられるでしょう。




【取材協力弁護士】
坂口 靖(さかぐち・やすし)弁護士
大学を卒業後、東京FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」等のラジオ番組制作業務に従事。その後、28歳の時に突如弁護士を志し、全くの初学者から3年の期間を経て旧司法試験に合格。弁護士となった後、1年目から年間100件を超える刑事事件の弁護を担当。以後弁護士としての数多くの刑事事件に携わり、現在に至る。
事務所名:佐野総合法律事務所
事務所URL:http://www.sanosogo.com/