「リモートワークになって、管理職がマネジメントに悩んでいます」
最近寄せられる企業人事からのご相談の声です。みなさんの現状はいかがでしょうか?
今回は、私が提供している管理職向けのトレーニングプログラム、「リモートワーク下の上司力」の中から、ポストコロナ時代における大切な2つのことを綴ってまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
管理職と一般職でテレワークの受け止め方に違い
「あしたのチーム」が4月に実施したテレワークと人事評価に関する調査では「テレワークをしてみて感じたことは?」という内容で、管理職と一般職の声を比較しています。その結果は以下のようなものです。
管理職回答トップ5
1位「通勤時間がない分、読書や勉強などスキルアップの時間が持てる」(37.8%)
2位「人とのコミュニケーションがなくさみしい」(30.6%)
3位「仕事態度に緊張感がなくなった」(25.5%)
4位「家事・育児・介護と仕事との両立がしやすい」(24.5%)
5位「頑張りが評価されにくい」(24.5%)
一般職回答トップ5
1位「人間関係のストレスがなく気楽」(36.7%)
2位「仕事態度に緊張感がなくなった」(28.0%)
3位「通勤時間がない分、読書や勉強などスキルアップの時間が持てる」(25.3%)
4位「人とのコミュニケーションがなくさみしい」(20.0%)
5位「家事・育児・介護と仕事との両立がしやすい」(15.3%)
この結果から注目していただきたいことは、リアルコミュニケーションを求める上司職と
緊張感のある職場コミュニケーションから解放されて楽と感じる部下層とのギャップです。このような結果から皆さんは、以下のどちらのスタンスを取るでしょうか?
A:しっかり管理するためにリモートワーク下でも緊張感のある体制をつくらなくては!
B:自分の管理が行き届かなくても、皆が成果を上げられる体制をつくらなくては!
ダイバーシティマネジメントを実践していこう
私がこれからの時代のスタンスとしてお勧めしているのはBとなります。Aのスタンスの背景には、マクレガーの示したX理論とY理論からすると、X理論が存在しています。X理論とは「人間は生来怠け者で、強制されたり命令されなければ仕事をしない」といったものです。
このスタンスでマネジメントをしていくと、常時監視をしていく体制をつくっていく必要がありますが、リモートワーク下では難しいのが現状です。また、高度経済成長時代であれば、このマネジメントは機能しましたが、人口減少/経済成長鈍化と価値観の多様化が進んでいる現代では機能しません。
コロナ以前より言われていたことではありますが、これからのマネジメントはY理論をベースにしていく必要があります。Y理論とは「人間は生まれながらに嫌いということはなく、条件次第で責任を受け入れ、自ら進んで責任を取ろうとする」といったものです。
これからのマネジメントはこのY理論をベースに、多様化する部下一人ひとりを活かす行動をしていく必要があります。一人ひとりに対するオーダーメイドマネジメント/内発的動機づけのマネジメントと言われる“ダイバーシティマネジメント”を実践できる力が求められているのです。
リモートワーク下でダイバーシティマネジメントを実践する際のカギは“信頼”と“自律”にあります。“信頼”を高めるためには、部下の業績と人間性の両方に関心を持ちながら、部下を知り、信頼し、仕事を任せて、更なる信頼を高めていく好循環をつくる必要があります。
また、部下の“自律”を高めるには、コーチング的な関わりにより、自ら考え、自ら動き、結果を出す、そして振り返るといった流れを作る必要があります。この2つの関りをリモートワーク下においても続けていく必要があるのです。
以上、今回はポストコロナ時代におけるマネジメントの2つのカギをお知らせさせていただきました。ダイバーシティマネジメントの必要性はコロナ以前より言われ続けています。コロナによって、その習得が急がれているだけです。しっかりと時代の流れを掴んでいきましょう。
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。