コロナ禍でテレワークを導入した企業も多く、実施率は統計データなどにより変動はあるものの20~40%台で推移しています。
ITベンチャー企業や人材系企業の人から転職相談を受けることが多いのですが、最近はテレワークに関する悩みも聞くようになりました。具体的には、テレワークによって露呈した上司・部下の仕事ぶりです。
なぜテレワークで顕著になってしまったのでしょうか。実際に寄せられた3つのケースを元に、その理由や対処法を考えて行きます。(文:キャリアコンサルタント 坂元俊介)
テレワークがきっかけで転職を考える人も
Q1.「今まで仕事が出来ると思っていたメンバーが、テレワークになった途端に仕事の成果が全然上がらなくなりました」
A.仕事の成果を愛嬌や愛想でごまかしていた
このケースの場合、部下が愛想や愛嬌で仕事を乗り切ってきたタイプで、わからないことや出来ないことがあれば同僚や上司を巻き込んで手伝ってもらいながら仕事を進めていたといいます。
この上司は“周囲を巻き込む姿勢”や“自分にフィードバックを求めに来る姿勢”を仕事が出来ると判断していたのでした。しかしテレワークだと、与えられた仕事に躓いても、頻繁に画面共有などを使いながら質問したり、フィードバックを貰ったりすることは中々に難しく、その環境下でどうしていいかわからず、仕事が進まず成果も出ない状態になっていたのでした。
テレワークに移行し、純粋に「成果」で仕事が図られることが増えています。中には、今までの評価が激変した人も多いのではないでしょうか。
このような人に必要なのは「今までのやり方とは違う方法を考え、実行する」ということです。例えば、「テレワークでも本当に周囲を巻き込む方法はないのか」「上司のFBをスムーズに貰う方法はないのか」と考えてみましょう。
思いついたものを実行し、上手くいかなければ修正というPDCAを回す。そうすることで、コロナ禍のテレワークでも今まで持っていた強みを生かすことが出来るようになるでしょう。
また、こういった人はメンバーの中で、飲み会の盛り上げ役などを担っており、「社内の帰属意識」や「心理的安全性の担保」という役割を担っているケースがあります。この役割は、テレワーク下においても非常に重要になります(後述のQ3のケースにも関連します)。
是非、自分の役割を意識しながら、自分自身の新しい働き方を見つけていって貰えればと思います。
Q2.「今までもわかりにくいことがあったのですが、上司の指示が本当にわからなくなって困っています」
A.端的な指示だしが出来ない
このケースでは、元々上司が、資料や身振り手振り、その場の状況などを含め“非言語コミュニケーション”を使いながら指示を出していたタイプでした。そのため部下が「こういう意味ですよね?」と推測をして指示を受け取っていたとのことでした。
オフラインだと接触頻度も多く、齟齬が生じていてもすぐに修正がきく状態です。しかし、テレワークでこういった指示を出されると“何を指示されているのか全く分からない”状態に陥ります。
この場合、上司は「何を指示するのか」「なぜその指示をその人にするのか」「何のための指示か」など、指示そのものを構造的に理解し、部下に振る必要があります。それを心がけ、チャットや電話でも端的な指示出しが出来るようになっていただきたいものですが、部下は前述の点を聞いてみてはどうでしょう。
Q3.「文字だけで指示だけ出され、報告を上げても何のフィードバックもないなどが続き、心身ともに疲弊し、転職を考えています」
A.オフラインで保たれていた帰属意識を担保出来ていない
このケースでは、社員の帰属意識や心理的安全性をテレワーク下において担保出来ていないということが考えられます。
今までは、“同じ空間に一緒にいる”という状態だけで、帰属意識や心理的安全性を担保出来ていました。一方、テレワークだと、コミュニケーションの質そのものを変化させなければこの2つの担保が出来ません。
テレワークでも上手く行っている会社の事例を聞くと、「対面時よりも雑談を多く取り入れる」「チャットで冗談や絵文字などを使い、場を和ませる工夫をする」というケースをよく聞きました。
一緒の空間にいないからこそ、ウェットな部分を意識的創り出さないと社員が離れていく事態を招いてしまうでしょう。Q1に当てはまる人は、この点で活躍するという手もあります。
コロナ禍において“新しい働き方”が求められ、それに伴い“新しい価値の出し方”も求められるようになりました。今までのやり方に固執することなく、自分の役割を考え、新しい考え方や方法を取り入れてください。テレワークに順応していくことがコロナ禍のビジネスパーソンに求められます。
【坂元 俊介】株式会社STORY CAREER代表取締役/キャリアコンサルタント・採用人事コンサルタント
同志社大学経済学部卒。新卒でリクルートHRMK(現リクルートジョブズ)入社。中途・新卒領域における求人広告媒体の営業に従事、その後、営業として3つの新メディアの立ち上げを行う。リーダーや大手担当を経験。Webベンチャーでのオフィス長経験を経て、30歳になるタイミングで家業の和菓子屋を継ぐとともに、企業の採用コンサルティング会社を立ち上げ、採用人事支援なども行う。リクルートの同期が立ち上げた株式会社STORYの法人化の際に、取締役に就任。大学生・第二新卒層のキャリア支援をおこなうSTORY CAREER事業部の責任者を兼任。2020年4月、STORY CAREER事業部の拡大に、同事業部を分社化、株式会社STORY CAREERの代表取締役に就任。毎年数百名の大学生・社会人のキャリア支援を行っている。