2020年10月12日 10:01 弁護士ドットコム
「過干渉すぎる親と縁を切りたい」「実家を出たい。毒親から解放されたい」。ネット上にはこのような声が上がる。しかし、成人して家を出たいと思っていても、親が原因で出ていくことができずに悩んでいる人もいる。
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弁護士ドットコムにも、実家を出ることを決意したものの、その後の親の行動が不安という相談が寄せられている。
相談者はこれまで親に「勝手に家を出たら殺す」「探偵を雇ってでも居場所を突き止める」などと言われ、恐怖で家を出られなかったという。家を出た後は、もう2度と親とは関わりたくないと思っているそうだ。
親子関係を法的に切ることはできない。しかし、なんらかの法的手段を取り、毒親を遠ざけることはできるのだろうか。澤井康生弁護士に聞いた。
ーー毒親を遠ざけるため、ストーカー規制法に基づく接近禁止命令やDV防止法に基づく面談強要禁止などを出してもらうというのはどうでしょうか
「ストーカー規制法は恋愛感情を充足する目的が必要なので親子間には適用されません。また、DV防止法も配偶者(事実婚含む)からの暴力等を規制するものなので親子間には適用されません」
ーーほかに考えられる法的手段はありますか
「民事保全法に基づき、裁判所に『接近禁止仮処分命令の申立て』をして、接近禁止命令を出してもらうことが考えられます。これを認めてもらうためには、(1)被保全権利の存在と(2)保全の必要性が必要です。
たとえば、毒親が毎晩自宅に押しかけてきて騒音や睡眠不足などの被害を受けているケースであれば、(1)静謐な生活を営む権利や人格権が侵害されており、保全されるべき権利がある、(2)被害が毎晩発生しており、仮処分命令で今すぐ止める必要がある、といえるでしょう。
こういった事情を立証するための証拠としては、毒親の迷惑行為の様子を撮影した写真や動画、音声、第三者の証言などが挙げられます。申立ての際には、それらを証拠化して裁判所に提出することになるでしょう」
ーーいざという時のために、証拠となるようなものを準備しておくのも重要になりますね
「ほかには、当事者間では話し合いができないといった場合に家庭裁判所に『親族関係調整調停の申立て』をする方法もあります。
これは、感情的対立などで親族間が円満でなくなってしまった場合に、家庭裁判所が間に入って話し合いの仲介をしてくれる制度です。
ただし、あくまで話し合いを前提とする調停の手続きですので、話し合いが決裂した場合、調停は不調となり終了します」
ーーどうしても家を出たい場合、個人でも比較的取りやすい毒親対策などはありますか
「家を出た場合であっても、親であれば子どもの住民票や戸籍の附票を調べることができてしまうので、引っ越し先を知られてしまう恐れがあります。
そこで、管轄の市役所等に住民票や戸籍の附票の閲覧制限の申し出をすることにより、親であってもそれらを閲覧できないようにできる方法もあります」
【取材協力弁護士】
澤井 康生(さわい・やすお)弁護士
警察官僚出身。企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。現在、朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。
事務所名:秋法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/tokyo/a_13104/l_127519/