2020年10月10日 08:31 弁護士ドットコム
ここは日本のどこか。具体的な場所は明かせないが、官庁街にあり、少し外の喧騒が聞こえてくるような喫茶店だ。世の中で「Go To イート」がはじまろうとしているころ、新型コロナウイルスにかこつけた「ハラスメント」を目撃した。
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「貴様ら、うるさい! コロナが流行してるんだぞ。わかってるのか?」
小さな喫茶店に怒声が響く。官庁街ということもあり、客層は比較的落ち着いているが、普段あまり見かけない70代くらいの男性客が怒りを口にしている。きちんとした身なりをしているが、言葉遣いは荒々しい。
矛先を向けられたのは、40代くらいのアベックだ。二人はおそらく同僚で、当初は仕事に関係する小難しい話をしていたが、人間関係に話が及んだところでヒートアップ。「◯◯さんは最近、▲▲ちゃんと■■しちゃって~」「えーマジで!?」とはじめたのだ。
男性はしばらく、その騒いでいる二人を我慢していたが、とうとう堪忍袋の緒が切れてしまったようだ。
ピリピリした雰囲気の中、叱られた二人が「出ていきますよ」と言うと、男性は「ああ、貴様のような無神経な奴は出ていけ!」とすごんだ。バツが悪そうに二人が退店すると、今度は店員を呼びつけた。
「お前たちがしっかりしないから、ああいう奴らをのさばらせるんだ。だから私が代わりに注意したんだ。今度からああいう客は出て行かせろ」
困惑する店員を前にして、手がつけられない"説教モード"に入り、その要求はどんどんエスカレート。ほんの数分ではあるが、途中から「カスハラ」といってもおかしくないくらい理不尽なものになった。
言われてみると、アベックは"うるさい客"ではあったが、この店の周辺には、ちょうどいい喫茶店があまりないので、安くて便利だから少々うるさくても気にしない、という客がほとんどだった。
新型コロナに関連して、小売や外食などの労働組合が加盟する「UAゼンセン」には、ハラスメントの相談が多く寄せられており、客から「感染したら店のせいにしてやる」と言われたという内容も報告されているという。
たしかに、小さな店でおしゃべりに興じた二人のマナーは悪かったかもしれないが、だからといって怒声をあげる必要もなかったし、まして店員を叱りつける必要もなかった。ほかの客も「こんな店、二度と来ない」と思ったかもしれない。
新型コロナによる悪影響はこんなところにまでおよんでいる。
なお、今回の登場人物のうち、店員以外は、店内だったということもあり、最初から最後までマスクを着けていなかった。よどんだ空気の中で、男性のツバの飛沫がきらめくのをたしかに見た。