ホンダが2021年限りでのF1活動終了を発表したことに関して、第11戦アイフェルGPを戦うためにドイツ・ニュルブルクリンクを訪れているホンダF1のマネージングディレクターを務めている山本雅史氏に話をうかがった。後編では、角田裕毅選手の今後や、無限ホンダの噂などについて尋ねてみた。
──────────────────────
──ホンダはドライバーも育成しています。現在、FIA-F2選手権を戦い、F1を目指している角田裕毅選手にはどのように知らせたのですか。
山本雅史マネージングディレクター(以下、山本MD):青山で会見が始まった午後5時は(角田選手がいる)イギリスでは朝の9時でした。少し経ってから、角田から私にLINEで通知が入りました。おそらく、トレーニングをしていたようで、会見の様子を見ていなかったのだと思います。友人からの連絡で知り、私に確認してきたようでした。それで、私はすぐに彼に電話をしました。そして、私からは「プロのレーシングドライバーとして、レッドブルジュニアドライバーとして継続できるよう、しっかりと結果を残しつつ、努力し続けるように」と伝えました。
──ホンダのヨーロッパでの拠点があるHRD UKの施設を使用して、無限ホンダとして再スタートするという噂がありますが……。
山本MD:これはあくまで個人の意見ですが、もし無限さんにお願いするのだったら、ホンダがそのまま続けていますよ。いまのパワーユニットがそんなに簡単じゃないことは、みなさんもご存知かと思います。HRD Sakuraのバックアップがなければ開発できないし、現場での制御を含めた使い方、トップチームと勝利を目指して一緒に戦うにはそれなりの経験と知見が必要です。
ですから、無限さんへお願いするという話はまったくありませんし、現時点で決まっていることは何もありません。白紙です。もちろん、レッドブル側から相談があれば、快く受けますし、ホンダとして彼らをサポートしていこうということになっています。
──F1に関わっているスタッフは、今後ホンダが目標として掲げるカーボンニュートラル実現へ向けた部署へ配置転換されるのでしょうか?
山本MD:まだ詳細は決まっていませんが、カーボンニュートラルを将来のホンダのために加速度的に前進させるために、すでに4月から先進パワーユニット開発やエネルギー領域の強化という組織化をしたので、そういうところへ人員を配置していくと聞いています。みなさんもご存知のように、ホンダのF1活動は、様々な領域の知見、(各分野の)トップエンジニアを投入して、(研究所の)総力をあげて戦ってきたのは事実です。そういう人たちを、F1活動終了後はカーボンニュートラルを実現するために人員配置すると聞いています。
(F1活動とカーボンニュートラルを実現することは)両立できなかったのかという意見もあるかと思いますが、トップエンジニアをふたつに分けて、ともに競争力ある状況を作ることができるかを考えた場合、両立できなかったということです。
──今回の決定を山本さんはどのように受け止めていますか。
山本MD:もちろん、八郷(隆弘)社長の会見を聞いて、ホンダマンとして、寂しい悔しいという思いはありましたが、同時にこの決定はホンダが(企業として)強く生き残っていくためだということも理解しています。チェイス・キャリー(F1のCEO)さんからも「企業のトップが経営者として時には厳しい判断を下さなければならないことは必ずある。だから、今回の八郷社長の判断も私も理解している」というコメントをいただいています。
──来年に向けては?
山本MD:来年は有終の美を飾るべく、チャンピオンシップ争いをしたい。したがって、それに必要なリソースはこれまでと同様、継続させると同時に必要があれば新たに投入していきたい。しっかりとやり切る体制で臨むということに関しては、変えません。だから、もし仮にF1で仕事しているトップエンジニアを早期に異動させたいという要求があっても、F1で必要な人材であれば、来年いっぱいはF1を優先させます。
さらに今年中止になった鈴鹿での日本GPが、来年は予定通りで開催されることを信じています。そして、その鈴鹿を含めて、世界中のファンの皆さんに『ありがとう』という感謝の気持ちを込めながら、F1活動を行っていきたいと思っています。