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GoToイート開始も「一見さんお断り」? 歓迎かコロナ対策優先か…揺れる御殿場市に聞いた

2020年10月09日 11:01  弁護士ドットコム

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静岡県御殿場市がコロナ対策として「一見さんお断り」と書かれた貼り紙を市内の飲食店などに配布していると読売新聞(10月7日)が報じ、ネットで話題となっている。


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ネットでは、あたかも「Go To トラベル」や「Go To イート」の客を排除するかのような姿勢に、「(市への)かなり印象悪くなった」「こういう対応はマズいでしょ」など否定的な声が多数上がっている。



しかし、御殿場市商工振興課に取材してみると、県内外の客を一律で拒否したいわけではなく、むしろ「『Go To トラベル』や『Go To イート』も行われており、市としても(県内外から客の)来訪を歓迎している」という。



サイト上でダウンロードできたデータを10月7日には「誤解を招きかねないので停止した」。ところが、その後すぐに再開、配布も続けるなど混乱もみられる。



来訪歓迎かコロナ対策優先か、どのような方針なのだろうか。揺れる御殿場市に背景を聞いた。(編集部・若柳拓志)



●連絡先がわからない人の代表が「一見さん」

富士山の東麓に位置する御殿場市は、巨大ショッピングモールや観光地をかかえ、近隣の東京都や神奈川県からも多数の客が訪れる。その御殿場市で、「一見さんお断り」の貼り紙作成・配布を始めたのは、8月上旬のことだった。



「バーやスナックなど接待を伴う飲食店の経営者から要望があり、必要であれば使ってもらえるよう市が作成しました」(御殿場市商工振興課)



市のHP上でデータを公開し、ダウンロードして自由に使えるようにした。作成のきっかけとして、「緊急事態宣言が出されていた頃、コロナ感染拡大防止のため、各店舗で他県から来る方をお断りするという形をとっていたことがあった」という事情もあったようだ。



ところがその後、県内でもクラスターが発生。感染リスクを避けるために県外の人だけを断る根拠は薄らいだ。そのため「市として貼り紙を作成するあたっては、他県の人に限らない表現にすべきとの検討がされ、その結果『一見さん』という表現になりました」。



しかしなぜ、「一見さん」に絞ったのか。これにはコロナ禍ならではの事情がある。



「感染者が出たときに、感染経路や濃厚接触者を特定するため、方々に連絡を取る必要があります。その際、顔見知りの客であれば対応しやすいですが、店側がまったく知らない客だと連絡先すらわからないことが少なくありません」



御殿場市民であっても初めて来店する人であれば、「一見さん」に含まれるという。



過去に一度でも来店した客なら当然連絡先などがわかるというわけではないが、「感染対策として誰をお断りするのかという点では、どこかで線引きせざるを得ない」と話す。



●市の立場「貼り紙使用は店舗の判断に委ねられている」

貼り紙の作成・配布は「一見さん」に対する自治体による差別ではないかとの懸念については、「貼り紙を使うか否か、来店を断るか否かについてはあくまで店舗ごとの判断」だとし、差別とは考えていないようだ。



「コロナ禍において、店舗の経営者が感染者を出さないための対策に悩んでいる中、『店舗利用を断る』という判断をする際に必要な限りで使用していただくものと考えています」



貼り紙の使用期限などは特に定めておらず、市の担当者によれば、貼り紙を使用したり、一見さんをお断りしている店舗は今現在もあるという。



市は8月下旬から、店舗の利用促進のため、地元業界団体と協力して「安全宣言店認定制度」を実施している。貼り紙も認定制度も、コロナ禍の店舗事情を汲んだ中での施策だろう。



しかし、実態として、客を断ること、客に利用してもらうこと、そのどちらも後押ししているとあっては、たとえ店舗ごとの判断だとしても、市のスタンスとしては一貫していないように見える。



「現在は県内外からの来訪を歓迎している」ということであれば、市のスタンスをはっきりさせる意味でも、「貼り紙の役目は終えた」ことを明確にしてもいいのではないだろうか。