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GoToイート、幹事がこっそり「ポイント総取り」最大1万円も…法的問題は?

2020年10月09日 10:01  弁護士ドットコム

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新型コロナウイルス感染拡大の打撃を受けた飲食店を支援する「Go To イート」キャンペーンが始まりました。プレミアム付き食事券とネット予約によるポイント付与の2つの方法があり、感染対策をしながら外食を楽しむ人が増えそうです。


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ネット予約による方法では、グルメサイトに会員登録して対象の店を予約することで、1人につき昼の時間帯は500円分、夜の時間帯(15時から)は1000円分のポイントが付与されます。



ポイントは1回の予約で10人分(最大1万円分)までで、幹事のアカウントにまとめて付与される仕組みです。そのため、都内の会社員のAさんは「実は幹事を引き受けたことで、おいしい思いをしています」と打ち明けます。



「久しぶりに会社の同期5人で集まることになりました。店は私が予約したのですが、Go To イートの対象店にしたので、実は5000円分もポイントがもらえるんですね。今後の飲み会も幹事を引き受けたら、ポイントが結構溜まっていきそうです」



ポイントは来店日の翌月に付与されるため、その場で還元を分配しない幹事も出て来そうだ。幹事業務をするにあたって、ポイントを総取りした場合、犯罪になる可能性はあるのだろうか。半田望弁護士に聞きました。



●水増し請求とは性質が異なる

——幹事がポイントを総取りした場合、法的な問題はありますか



「Go To イート」は制度設計上、予約者(幹事)に対して還元する制度になっており、そのメリットを幹事のみが受けても法的な問題はありません。



そのため、実際の料金が安くすんだ場合とは異なり、事前に集金していたとしても「Go To イート」での還元による差額分を返還する義務はないと考えます。



また、幹事にポイントが付与されるという制度設計や、還元はあくまでもポイントでなされるもので現金とは異なり用途に制限もありますから、「Go To イート」の還元分を幹事が各参加者それぞれに還元する義務もないと考えます。



詐欺罪は、「人を欺いて財物を交付させた」場合に成立する犯罪です。



例えば、実際の金額より高い金額を請求(水増し請求)して差額をだまし取った場合には、詐欺罪になります。しかし、Go to イートについてはポイントでの還元であり、店に支払う金額については還元前の金額であることから、水増し請求とは性質が異なります。



「欺いて財物を交付させた」と言えるためには「本当のことを知っていれば財物を交付しなかった」ということが必要になりますが、「Go To イート」のシステムに照らせば、通常は還元があると知っていれば代金満額を払わなかった、とまでは言えないと考えますので、詐欺罪には当たらないと考えます。



●還元の取扱い、よく話し合いを

——民事上はどう考えられますか



GoToイートの還元があることを隠して幹事をやって、ポイントを独り占めしたとしても、前述した幹事に全額のポイントバックがされる制度である以上、幹事以外の参加者が還元を受けることは前提となっていませんので、民事上の責任も生じないと考えます。



実際に、幹事には予約や集金の手間がかかっていますので、手間賃としてポイントバックのメリットを受けても必ずしも不当であるとは思えません。ただし、幹事が恩恵を受けることについて、参加者の了解を得ておかないと、人間関係にひびが入るなど、事実上の問題はあると思います。



報道では、Gotoイートの開始によって「幹事争奪戦」が起こっているという話もあります。不公平にならないよう、幹事を輪番で担当するなどの工夫をしているという話も報じられています。



幹事の負担に応じた一定の恩恵を受けることは否定すべきではないですが、「Go To イート」の還元で参加者が不公平だと感じないよう、還元の取扱いや幹事を誰がやるかについても、参加者でよく話し合いをして決めることが望ましいでしょう。




【取材協力弁護士】
半田 望(はんだ・のぞむ)弁護士
佐賀県小城市出身。交通事故や消費者被害などの民事事件のほか、刑事弁護にも取り組む。日本弁護士連合会・接見交通権確立実行委員会の委員をつとめ、接見交通の問題に力を入れている。
事務所名:半田法律事務所
事務所URL:http://www.handa-law.jp/