大企業の財務諸表から待遇を探る「これだけもらえる優良企業」シリーズ。今回は、FA用センサーや自動制御装置(PLC)をはじめとする電気・電子部品の開発・販売を行うBtoB企業、キーエンス(大阪市)を取り上げます。
キーエンス社員の平均年収は1839万円
最新データ(2020年3月期)によると、キーエンス社員の平均年間給与は1839万2309円。2000万円を超えていた前期と比較すると270万円あまり減っていますが、高水準には変わりありません。
- 2017年3月期:1861万7851円
- 2018年3月期:2088万5270円
- 2019年3月期:2110万6666円
- 2020年3月期:1839万2309円
この額には、賞与や基準外賃金(手当など)も含まれています。企業口コミサイト「キャリコネ」によると、キーエンスの賞与は年4回支給とのこと。25歳の営業マンは、年収1260万円のうち賞与が660万円。「年収の半分が賞与」という書き込みもあります。
また、このデータはキーエンス単体のもので、連結子会社などのグループ会社は含まれていません。この水準はオムロン(828.9万円)やTDK(778.6万円)、村田製作所(724.4万円)を大きく上回ります。
キーエンスの2020年3月期決算は減収減益。売上高は前期比6.0%減、営業利益は同12.7%減となっており、これが賞与額にも影響を与えていると考えられます。
新型コロナ禍の打撃をもろに受けた21年3月期第1四半期も、売上高は前年同期比18.3%減、営業利益は21.9%減まで落ち込みました。営業利益率は50%を割り込んでいるものの、47.0%と高水準を維持しています。
キーエンス社員の平均年齢は35.6歳
次に従業員数と平均年齢、平均勤続年数(ともに単体)を見てみましょう。
キーエンス社員の平均年齢は35.6歳。ざっくり言うと、30代半ばで2000万円近くもらう人が少なくないということでしょう。40歳超えが多いメーカーと比べると、若さが目立ちます。
- 2017年3月期:2,121人(36.1歳・12.4年)
- 2018年3月期:2,253人(35.9歳・12.2年)
- 2019年3月期:2,388人(35.8歳・12.1人)
- 2020年3月期:2,511人(35.6歳・12.0人)
ここ数期で従業員数が増えており、平均年齢がやや下がっていることから、若手の中途入社があった可能性があります。
このデータもキーエンス単体のもので、グループ会社は含まれていません。なお、グループ全体(連結)の従業員数は8,419人で、3期前から1.5倍近くに増えています。
連結従業員に占めるキーエンス(単体)の割合は29.8%。高給を誇る会社はこの割合が低いことが多いのですが、富士通の25.2%と比べても意外な高さです。
これは、キーエンスが工場を持たない「ファブレス経営」を行っていることと関係があります。生産工程を持つメーカーは連結従業員数が多くなりますが、協力会社に生産を委託するキーエンスは従業員数が少なくて済むわけです。
経営課題は「海外市場の開拓」
最後に、キーエンスの今後の見通しについてまとめてみましょう。
企業サイトには "キーエンスが世に送り出す新商品のじつに7割が「世界初」「業界初」" と書かれています。顧客のニーズを満たす独自性の高い製品は、汎用性の高い製品よりも高い価格で販売できるのは当然です。
ファブレスとは、製品の企画設計や開発のみを自社で行い、製造を協力会社(EMS)に委託し、製品をOEM供給の形で調達する業態です。大きな設備投資が必要なく、利益率が高くなります。
ユーザーへの直接販売は、代理店や販売会社を通さないことで販路拡大が進まないなどのリスクがある一方で、利益率が高まります。「即日出荷」を原則としており、これらがキーエンスの付加価値の高いビジネスにつながっています。
社長メッセージには "当社の経営において優先度の高い課題は、「海外での販売比率を高めること」" とあります。
2020年3月期の時点で、すでに売上高の過半数を海外であげていますが、キーエンスでキャリアを積みたい人はこの分野が狙い目かもしれません。社内SEやWebクリエイティブ・ディレクターも募集しているようです。
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