2020年10月08日 15:41 弁護士ドットコム
東京・池袋で2019年4月、乗用車が暴走し12人が死傷した事故で、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)の罪で起訴された男性被告人(89)の初公判が10月8日、東京地裁であった。
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被告人は「アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶しており、車に何らかの異常が生じて暴走した」と起訴内容を否認した。
この事故で、妻真菜さんと長女莉子ちゃんを亡くした松永拓也さん(34)と真菜さんの父の上原義教さん(63)が、初公判後に東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。
松永さんは被告人が起訴内容を否認したことについて、「予想していたこととはいえ残念でなりません。とても二人の命と遺族の無念と向き合ってるとは思えませんでした」と語った。
2人は被害者参加制度を利用して裁判に参加し、事故後初めて被告人と対面した。
被告人の認否について「調書を見る限り否認するだろうなと予想はしていた」と松永さん。「申し訳なかったという言葉を述べられていたが、車の不具合を主張するなら、私は謝ってほしくはない」と吐露した。
「何をいうかは自由なので無罪主張するのはわかるが、私が証拠を見た限りでは、どうみたって踏み間違いとしか思えない。なので、こうしたかたちで無罪主張するのは、やはりおかしいと思う」
裁判については「加害者と司法とも向き合っていきたい」と話した。
「真実をしっかりと加害者の口から述べてもらう。それが遺族のこれからの心の回復にも繋がると思うし、この先の事故防止の議論にもつながる。これだけ大きな事故で軽い罪で終わってはいけないと思う」
今後、裁判の中で、松永さんも意見陳述する予定だ。「しっかり加害者本人に伝えたい。裁判を通して私達の姿と声を聞いて、向き合ってほしい」。
上原さんは「たくさんの人たちの署名活動、全国からたくさんのお手紙を頂いた。その一つ一つに励まされた」と支援者に感謝した上で、「本当に反省していただいて、罪を償っていただきたい、ただそれだけです。遺族一人ひとりの気持ちに向き合って生きていってもらいたい」と涙ぐんだ。
今回被害者参加制度で裁判に参加するにあたって、遺影を持ち込むなら一般傍聴席に座るよう裁判所から言われたという。被害者参加人が多いため、法廷の柵(バー)内に加えて、傍聴席の一部を被害者参加の扱いにしていた。
松永さんは「遺族としては、被害者参加制度で裁判に参加することも大事だし、遺影を持って亡くなった二人とともに裁判に参加するのも大事なこと。どちらかを選択しなければいけないのは、難しいことでした」と振り返った。
初公判では、松永さんの母が被害者参加せず、一般傍聴席で遺影を持つことにした。松永さんは「今後も被害者参加した場合でも遺影を持てるように裁判所側に言い続けていきたい」と話した。