2020年10月04日 09:21 弁護士ドットコム
人類の相棒と形容されることもある犬。しかし、苦手という人も珍しくはない。インターネットの掲示板「ガールズちゃんねる」には、「犬による被害者の会」というスレッドがある。そこでこんな投稿を発見をした。
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「美容院が犬を飼い始めたらしくてべろんべろん舐められた。せっかくオシャレして髪型も決まったのに臭い私が出来上がった(涙)」
これに対して、「たぶん美容室は犬は違法で営業停止になるよ(本文ママ)」などのコメントがつけられている。
とはいえ、インターネットで「美容室 ペット」「理容室 犬」などと検索すると、SNSやホームページ等で「ペット同伴可」「犬います」と堂々アピールしている店舗も存在する。
一方で、「理容所及び美容所における衛生管理要領」には、「施設内には、みだりに犬(身体障害者補助犬を除く。)、猫等の動物を入れないこと。」とある。
これを根拠として、「犬(動物)は違法で営業停止になるよ」とコメントが寄せられたのだろうか。
はたして実態は。東京都の福祉保健局健康安全部環境保健衛生課の指導担当に聞いた。
ーー理容室、美容室では、犬や猫などの動物を入れてはいけないのですか
いいえ。それを明確に定めた法律はありません。
ーー衛生管理要領には、犬猫をみだりに入れるなとありますが
我々の部署では、施設の衛生指導をしておりますが、衛生管理要領は指導の一環にするために国が通知しているもので、そこに書いてあることが絶対かというと、指導の参考にすることはあっても、これをもとに、明確にダメということはありません。
反したからといって、罰則はありません。
ーーでは、犬や猫を入れるなというルールは存在しないのですか
まず、国の法律でも、東京都の条例でも、犬や猫、動物を入れないと定めた明確な規程はありません。
しかし、理容師法、美容師法では、理容所(美容所)の運営について「常に清潔に保つこと」や「その他都道府県が条例で定める衛生上必要な措置」を守ることを規定しています。
たとえば、東京都の理容師法施行条例には、「作業室には、作業中の客以外の者をみだりに出入りさせないこと。」としています。
施設を清潔に保つという考え方については、動物の毛や糞尿で施設内の汚染が生じてしまう状況があります。
そして、条例で、あくまで人を対象にしたものですが、「作業中の客以外の者をみだりに~」としているのは、施術者はハサミや、まつ毛エクステを扱うので、人や動物がピョンピョン動いてぶつかるのは危険があるということで、施術中の作業室には動物を入れるなという指導をしています。
これらが守られていない状況があれば、指導の対象になりますし、理美容師法では違反があれば閉鎖などの罰則があります。
開設にあたって、ペットやペット同伴にするという話があれば、保健所で「基本的にはできない」とするでしょう。それに、東京都では、定期的に3~4年につき1回以上、空気環境の測定をおこなって施設内の衛生が担保されているかを見ます。その際、明らかにペットが入っているところがあれば、入れないように指導して対応しています。
ーーでは、「ペットがいます」「ペット同伴可」という理美容室が存在するのはなぜでしょうか
東京都で問い合わせがあれば、作業室はダメでも、作業室に影響がない形で、客待ちなどペットの場所を設けることができて、条例等に適合していれば、(開設の)確認はおろすことができると思います。
ーー施術中に犬が飛び乗ってきたり、犬を触った手で施術したりすれば、アウトですよね
そうですね。もし、保健所職員が見れば、基本的には指導の対象になりますね。
細かい指導は各自治体で条例のもとでおこなわれています。
東京都庁が所管しているのは、町田・八王子をのぞく多摩地域。23区はそれぞれの区で条例を定めていて、23区の実態は把握していません。しかし、おおむね、だいたいの自治体で、考えに大きな違いはないと思います。