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コロナ禍の今、住宅購入してもいいですか? - FPに聞いてみた

2020年10月04日 08:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
新型コロナの流行による影響の大きさは、だれもが想定外だったのではないでしょうか。いつ収束するかもわからないコロナ禍の中、果たして住宅取得という大きな決断をしても良いのでしょうか。さらなる新型コロナ禍も想定しなければならないこれからの時代、注意するべき点はどのような点でしょうか。

○コロナ禍は関係ない? 住宅取得に大切なこと

住宅取得は人生最大の出費であり、年収の5倍程度の借金を背負い、数十年にわたって返済していかなければならない一大イベントです。当然、万一のための資金や教育費、老後の資金なども準備しながら返済していかなければなりません。さらに人生には思わぬことが起きるものです。大きな決断に際しては、当然そうしたリスクも想定しておかなければならないはずです。

そもそも想定外のことが起きるのが禍や災害です。コロナ禍以前の問題として、人生の一大投資に際しては、想定外の事態への対処方法をあらかじめ講じておかなければなりません。今回のコロナ禍による収入減や経済の低迷の前に、病気やケガやリストラなどによって収入が少なくなることは無いわけではありません。今後起きるかもしれないさまざまな想定外のリスクの一つにコロナ禍が加わっただけと考える必要があります。
○これからの住宅取得、注意する点は?

とは言っても、コロナ禍の影響は少なくありません。これからの住宅取得に際してどのような注意が必要なのかを考えてみましょう。ポイントは収入減です。収入減に対処するには、基本的に収入を増やす、支出を減らす、の二つしかありません。その次に保険を掛ける、購入価格を下げる、時期を変更するなどが考えられるでしょう。

以前は住宅ローンを借り入れるに際して、頭金が20%必要でした。諸費用も加えれば、それ以上用意する必要があったのです。旧住宅金融公庫の担当者によると、それだけ用意したケースでは、住宅ローンの返済に窮したケースは少なかったそうです。頭金をきちんと用意できたということは、それだけ借入金額が少なくて済むだけでなく、計画性のある生活スタイルが破綻を少なくしているのだと思われます。

結局は無理をせず、コツコツと貯蓄をし、健全な住宅取得計画に尽きると思います。現在は生活が広がりがちで、相談業務の中でも、全額ローンで住宅取得する予定のケースは普通にあります。これからは頭金20%というガイドラインを再認識しても良いのではないかと思います。
○一度は生涯収支表を作ってみよう!

生涯収支表はライフプランニングシートとも言って、現在から、できれば平均余命までの収入と支出を予測して預金残高の推移を判断するものです。預金残高がマイナスになった時点で、家計は倒産したことになります。

ライフプランニングシートを作ってみると、預金坂高が少なくなる自分のウィーク年齢がわかります。当然、この時期にコロナ禍の影響を受ければ、ローンの返済にも窮しかねません。ライフプランニングシートを作成することにより、将来のウィークポイントが若い現時点で把握できれば、対処は比較的簡単です。

少しの改善でも長い年月が改善努力の積み立て貯蓄のようになって思いがけない大きな改善となります。つまり改善の積み立て時期が長くとれる若い時ほど、ライフプランニングシートを作るメリットが大きいことになります。

将来を予測することは難しいとは思います。場合によっては、結婚時期、子供を作る時期なども想定となります。それでも自分がこうありたいと思う年齢にそれらを当てはめていき、状況が変わればその都度修正すればよいのです。最初に作る時は多少時間もかかるとは思いますが、修正は比較的簡単です。

生涯収支表をエクセルで作れば、別シートにコピーして、無限に修正可能です。修正だけでなく住宅購入時期等をずらして、どちらが長期的に有利なのか複数パターンを比較することも可能です。

教育費や老後の生活費などのデータは、ネット上でいくらでも入手できます。日銀関連の金融広報中央委員会が運営する「知るぽると」内の「暮らしと金融なんでもデータ」が便利です。

数千万円の借り入れをする際に将来の展望が明確でなくてよいわけがありません。下図は簡易的なライフプランニングシートです。ライフプランニングシートで最も大切な部分は家族のイベント欄です。

いついつ何をしたいかという人生計画が最も大切で、ライフプランニングシートはその実現に向けて収支を管理するためのものです。収支の推移によっては将来の計画の時期を遅らせたり、場合によっては断念せざるをえなくなったりするかもしれません。それでも将来が見えずに無謀な夢に向かってスタートするリスクを防げます。

下図の預貯金残高の欄を見ると500万円ほどあった預貯金額が、住宅購入とともに56万円になっています。この時期に収入が減少するトラブルが発生することも想定する必要があります。頭金を減らして預貯金額を確保する、購入価格を下げる、妻が働く時期を早める、支出を減らす、親に事前に万一の場合の援助を依頼しておく……など対策はいろいろあります。

省略している2025年以降もこのような時期はいろいろ発生するでしょう。子供たちが相次いで高校・大学へ入学する時期も出費が多くなるでしょう。しかし長女が大学入学するまでにまだ15年もあります。今からそれに向けて準備すれば、比較的楽に改善できるはずです。

今回の新型コロナの流行は、だれもが想定外のものだったでしょう。しかし、人生には想定外のことが起きるものだと、改めて気づかされた良い機会だったとは思います。禍転じて福となすように、住宅取得に際して将来の収支を精査し、これから起きるかもしれない想定外の事態にも対処可能な健全な計画を立てる機会になればと思います。コロナ禍も含めて、対処方法がとられている健全な計画であれば、住宅取得も何ら問題はないはずです。

佐藤章子 さとうあきこ 一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。 この著者の記事一覧はこちら(佐藤章子)