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有名デザイナーよりもユーチューバー ネームバリューに頼らないワークマンの「アンバサダー・マーケティング」とは

2020年10月03日 18:22  Fashionsnap.com

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都内で行われたワークマンのファッションショーではアンバサダーとのコラボアイテムを披露(中央右が土屋哲雄専務) Image by: FASHIONSNAP.COM
新型コロナウイルスの流行によりアパレル業界で売り上げが激減する企業が増える中、2021年3月期に11期連続の増収、6期連続の過去最高益更新を見込み、"ポストユニクロ"との呼び声も高いワークマン。「ワークマン女子」のワードも誕生するなど女性からの支持も獲得しつつあるが、内外から聞こえる商品のデザイン性については「依然として課題」と土屋哲雄専務取締役も認める。その解決策として、著名デザイナーではなく「様々なアウトドアのライフスタイルを持つアンバサダーとの協業」を打ち出す。

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 同社は2018年から作業着に加えて一般向けの高機能ウェアを扱う新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus+)」の出店を開始。昨年10月からはアンバサダーの意見を取り入れ商品を共同開発する「アンバサダー・マーケティング」を本格的に導入し、バリエーションの拡充とデザイン性向上に注力している。
 現在のアンバサダーは、キャンプブロガーで二児の母のサリーや猟師兼ヨガインストラクターのNozomi、ソロキャンパーのねこまるなど約30人。ファッション業界からはファッションアナリストの山田耕史氏が名を連ねるが、現役のデザイナーはいない。それでも各アンバサダーにはキャンプや旅、バイクなどアウトドア分野への知見がありワークマン製品と好相性で、デザインの提案が実用的かつ顧客目線にあった物が多く、共同開発した商品は自社のみで開発した商品よりも売れ行きが好調だという。

 また、アンバサダーの発信力も販促費の削減にもつながっている。元々ワークマンの熱心なファンで製品開発に無償で協力することもあるため、熱量の高い情報伝達が可能になり、これまでの販促ですくえないファン層を獲得できることが大きなメリットになっている。ワークマンも共同開発した新製品やイベント情報を優先的に告知し、アンバサダーのフォロワー増加に繋げるなどウィンウィンの関係を築いているという。土屋専務はアンバサダーとの共同開発商品について「40年にわたって作業着のみやってきた我々からは生まれないデザイン。主力商品の作業着も、初めは外部からの意見を取り入れて作ってきた。一般向けの服も同じように成長させていきたい」と語る。
 アパレル業界のトップである「ユニクロ(UNIQLO)」は国内外の著名デザイナーを起用したコラボレーションで度々話題を集め、高いデザイン性が支持されているが、ワークマンはその手法に興味を示しておらず、最初から「面識のない芸能人や有名人に商業ベースでアンバサダーになって頂くことはない」としている。実力あるデザイナーは社内に入れデザイナー育成に注力し、社内の体制を強化していく方針で、実際にパリなど海外の教育機関でデザインを学んだ経験を持つ人材を起用し始めたという。育成には「10~20年と長い時間をかけていく」とし、時間的コストの発生もいとわない。コロナの流行でいわゆる"ハレの日"の服を着る機会が減り、「より低価格、より高い機能性、そしてファッション性を兼ね備えた商品の需要が増えている」という前提で、"ジャケット2900円"という低価格帯を維持しながら、同社ならではのファッショナブルな高機能ウェアを構築していく考えだ。
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