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小学生チームとアスリートを繋ぐ - 「ファンスポ!」オンライン交流会で見た、コロナにも負けないスポーツの絆

2020年10月02日 17:31  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
スポーツに打ち込んでいた学生時代、「あの憧れのスポーツ選手と話ができたら……」と思いを巡らせていた人も多いのではないだろうか。小学生スポーツを応援するさまざまな取り組みを行っている「ファンスポ!」が、小学生チームとアスリートをつなぐオンラインイベントを開催。その内容は、小学生たちが有名なアスリートに、自由に質問ができるというもの。夢のようなイベントの模様を取材した。

○憧れのアスリートが小学生たちをオンラインで激励

思うように練習ができない、試合ができない……と、新型コロナウイルスの影響により厳しい状況におかれている「小学生スポーツ」。そんな子どもたちを応援する「ファンスポ!」では、小学生チームのマッチングやアスリートが出演するラジオ番組の放送など、多彩なコンテンツを企画している。「アスリートオンライン交流会」も、そのひとつ。憧れのアスリートや指導者として活躍する元アスリートと、「ZOOM」を使って直接交流できる夢のイベントとなっている。参加方法は、「ファンスポ!」ホームページから希望のイベントの申し込むのみ(「※Fanspo」にチーム登録しているチームのみ応募可能)。

9月12日の元女子バレーボール日本代表・新鍋理沙さん、9月18日のバスケットボールチーム「B.LEAGUE 千葉ジェッツふなばし」・田口成浩選手の交流会を取材したので、その様子をお届けしたい。
○元女子バレーボール日本代表・新鍋理沙さんの交流会

新鍋さんの交流会には、3つのバレーボールチームに所属する約30人の小学生たちが参加。小学生たちは皆、自作の手書きパネルを用意しており、そこには質問とともに「大ファンです」「新鍋さんのレシーブが好きです」といったメッセージも綴られていた。憧れの選手である新鍋さんの登場に、皆とても嬉しそうな表情。交流会がスタートすると、小学生たちは一斉に手をあげ、新鍋さんの指名で一人ずつ質問を発表していく。

質問内容は、「試合のときにモチベーションを上げるにはどうしたらいいですか? 」といったメンタル面のものや、「スパイクのときに手が下がってしまうのが悩みです。どうすればいいですか? 」など実用的なテクニック面のものも多かった。小学生たちは皆、とても真剣な表情で、熱心にメモをとっている子も見られる。そんな子どもたちの期待に応えるべく、新鍋さんはどの質問にも真摯に回答。

「諦めずにボールを拾うにはどうしたらいいですか? 」「諦めたらそこで終わりです。全部拾う気持ちで頑張ってください」、「バレーボールが上手くなるにはどうしたらいいですか? 」「上手くなりたいと本気で心に思っていたら、きっと上手くなります」など、新鍋さんの答えはいつもストレートで明確。そんな揺るぎのない心こそが、日本を代表するアスリートの由縁だと感じられた。いつも直球で心がこもった新鍋さんの答えに、質問した小学生たちも皆「ありがとうございます!」と満足気であった。

特に印象的だったのは、「今年、思うように練習や試合をできずに卒業してしまう小学6年生へのメッセージ」。「悔しさも悲しさもあると思います。でも、チームのみんなと一緒にずっと頑張ってきたこと、それは絶対に無駄になりません。ぜひ、これからにつなげてほしいです」と、熱い想いを語っていた。また最後に交流会の感想を伺ったところ、こう話してくれた。「真剣な子どもたちの姿に、とてもいい刺激をもらえました。今はコロナの影響で厳しい状況ですが、小学生時代は新しくスポーツを始める子が多い大切なタイミング。やりたいことや目標を意識しながら練習を頑張ってほしいですね。あと何より、楽しくないとスポーツは続けられません。楽しむ気持ちを忘れずに打ち込んでほしいです」。
○千葉ジェッツふなばし・田口成浩さんの交流会

続いては、田口さんの交流会。田口さんは、翌日に試合を控えていながらも「子どもたちを元気にしたい」という想いからオンラインイベントに参加。これまでにも子どもたちとの様々な交流イベントに参加経験がある田口さんは、冒頭から軽妙なトークで子どもたちの心をつかみ、笑いが溢れるリラックスムードで交流がスタートした。

質問でもっとも多かったのは、「背が小さい自分が、大きい人に対抗するには?」「背が伸びるにはどうしたらいい?」といった"身長が低いこと"にちなんだ悩みであった。そうした声に対し、田口さんは「プレーがうまくいかないのは、背が小さいからだけじゃない」と伝えたうえで、大きい選手にも負けないためのテクニックや練習法、個人ではなくチームで戦うことの大切さなどを解説。子どもたちも真剣な表情でアドバイスに聞き入っていた。

数多くの質問の中でも、田口さんが印象的だったと話していたのは、「今、僕は足をケガをして練習ができません。どうやってモチベーションを保てばいいですか?」の問い。自身も骨折の経験がある田口さんは「おれも病院の先生から『骨折しています』と聞いたときに、泣いたんだよ。最初はそれでいいんだよ。思う存分に悔しがればいい。でも、そのうちうじうじしているのがバカらしくなるから。そうなったら、今の自分には何をできるのか考えればいい。足を怪我しているなら、上半身でシュートのフォーム練習はできるよな? そうやって、今できることをやればきっと前を向けるようになる」と語っていた。

また、田口さんが交流会で子どもたちに何度も話していたのは、「いつも感謝の気持ちを持ってほしい」ということ。コロナ禍、長らく練習ができなかったがようやく再開し、またチームメートとバスケができること、いつも指導してくれるコーチ、支えてくれる親、チームの仲間……周りのすべての人に感謝の気持ちを持ったうえでバスケに向き合ってほしい、という想いを語っていた。イベント後のインタビューで「小学生スポーツで大切なことは?」と伺ったところ、「小学生のうちは何のスポーツをやってもいいし、とにかく”楽しいことを思いっきり"やってほしい」。楽しい気持ちを忘れずに前向きにスポーツに取り組んでほしい、とのことだった。

第一線で活躍してきた新鍋さん・田口さんのお二人が、口をそろえて話していたのは"大変なのはみんな同じ。今できること、今やるべきこと、今楽しめることを、どれだけできるかが大切だと思います"、というメッセージ。これは子どもたちだけでなく、いま苦境に立たされている大人にも言えることだろう。お二人との交流会で満面の笑みを見せていた子どもたちと同じように、誰もが前向きな気持ちを忘れずにコロナを乗り越えてほしい。(中納俊)