2020年10月02日 17:02 弁護士ドットコム
ジャーナリストの伊藤詩織さん、メディアプロデューサーの疋田万理さん、臨床心理士のみたらし加奈さんが10月2日、都内でトークイベント「私たちがつくりたい世界」(主催・mimosas)を開いた。
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3人は、8月1日にローンチした性被害やメンタルケアについての情報を発信するメディア「mimosas」の運営メンバーでもある。
この日は、イベントをオンラインで同時配信しながら、自分の心が傷ついたときのケア、身近な人から性被害を打ち明けられた時にどうすれば良いのか、などについてトークを繰り広げた。
「mimosas」立ち上げのきっかけとなったのは、疋田さんがインスタグラムのフォロワーからこんなDMをもらったことだった。
「性被害にあって警察にも行って苦しい体験をたくさんしたけど、被害にあうまで、何をすればいいのか何も知らなかった。万理さんがそういうメディア作れませんか」
疋田さんはすぐさま「これは私がやらなければいけない」と感じ、みたらしさんや伊藤さんに連絡した。
臨床心理士として活動し、自らも性暴力サバイバーであることを明かしているみたらしさんの元にも、フォロワーから「性暴力かもしれないし分からないけど、どこか相談できる場所ありませんか」といったメッセージが日々届く。
みたらしさんは「フォロワーから連絡もらうたびに、自分で何かできないかと感じていたので、『絶対やるべきだよ』と二つ返事だった」。伊藤さんも「自分は撮る側で、発信することに欠けていると思うことがあったので、メディアというプラットフォームを立ち上げたいと言われた時に嬉しくて、是非と答えた」という。
mimosasが10月1日に公開した動画で、伊藤さんは「あなたの身体はあなただけのもの。自分が受けた被害は自分が一番よく知っているから自分を信じてあげて。Believe in yourself.」と呼びかけている。
疋田さんに「被害にあった時自分を信じるのは難しい。自分が悪かったのかもしれないと考えてしまう。メッセージに込めた思いは」と尋ねられると、伊藤さんは「自分に耳を傾けられなかった経験がある」と振り返った。
「自分が受けたことは自分が一番分かっているはずなのに、外から入ってくる情報を言い聞かせてしまっていた。きちんと向き合っていかなければならないことだし、自分自身を信じてあげようと思ったので、それを伝えたくて」
みたらしさんは「ショッキングな出来事があった時には、自分のことを信じることって一番難しいことでもある」といい、「ストレス反応は人それぞれなので、体のサインに耳を傾けてあげることが大事。苦しいと認めてあげていい」と話した。
疋田さんが会場で「周りの人から性被害の経験について相談を受けたことがある人」と呼びかけると、8割ほどの人が手をあげた。身近な人が性被害にあった場合、どんな言葉をかけるべきなのだろうか。
みたらしさんは「笑って話すことで防衛をしている人の防衛を解くことが正しいとは限らない。手を添えてあげたり、『あなたは一人じゃないし味方だよ』と言ってあげたりするのもいい。ハグして相手の言葉を待ったり、手紙を書いたりしたりすることもある」と話した。
伊藤さんは親友から「うちにおいでよ」と言われ、一緒に過ごしたことで救われたという。
「自分では処理できないから、気持ちがぼーっとしていて気づいたら夜、ということが続いていた。友人は私がされたことがいかに酷いことかということをリアクションしてくれた。私が思っていたより大変なことだと言ってくれたから助かった」
最後に、伊藤さんは先日亡くなった米連邦最高裁判事の「RBG」ことルース・ギンズバーグ氏に触れ、「彼女がやってくれたことは間接的に私たちにつながっている。皆がRBGになれるんじゃないか」と話し、こう呼びかけた。
「自分の声が届かないな、と思うこともあるかもしれないけど、一人一人が発したボールはどこかに当たっているし、当たった側は2年後に思い出すことになっているかもしれない。一人一人がエンパワメントを持っていると思います」