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太田光さん、法廷で「プシュー!」とパフォーマンス…どこまで認められるの?

2020年10月02日 17:02  弁護士ドットコム

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お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光さんが、日本大学芸術学部に裏口入学したとする『週刊新潮』の記事で名誉を傷つけられたとして、発行元の新潮社を提訴した民事裁判の口頭弁論が10月1日、東京地裁でおこなわれ、太田さん本人が出廷した。


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報道によると、太田さんは入廷時に指でメガネを作り、そのまま報道陣を指さし、控えめに持ちネタの「プシュー!」を披露したり、宣誓文の朗読後には「伊勢谷友介です」とつぶやいたりするなど、傍聴席の笑いを誘ったとされている。



このような太田さんのパフォーマンスを「あり得ない」と指摘する声もある。その理由は、法廷が「厳粛」ある場とされているためだ。



●「法廷等の秩序維持に関する法律」違反になる?

「法廷等の秩序維持に関する法律」では「裁判の威信を著しく害した者」に対して、「20日以下の監置もしくは3万円以下の過料に処し、またはこれを併科する」という罰則が設けられている(同法2条)。



つまり、法廷にいる人(たとえば刑事事件であれば被告人、弁護人、検察官、傍聴人)が「裁判の威信を著しく害した」と判断されれば、20日以上留置場に留置されるか、過料を支払うか、あるいはその両方が科される可能性もありうるということだ。



太田さんのパフォーマンスがこの法律に違反する可能性はなかったのだろうか。お笑い好きだという濵門俊也弁護士は、次のように語る。



「今回の太田さんの行動は予想の範囲内の出来事であり、何らこの法律に違反するものではないと考えています。



法廷が『厳粛』ある場とされていることは当然ではありますが、『厳粛』すぎても証人の自由な証言を引き出すことができず、事案の真相には近づけなくなります。



私は証人尋問の際は『初めての法廷で緊張されているかもしれませんが、自分のペースでしっかり質問にお答えください』と必ず言うようにしています」



●「監置」処分が下されるケースは?

「法廷等の秩序維持に関する法律」に違反したと判断されるのは、「裁判の威信を著しく害した」場合だけに限られない。



裁判所および裁判官が秩序維持のために命じた事項をおこなわなかったり、秩序維持のために執った措置に従わなかったりした場合、または暴言、暴行、けん騒その他不穏当な言動で裁判所および裁判官の職務の執行を妨害した場合にも適用される(同法2条)。



かつて放映されたドラマ『リーガルハイ』では、古美門研介弁護士(演:堺雅人さん)が別府敏子裁判官(演:広末涼子さん)を罵倒したために「監置」処分を受ける場面がある。



その際に、ベテラン・三木長一郎弁護士(演:生瀬勝久さん)が「オレも初めて見る」と述べるシーンも描かれているが、濵門弁護士も「実際の法廷でも監置処分が下されるケースはほとんどなく、私も出くわしたことはありません」と話す。



ただし、「裁判所法」によって「退廷」を命じられることはある。たとえば、刑事裁判で被告人が騒いだ場合などだ。



「退廷命令は、法廷警察権の行使の一つといえます。



裁判所法では、裁判長または開廷をした一人の裁判官は、法廷における裁判所の職務の執行を妨げ、または不当な行状をする者に対し、退廷を命じ、その他法廷における秩序を維持するのに必要な事項を命じ、または処置をとることができるとされています(裁判所法71条2項、71条の2、72条、73条)。



私個人はいまだ経験していませんが、裁判所法の規定からは民事事件も当然に含んでいますので、刑事裁判だけではなく、民事裁判でもあり得るかもしれません」




【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/