2020年10月02日 17:02 弁護士ドットコム
群馬県内にある「ワタミの宅食」(ワタミ株式会社)の営業所で、残業代の未払いがあったとして、高崎労働基準監督署が、労働基準法違反にもとづく是正勧告をおこなった。勧告は9月15日付。同営業所の所長で、労基署に申告していた40代女性が10月2日、東京・霞が関の厚労記者クラブで会見を開いて明らかにした。
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この女性は2017年、ワタミに正社員として入社。ことしから群馬県内の2つの営業所の所長を担当していたが、長時間労働などが原因で、7月下旬ごろに精神疾患を発症した。女性が加盟している労働組合によると、発症前1カ月(6月22日~7月18日)の残業時間は175.5時間、27連勤(7月18日まで)があったという。
長時間労働になった背景には、(1)女性が2つの営業所で20人以上の配達員の管理を担当していたこと、(2)配達予定をキャンセルする配達員が出てしまうと、代わりが必要になるが、所長が代配せざるをえなかったこと、(3)配達員のフォローやクレーム対応なども担っていたこと――などがあるという。
ほかにも、労働組合によると、固定残業代の時間数である月30時間を超えないように、女性は勤怠記録を自分で修正して短くしていたが、さらにエリアマネージャーから「私が(タイムカードの記録を)いじります」と言われたり、記録したはずの休日の勤怠記録を同意なく削除されていたという。
現在、女性は休職しているが、違法な時間外労働(労基法32条)や休日労働があったとして、労基署に追加で申告したほか、長時間労働による過労などで精神疾患を発症したとして、労災申請もおこなっている。さらに団体交渉も申し入れている。
この是正勧告をめぐっては、すでにNPO法人POSSE代表の今野晴貴さんが9月28日、ヤフーに記事を公開しており、話題になっていた。
ワタミは9月28日、ウェブサイト上で是正勧告の事実を認めたうえで、「当社では、当該社員の主張を真摯に受け止めて、当該社員に深く謝罪いたします」「労働基準監督署に未払い賃金の内容についてご指示をいただきながら精査を行い、全面的に当該社員の主張を受け入れる所存です」と記している。
さらにワタミ側は、清水邦晃社長直筆の手紙で女性に謝罪したが、女性は「なぜこのようなことが起きたのか、明らかになっていない」として納得していないという。「渡邉美樹さんの耳にも入っているのか」女性はこの日の記者会見で、このように訴えていた。
「会社が正面から向き合ってくれなかった。とても大きな事件だと思っていますが、その真相はトップの渡邉美樹さんの耳に入っているのでしょうか。このようなことが私だけでなく、同じ社内にも蔓延していることを渡邉美樹さんはご存知なのでしょうか。このままでは、また同じことが繰り返されるだけです。なぜこのことが起きたのか、組織をしっかり見直していただきたい、ワタミの健全な経営を心から願っています」