大企業の財務諸表から待遇を探る「これだけもらえる優良企業」シリーズ。今回は、家電や電工などを事業の柱とするパナソニック(大阪・門真)をとりあげます。
パナソニックの平均年収は754万円
最新データ(2020年3月期)によると、パナソニック社員の平均年間給与は754万6379円。4期前と比べると、平均年間給与が35万円近く下がっています。
この額には賞与や基準外賃金(手当など)も含んでいます。パナソニックの賞与は、例年5ヶ月分程度が支給されているようです。
- 2016年3月期:789万0026円
- 2017年3月期:781万4911円
- 2018年3月期:768万0506円
- 2019年3月期:774万4759円
- 2020年3月期:754万6379円
このデータはパナソニック単体のもので、連結子会社などのグループ会社は含まれていません。他の大企業と比べ、意外と低いという印象を受けるかもしれませんが、その背景が気になるところです。
企業口コミサイト「キャリコネ」への投稿によると、課長以上の管理職に昇格できれば年俸制になり1000万円を超えるものの、管理職に昇格せず700万円前後で定年を迎える場合もあるようです。
なお、パナソニックの2020年3月期はすべての事業セグメントで減収。車載事業の赤字などが影響して大幅な減益となり、営業利益(米国会計基準)も3%台に悪化しています。
パナソニック社員の平均年齢は43.6歳
次に従業員数と平均年齢、平均勤続年数(ともに単体)を見てみましょう。
富士通社員の平均年齢は45.7歳。ざっくり言うと、40台半ばで750万円くらいという人が多いということでしょうか。
- 2016年3月期:55,937人(45.6歳・23.3年)
- 2017年3月期:57,484人(45.3歳・22.8年)
- 2018年3月期:61,311人(45.6歳・22.9年)
- 2019年3月期:62,031人(45.6歳・22.8年)
- 2020年3月期:60,455人(45.7歳・22.7年)
メーカーの中では高い方ではあるものの、平均年間給与が1057万円のソニー(平均年齢42.4歳)や803万円の富士通(同43.6歳)と比べるとやや低めです。
この理由には、従業員の多さが考えられます。ソニーはグループ全体(連結)の従業員11万1700人のうちソニー本体(単体)が2682人、富士通は連結12万9071人のうち単体が3万2568人です。
これに対し、パナソニックは連結25万9385人と両社の倍以上の従業員を抱え、単体の従業員は6万人を超えています。創業者の松下幸之助は「人間大事」の理念を掲げていましたが、それだけ多くの従業員を雇用し生活を支えていることは、企業の社会的責任を果たしており大変立派です。
とはいえ、かつてのライバルであったソニーがゲームや金融を含む国際的なコングロマリットに姿を変え、富士通が国内最大のITベンダーとなったことを考えると、いまも家電が本業のパナソニックが伸び悩んでいるのは、業態転換が遅れたためと言わざるを得ないでしょう。
また、グループ経営の司令塔と全社共通業務の人材を本体に集めるソニーに対し、現業に関わる社員を本体に抱えるパナソニックでは、平均給与に差が出てくるのは仕方ありません。
「新たな視点」で事業を作れる人が待たれている
最後に、パナソニックの今後についてまとめてみましょう。
パナソニックの課題は「既存事業の改革」と「新規事業の開発」の2つです。前者については大規模なリストラ中で、20年3月期にはパナソニックホームズの移管やアプライアンスの欧州における構造改革、インダストリアルソリューションズにおける半導体事業の売却などを行っています。
テレビ事業は21年度の赤字解消を目指しており、新たな収益の柱と期待を担いながら赤字の車載事業も、黒字化に向けて開発費抑制や車載電池の増販といった収益改善に取り組んでいくとしています。
後者の新規事業については「脱・自前主義」を掲げ、海外企業の買収や投資を積極的に行ってきたものの、大きく開花せず不採算で撤退に至っている事業もあります。
ソニーや日立製作所、富士通などかつての総合電機メーカーは、それぞれの形で「日本のものづくりメーカー」から脱却して、新しいビジネスモデルに生まれ変わりました。パナソニックが既存事業のさらなるリストラを進めるためにも、新しい収益の柱を確保する必要があります。
幸いパナソニックは、財務的には体力が残っています。従来の「メーカー的視点」を脱却したものの見方・考え方をもって、海外事業への投資や大型M&Aを推進し、新たな収益の柱を作れる人材が待望されているのではないでしょうか。
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