新型コロナウイルスの流行により、特にライブや舞台を収益の柱とするエンタメ業界は大きな打撃を受けた。事態を受け、文化庁は「文化芸術活動の継続支援事業」を実施し、企業や団体だけでなくフリーランスも含めた個人に対しても最大で150万円の補助金を交付している。
第3次募集は9月30日17時で受付が終了するが、文化庁によると第4次以降の募集も「決定ではないが検討中」だという。
この補助金の申請は、全てオンラインで完結できるようになっているのも特徴のひとつだ。ただ、一部では「Excelが使えない人はどうするのか」という声も上がっている。(文:ふじいりょう)
「Excel使えない人は補助金もらえないの?」に「空欄を埋めることもできないのか」と厳しい声
9月21日、ロック・ミュージシャンのワタナベマモル氏が次のようにツイートした。
「文化芸術支援の申請後の精算手続きは、今までは領収書郵送だったのですが、9月12日からExcelにて提出に変わる。Excel以外ではダメと。Excelない人、使用経験ない人(僕も)は補助金もらえないの? 文化芸術をバカにしてるの? Excelだけしかダメなんで絶対に撤回させます」
これには「Excel互換のフリーソフトがスマホにある」という指摘のほか「単純に空欄を埋めるだけの作業もできないの?」「文化芸術マンはたかがExcel使えるだけで20万円もらえるのか」といった声も多数上がっていた。
この補助金の申請のExcelファイルでは、「補助金の対象となる条件を証明する資料」「事業計画書」で空欄を埋め、別シートの「経費明細計算書」で活動費としてかかった経費を入力すると、関数により自動的に補助金が計算されるようになっている。
なお、文化庁に問い合わせたところ、「PCがない、もしくは不慣れな方には、フリーダイヤルで案内をしており、郵送でも受け付けております」という。ただ、サイト上にその旨の記載は小さく、業務の簡略化のためにオンラインで完結したいという意向が滲んでいるように感じられる。
菅内閣で「誰にでもやさしいデジタル化」は進むか
今回のケースに限らず、公的機関の書類はExcelをフォーマットにしているケースが多い。経費などの計算式があるものに関しては表計算ソフトを使用する余地があるし、統計などをオープンデータとして提供する際も、ダウンロード後に加工して使うことができる。
氏名や住所といった情報や事業計画などを書く際には、むしろWordのような文書作成ソフトの方が利便性は高いが、事務作業をする側からすれば、Excelのほうがデータベース化する際の手間を省くといったメリットがあるだろう。ユーザー目線からすると入力が煩わしい部分もあるが、新型コロナウイルス関連の給付金申請の煩雑さや給付の遅れを見ると、どの分野でもIT化は必須といえる。
ただ、そうなってくるとIT化に対応できない人も出てくる。こうした時流に乗れない人に対して、ネット上のユーザーは辛辣だ。「それくらい覚えるべき」「こういう人がいるから、日本は生産性が低いまま」という反応だけでなく、クレーマー呼ばわりする人も少なくなかった。
菅義偉内閣の平井卓也デジタル担当大臣は「誰にでもやさしいデジタル化を目指す」としていることもあり、将来的にはスマートフォンからの入力によって申請可能なシステム構築やアプリ開発などが進む可能性もある。今後、ここにビジネスチャンスを感じ取る人も増えてくるのではないだろうか。セキリュティ対策などの課題はあるものの、ユーザーの利便性が向上することを期待したい。